三年の月日が流れた。
悟飯達は再び宇宙船に乗り、宇宙を旅していた。ただし、今回は戦士達だけではない。ブルマやチチ、ビーデルやクリリン家族、その他大勢が同伴していた。つまりは毎度お馴染みのメンバー全員が乗船していたのである。彼等はわいわい楽しく騒ぎながら、南銀河のある星に向かっていた。
話は一月前にさかのぼる。
いつもの様にパオズ山で修業をしていた悟飯や悟天、パンの前に、突然見知らぬ異星人の男が現われた。その人物はリシパと名乗り、南銀河の惑星レードで宇宙一の武道家を決める宇宙一武道会が開催される事になり、それに出場する強者を集めるため宇宙中を飛び回っていると述べた。
悟飯達は即座にリシパと名乗る男の話を信じようとはしなかったが、彼が自分達に害を及ぼす存在にも思えなかった。彼は人が良さそうな小男で、邪悪そうには見えなかったからである。
リシパは惑星レードの場所と武道会の開催日を伝えると、次の星に向かうべく、すぐに乗ってきた宇宙船に乗って地球から去っていった。
一方、悟飯はリシパの話を伝えるべく、皆を呼び集めた。悟飯の話を聞き、他の戦士達も同様に疑いを抱いたが、その時、界王から連絡が入った。界王の話によると、惑星レードでは武道会の会場作りの準備が急ピッチで進められており、更に悟空やピッコロもその武道会に参加するという。
この話を聞き、武道会に半信半疑だった戦士達は、次々と武道会に出場する意思を表明した。リシパと違い、信用できる界王から武道会が実際に開催され、更に悟空までが出場するというのである。否が応にも彼等のやる気は高まった。
それからの数日間、彼等の修業にも俄然熱が入った。また、武道会を観戦しようと、お馴染みのメンバーも惑星レードに行くことになり、そのために大人数を収容できる宇宙船を急いで用意しなければならなかった。ブルマは前回同様、カプセルコーポレーションの技師を使い、急いで宇宙船の改造に取り掛かった。
その間に一つの出来事があった。ずっと石のままだったドラゴンボールが、突然輝き始めたのである。神龍がドラゴンボールに戻ったのである。それは同時に、悟空とピッコロの宇宙の旅の終焉も意味していた。
こうして、彼等を乗せた船は惑星レードに向けて出発したのである。宇宙船の中でも戦士達は、イメージトレーニングや運動に余念がなかったが、観戦する人達は既にお祭り騒ぎだった。
「いやいや、本当に楽しみじゃのう」
「本当その通りですよね、無天老師様。ところで、誰が優勝すると思いますか?」
「やっぱり悟空かのう」
「まぁ本命はやっぱり悟空でしょうけども、今回は皆、かなり修行しているんで、どうなるか最後までわかりませんよ」
「悟空さはまだ子供のままだべか?オラだけこんなに歳食っちまって、悟空さと会うのが少しだけ恥ずかしいべ」
「そんな事おっしゃらないで下さい、お義母さん。お義父さんだって、お義母さんに会うのを楽しみにしてるはずですよ」
「ビーデルの言う通りだべ、チチ。おめえは幾つになっても悟空さの妻である事に変わりはないんだ」
「俺がもう10歳若ければ、俺も武道会に出場し、宇宙中にこのミスター・サタン様の名をとどろかせられるのに・・・。実に残念だ」
「何言ってんだ。そんな事しても、あっさり負けて大恥かいて、『馬鹿の宇宙チャンピオン』って呼ばれるだけだぜ」
「やかましい!この宇宙一のスケベ豚が」
「ヤムチャ様も出場してみてはどうですか?優勝は無理でも絶対にいい所まで行きますよ」
「よせよ、プーアル。俺はもうとっくに引退したんだ」
「父さん、悟空さんに勝てるかな。今回は勝ってほしいな」
「そうね。べジータはこれまでずっとそれだけを目標に厳しい修行をしてきたからね」
「お母さんは出場しないの?すごい賞品がもらえるかもしれないよ」
「そうだな。賞品が凄ければ考えてもいいかな」
「お父さんは出場しないのかな?久しぶりにお父さんが戦う姿を見たいのに」
「また死ぬかもしれないから、そういう事は言わない方がいい」
観戦予定者達は各々宇宙の旅路を楽しんでいた。
そして、地球を発ってから42日後、宇宙船は遂に惑星レードにたどり着いた。その後、着陸地点まで案内役の船に先導され、船は空港に降り立った。
「皆さん。お待ちしておりました」
一同が船から降りると、そこには以前地球を訪れたリシパを先頭に、百人以上の人が出迎えにはせ参じ、赤じゅうたんを敷いて、悟飯達を出迎えた。そして悟飯達の正面には、彼等を乗せるためのリムジンに似た豪華な車が何台も止まっていた。そして、武道会参加申込所に案内するため、悟飯達に車に乗るよう促した。しかし、べジータが皆を制止し、リシパに詰め寄った。
「何故、俺達だけを手厚くもてなそうとするんだ?貴様等、一体何を企んでやがる」
べジータのみならず、全員が胸に抱いた疑問であった。周囲を見ると、武道会に出場すると思われる異星人が次々に惑星レードの地に降り立っていたが、誰もここまでの厚遇を受けていない。
「実は、大会の主催者であるレード様が、皆様だけは最高級のもてなしをするように命じられまして・・・」
「レード?」
誰も聞いた事がない人物の名前である。ただ、惑星レードと同名である事から判断して、この星の支配者であろうと推測した。
「そいつは一体何者なんだ?何故俺達だけを特別扱いするんだ?」
「それが・・・実は私も実際にお会いした事はなくて・・・。ただ、この星の王という事しか自分も知らなくて・・・。命令も人づてに伝えられたもので・・・。そのー、すいません。満足に答えられなくて」
べジータに迫られ、しどろもどろするリシパ。べジータの方も、これ以上彼に尋ねても、らちが明かないと悟り、引き下がった。その後、リシパに勧められるまま、一同は車に乗り込んだ。全員が乗った後で、車は武道会参加の申し込みをする会場に向けて出発した。
申し込み会場に向かう車の中で、悟飯達は外の様子を眺めていた。町には様々な異星人が分け隔てなく暮らしており、建築物もまた、様々な星の建物が乱雑に並んでおり、地球の町並みに見慣れた彼等には、異様な光景に思えた。しかし、住人の表情には不満は一切見られず、皆この星の生活に満足しているようだった。それだけに、このような星を治めているレードという人物に興味がわいた。
申し込み会場に着くと、そこには何千人もの異星人が、登録のために受付の前で長蛇の列を作っていた。しかし、VIP待遇の悟飯達は、その列に並ばず、特別に用意されたブースですぐに登録を済ませた。なお、この時に登録したのは悟飯、悟天、べジータ、トランクス、ウーブ、そしてパンであった。また、武道会の賞品は、優勝者に星をプレゼントするというものだった。ついでに彼等は、悟空とピッコロが既に登録を済ませたか尋ねたが、受付の人の話によると、二人はまだここに来ておらず、登録をしていないとの事だった。
その後、悟飯達は再び車に乗り、彼等を乗せた車は豪華なホテルの前で止まった。そして、一人一人がホテルの個室に案内された。地球で泊まれば一泊百万ゼニーもしそうな贅沢な部屋だが、代金は一切払わなくてよいという。彼等は、ここまで自分達をもてなそうとするレードがますます気になった。どうして自分達の事を知り、何故ここまでもてなそうとするのか。そもそも、この武道会を開く真の目的は一体何なのか。答えが出ない疑問が次々と浮かんだ。
とりあえず彼等は、武道会が始まるまでの十日間を、このホテルで過ごす事になった。ホテルの周りには遊技場やトレーニングジムが数多くあり、武道会までの時間を退屈せずに過ごせた。
その間にも、武道会に参加する者や観戦する者が続々と惑星レードに訪れたが、肝心の悟空とピッコロは、未だに姿を見せなかった。そして、武道会参加申し込みの締切日が刻々と近付いていた。
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