其の百十三 究極技の死角

「防ぐ事も逃げ切る事も生き延びる事も出来ない技だと!?何故そこまで言い切れるんだ?」
「俺には自信がある。だから言える。これ以上の文句は、俺の技を見てからにしてもらおうか」

魔神龍の言っている事が全て真実なら、アルテマアタックを使われた時点でゴジータは確実に死ぬ。流石のゴジータも不安を感じたが、「ただのハッタリかも」という考えも捨て切れなかった。取りあえず何が来てもいいように、警戒だけは怠らないようにした。

「では、行くぞ。せいぜい念仏でも唱えるんだな」

魔神龍は満を持して気を溜め始めた。魔神龍の体が炎の形状をした気に覆われたが、その気の形状が変化し、丸みを帯びて球状になった。また緑色に変色した。こうして魔神龍の体を覆った気が緑色の玉となり、魔神龍の全身が玉の中に収まった。それはかつて人造人間十七号やセルが使用したバリヤーの形状と似ていた。

「この変な緑色の玉が、アルテマアタック?」
「これはアルテマ膜といい、このアルテマ膜を覆った状態での攻撃をアルテマアタックという。それでは今から見せてやろう。アルテマアタックの恐ろしさをな。もっとも恐怖を感じる前に死んでしまうだろうが」

魔神龍はアルテマ膜を体の周囲に張り巡らせたまま、ほぼ真下にいるゴジータ目掛けて急降下した。ゴジータは技の正体を見極められなかったが、正面からアルテマアタックを受け止めるのは危険と判断し、岩山の上から斜め後方に飛び上がって技を回避した。魔神龍はゴジータが飛び上がった後の岩山の上に移動した後、すぐにゴジータの後を追いかけた。

ゴジータはアルテマアタックの正体を見極めるまでの安全策として魔神龍から距離を置こうと飛び回り、魔神龍はゴジータの後を執拗に追跡する展開となった。ゴジータは飛行を続けながら先程まで自分が立っていた岩山を見ると、奇妙にもアルテマ膜が触れた頂上だけが抉れていた。しかも、その周辺には抉れた部分の岩の破片が一つも無かった。一見すると不可解な現象ではあったが、ゴジータはそれを見ただけで、アルテマアタックの正体が少しずつ分かってきた。

「もしかして、アルテマアタックとは・・・」

ゴジータは、アルテマアタックの正体に対して一つの仮説を立てた。そして、それが正しいかどうかを確認するために飛行を止めて後ろを振り返り、迫り来る魔神龍に連続エネルギー波を放った。ところが、アルテマ膜に触れたエネルギー波は全て消滅した。

「やはりそうか・・・。分かったぞ!アルテマアタックの正体が!」

ゴジータは空中に浮遊したまま魔神龍が来るのを待った。すぐに魔神龍はゴジータの目の前まで移動し、同じく空中で停止した。そして、両雄は宙に浮いたまま睨み合った。

「その顔を見ると、どうやらアルテマアタックの正体が分かったようだな」
「ああ。貴様が自慢するのも頷ける。ずばりアルテマアタックとは、触れたもの全てを消滅させる技だ。触れたら消滅するから防御は通じないし、技を喰らって生き延びる事も出来ない。また、貴様の動きに合わせてアルテマ膜も移動するから、逃げ延びる事も不可能だ。何故なら、この俺も含めて貴様から逃げ切れる者なんて存在しないからだ。どうだ?間違いはあるか?」

ゴジータの話を聞いた魔神龍は笑みを浮かべた。

「この短い時間で、よく見抜けたな。褒めてやろう。しかし、それが全てではない。アルテマ膜は俺の体に触れずに、俺の周囲を隙間無く覆っている。だから膜を避けて俺の体に攻撃する事は出来ない。そして、この技は使っているだけでも大量のエネルギーを消耗するが、俺は体力を消耗しても即座に回復する。一方、お前は逃げ回っているだけでも体力を消耗する。体力が尽きて逃げ切れなくなった時、お前は死ぬ。それまでせいぜい逃げ回るが良い」

ゴジータは魔神龍から離れようと飛行を再開し、魔神龍は再び後を追った。ゴジータは現時点では何の打開策も思いつかず、ただ逃げ回るしか手が無かった。

「死角が見つからない。正に完璧な技だ。即急に何か対策を立てないと、いずれ体力が尽きて奴に追いつかれ、そして消されてしまう。もしくは逃げ回っている間に合体が解けてしまう。元の二人に戻ったら、奴の方がスピードは遥かに上になるから、やっぱり消されてしまう。その後にピッコロに生き返らせてもらっても、またすぐに消されてしまう。くそっ。一体どうしたら良いんだ?」

ゴジータは逃げ回っていたが、次第にスピードが落ちてきた。そして、魔神龍との距離が徐々に狭まっていった。好機と見た魔神龍は、ゴジータを一気に消滅すべく、後方から全速力の突撃を試みた。ゴジータは向きを変えて魔神龍の突撃を避けようとしたが避けきれず、アルテマ膜が左腕に当たって左腕を失ってしまった。ゴジータは左腕を失った痛みから飛行が乱れて回転しながら落下し、地面に墜落した。ゴジータは地面に仰向けに倒れ、そのすぐ真上に魔神龍が飛んで来た。

「どうやらここまでだな。お前に逃げ道はない。お前が浮上すれば、必ずアルテマ膜に触れ、お前は消滅する。地面に潜っても土を掘る分、地上に居る時ほど素早く動けないから、すぐに俺に追いつかれて消滅する。どう足搔いても助からない。そして、お前を殺した後、すぐにピッコロも殺してやる。お前を二度と生き返らせないようにな。その後は、思う存分破壊活動を楽しんでやる。はーっはっはっはっ・・・」

魔神龍は自分の完全勝利を確信し、大声で笑った。対するゴジータは打開策を思いつかず、絶体絶命のピンチに追い込まれていた。

「まさかこれほどとはな・・・。悔しいが完敗だ。それにしても、お前って凄いな。生まれたばかりだっていうのに、凄い技を次々と繰り出すんだから。お前みたいなのを本当の天才と言うんだろうな」

万策尽きたゴジータは、敗北を認めた。そして、見事な技を次々と披露した魔神龍を称賛した。

「馬鹿を言え。こんな技を即座に思いつくか。俺には元の魔神龍の記憶がある。奴はボールの中に居た間、外の世界を見ていた。奴が最も注目していたのは、お前のような強者だった。俺が使ってきた技は、そうした過去の強者達が使っていた技だ。このアルテマアタックは、お前と同じサイヤ人が使っていた技だ。そいつは無限とも思える程の膨大な体力の持ち主で、アルテマアタックを使って宇宙中を暴れ回っていた。・・・さてと。そろそろ終らせてもらおうか」

魔神龍は、ゆっくりと降下した。そして、ゴジータが埋もれていた地面は、更に深く抉られた。ゴジータの姿が何処にも無く、穴を掘った形跡も無かったので、魔神龍はゴジータが死体も残らずに消滅したと思った。ところが、ゴジータがアルテマ膜の内側に居た魔神龍の背後に現れ、魔神龍に振りほどかれないように片腕で魔神龍を羽交い絞めにし、両足で魔神龍の腰の辺りを蟹挟みした。予期せぬ出来事に、魔神龍は動揺した。

「な!?お、お前、どうやってアルテマ膜の中に入ったんだ!?」
「瞬間移動を使ったに決まっているだろう」

ゴジータは魔神龍と会話している間に、瞬間移動を使う事を思いついた。そして、魔神龍が降下してアルテマ膜が自分の体に触れる直前に、瞬間移動を使ってアルテマ膜の中に居た魔神龍の真後ろに移動した。

「瞬間移動を使うとは予想外だった。しかし、こんなに密着した状態では、これ以上どうする事も出来まい」
「一つだけある。残った力を全て使って自爆する事だ。俺も死ぬが、貴様もバラバラになるはずだ」
「自爆だと!?そうか!その手があったか・・・!」

魔神龍は驚愕した。不死身の魔神龍ならゴジータの至近距離からの自爆によってバラバラに吹き飛んでも、少しでも肉片が残っていれば再生出来る。しかし、今はアルテマ膜の中に居るため、飛び散った肉片は全てアルテマ膜に付着して消滅する。つまりゴジータが自爆すると、今なら魔神龍を確実に殺せる事になる。

「貴様が助かる方法は一つしかない。アルテマ膜を解く事だ。言っておくが、俺は自爆しても構わない。後で俺だけ生き返れるし、どうせ神魔界で元に戻った魔神龍を殺すつもりだったから、わざわざ神魔界に行く手間も省ける。さあ?どうする?」
「くっ・・・。止むを得ん」

結局、魔神龍はゴジータの脅しに屈服してアルテマ膜を解除した。それを確認した後、ゴジータは羽交い絞めと蟹挟みを解いて魔神龍から離れた。そして、ゴジータと魔神龍は再度対峙した。

「俺の自爆は、昔アルテマアタックを使っていたというサイヤ人には通用しなかっただろうな。そいつの肉体は、俺や貴様よりも遥かに頑丈だっただろうから、俺の自爆ぐらいじゃビクともしなかったはずだ。だから、そいつがアルテマアタックを使った時こそ究極の必殺技になっていた」

アルテマアタックを使いこなすには、無尽蔵とも思える体力を必要とする。体力が自動で回復する魔神龍とは違い、過去にアルテマアタックを使っていたサイヤ人は、超越した肉体を有していた。

「俺ではアルテマアタックを使うには役不足だったと言いたいわけか・・・。まあ良い。わざわざアルテマアタックを使わなくても、片腕を失った今のお前など余裕で殺せる」
「もう合体していられる時間も残り少ない。俺に残された手は勝負に出るしかない。魔神龍!俺のファイナルかめはめ波と貴様の龍砲。どちらが上か勝負だ!」

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