宇宙一武道会の組み合わせ抽選会が始められた。選手達は順番に審判に呼ばれ、抽選箱から番号の書いてあるくじを引いていった。引いた番号に応じて、トーナメント表に選手の名前が書き込まれた。全員が引き終わると、トーナメント表は完成した。
第一試合: パン 対 ディーレイ
第二試合: 孫悟天 対 孫悟空
第三試合: アストレー 対 べジータ
第四試合: トランクス 対 ジフーミ
第五試合: ライタ 対 孫悟飯
第六試合: ピッコロ 対 シーガ
第七試合: レード 対 ウーブ
第八試合: レジック 対 ヒサッツ
「えー、以上のように組み合わせが決定しました。選手の皆さんには、試合前に館内放送でお呼びしますので、呼ばれた方は直ちに闘技場に登場して下さい」
選手達はその後、各々の控え室に戻っていった。抽選会の様子は、観客席に備え付けてある巨大なスクリーンや、控え室のモニターにも映し出されていたので、既にブルマ達は、その結果を知っていた。悟空達が控え室に戻った途端、真っ先に落胆の声を上げたのは、初戦で父と戦う事になった悟天であった。
「はー、初戦の相手が父さんだなんて、ついてないよ」
「余り気にするなよ、悟天。俺だって準々決勝で父さんと当たるんだぜ」
「そっちはいいよ。一回は勝てるんだし。俺なんて初戦敗退が決定的だから」
「でも、悟空さんなら殺される心配はないぜ」
「順当に行けば、準々決勝は俺達の試合ですね。ピッコロさん」
「ふふん、いいか悟飯。俺は以前の俺とは違うんだ。試合が始まったら、全力で来い」
「はい。ピッコロさんも俺を殺すぐらいのつもりで戦ってください」
「とんでもねえ奴と初戦で戦う事になっちまったな、ウーブ」
「望む所ですよ。あいつは俺達全員の実力を軽んじてましたからね。目に物を見せてやりますよ」
「いいぞ、ウーブ。その意気だ。試合では、様子見なんかしねえで、最初から飛ばして行け」
「悟空さんとは準決勝で戦う事が出来るね、お父さん。絶対に勝ってよ」
「ああ。今度こそ俺はカカロットに勝つ。そして決勝では、レードの野郎をぶっ殺してやる」
「孫君との試合はともかく、トランクスとの試合は、全力で戦っては駄目よ、べジータ」
「パン、ガンバレ。パン、カテ」
「ありがとう、ギル。初戦の対戦相手は女性とはいえ、あの予選を勝ち抜いた選手の一人なんだから、決して油断なんか出来ないわ」
「大丈夫!何故なら、パンちゃんはこのミスター・サタンの孫娘なんだから」
「う・・・それを聞いて少し不安になってきたわ」
「皆、すごい気合が入ってるだな。オラ、早く試合が観てえべ」
「私もですよ、お義母さん。でも皆、無事でいてくれるといいのですけど」
控え室にいる者達は、出場選手達に注目していた。そのため、観戦メンバーが一人欠けている事に、この時点では誰も気付いていなかった。
やがてパンとディーレイの登場を促す館内放送が流れると、パンは勢い勇んで闘技場に向かった。闘技場に二人の姿が確認されると、満員となった観客席からは、割れんばかりの歓声が起こった。パンが観客に向かって手を振って応じる一方、ディーレイは腕を組んでパンの様子を凝視していた。
試合開始を告げる放送が流れると、パンはディーレイに飛び掛かった。パンはパンチとキックの連続攻撃を試み、一方のディーレイはその攻撃をガードしながら、わずかな隙を見つけて反撃した。お互い数回の攻撃が当たった所で距離を置き、一呼吸置いた。
「なかなかやるわね。なら、これならどうかしら」
パンは相手の正面からではなく、背後に回ってから攻撃を仕掛けた。ディーレイは素早く振り向こうとしたが、長い髪が視界をさえぎったので動作が遅れ、背中に右の回し蹴りを喰らった。
ディーレイは吹っ飛ばされた後、背中を攻撃されたにも拘らず、何故か頭を抱えて立ち上がった。パンはそれを見て、ディーレイの髪の毛が地毛ではなく、かつらであると推測した。そして、再びディーレイの背後に回ると、次は髪の毛を引っ張った。パンの目論見通りに髪の毛が取れ、中から見知った素顔が現れた。
「じゅ、18号さん?な、何で?」
ディーレイの正体は、観戦しているはずの人造人間18号であった。18号が仲間内に内緒で、変装までして武道会に出場していた事を、夫や娘にも事前に知らせていなかった。その証拠に、控え室で試合を観戦していたクリリンが、驚きの声を上げた。
「な、何であいつが試合に出ているんだ!?さっきから姿が見えないから、何処に行ったかと思っていたら、まさか試合に出ていたとは」
「お母さんは一体、何を考えてるの?そういえば、予選の時も姿が見えなかったけど。まさか武道会に出場していたなんて」
優勝者以外に賞品の出ない宇宙一武道会に、出場しても優勝する可能性が低い18号が出場していた事に、控え室の誰もが驚きを禁じえなかった。
「18号さん、何でここにいるの?出場しないんじゃなかったの?」
「ふん。悟空達が上手く潰し合いをしてくれれば、私にも優勝する可能性があると思ったからな。危険な賭けだけど、やっぱり金の産出量が宇宙一の星をもらえるのは魅力的だからな。それと・・・あんたと戦いたかったからな」
「え!?何で私と?」
パンは予想外の展開が続いて、頭の中が混乱していた。18号はそんなパンにお構いなく、更に話を続けた。
「そろそろ決めておいた方が良いと思ってな。あんたと私、どっちが強いのか。つまり、誰が宇宙一強い女性なのかをな」
この18号の発言で、ようやくパンの頭の中が整理出来た。それと同時に、沸々と闘志が湧き起こってきた。
「よーし、私が勝って宇宙一強い女性だと証明して見せるわ」
「まだまだあんたなんかには負けないよ」
話し合いが終わると、二人は試合を再開した。今度はディーレイ改め18号が積極的に攻め、パンは徐々に防戦一方となっていった。正体を隠すために被っていたかつらが無くなったお陰で、18号の視界はぐんと広がり、動きが遥かに良くなっていた。
「そらそらどうした!守ってばかりじゃ、戦いに勝てないよ」
18号の攻撃はパンのガードの隙間を的確に捉え、次々とヒットさせていった。その度にパンは苦悶の表情を浮かべた。永久エネルギータイプの人造人間のため、18号の攻撃が途切れる事はない。そのため、18号相手に戦って一旦劣勢になると、パンに限らず挽回は至難の業であった。
18号には段々余裕が出てきた。一方、パンには焦りと疲労が表情に表れていた。その頃、控え室ではパンに聞こえるはずもないが、ミスター・サタンやビーデルが必死に声援を送っていた。
「仕方ない。こうなったら奥の手を使わなくちゃならないようね」
このままでは負けると思ったパンは、18号と距離を置き、気を練り始めた。
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