べジータとジフーミの戦いは、激しさを増していた。ジフーミは積極的に攻め、べジータは攻撃を避けながら、隙を見て反撃する展開となった。ジフーミの戦い方は、攻撃重視で防御を無視していたため、べジータの攻撃は全て命中していた。
しかし、べジータが幾ら攻撃を当てても、ジフーミにダメージを与える事が出来ず、ジフーミのスピードは一向に衰えなかった。一方、べジータは攻撃を受ける度に身体にダメージを蓄積し、徐々に追い詰められていった。そして、ジフーミの猛攻が止んだ時、べジータは疲労とダメージの余り、思わず片膝を付いてしまった。
「くそったれが、こいつの身体は一体どうなってやがる?」
トランクスとの戦いの時でもそうだったが、ジフーミは相手からの攻撃を一切避けなかった。避けようとする素振りすらなかった。攻撃を受けた回数は、ジフーミの方が圧倒的に多いのに、何故かジフーミは無傷であった。試合前からべジータはジフーミを警戒し、これまで慎重に戦っていたが、ここまで手強いとは流石に思っていなかった。
超サイヤ人2に変身したべジータは、戦闘力が飛躍的にアップしているのに、先程と同様に全くダメージを受けないジフーミに苛立っていた。このまま戦い続けても、自分が傷つくだけでは、体が持たない。ジフーミにダメージを与えるには、全力で戦うしかないと判断した。
「ちっ、こんな奴に、あれを披露する事になるとはな」
覚悟を決めたべジータは、気を限界まで高めた。今までのべジータを遥かに超える気が発せられ、何と超サイヤ人4へと変身した。一神龍との戦いの時は、ブルマの助けがなければ超サイヤ人4になれなかったべジータだが、その後の厳しい修行の末に、自力で超サイヤ人4に変身出来るようになっていた。
「カカロット以外の相手に、この変身までするとは思わなかったぜ」
べジータの変身に、余裕の笑みを浮かべていたジフーミから笑顔が消えた。本気になったべジータは、高速でジフーミに飛び掛かり、猛攻を浴びせた。ジフーミはべジータのスピードに対応しきれず、全く反撃する事が出来なかった。直接攻撃を止めたべジータは、指先からエネルギー波を放った。エネルギー波はジフーミの腹部に命中し、ジフーミの身体を貫通して、向かいの客席のバリアまで飛んでいった。
「あんな馬鹿相手に、ここまで手こずるとは」
べジータは、自分が放ったエネルギー波がジフーミの身体を貫通し、これで決着はついたと思った。試合を見ていた悟空達も、そう思った。ところが、ジフーミの身体には穴どころか、傷一つなかった。そして、ジフーミは再び余裕の笑みを浮かべた。
「馬鹿な!?ど、どうして傷がない?確かに奴の身体を貫いたはずなのに・・・」
べジータの放ったエネルギー波は、確かにジフーミに当たっていた。そして、ジフーミの身体を通り抜けて背後の客席にまで到達していた。なのに何故か、ジフーミは無傷だった。この時、べジータはジフーミに対し、底知れぬ不気味さを感じていた。
「よくもやってくれたな。今度はこっちから行くぜ」
べジータが驚いている間に、ジフーミは更に気を高め、べジータに襲い掛かった。べジータは自分の攻撃が通じなかったショックから抜け出せず、ジフーミの膝蹴りを喰らってしまった。べジータは後方に吹っ飛ばされ、客席のバリアに激突して跳ね返り、その場に倒れた。
べジータは目まいをしながらも、立ち上がってジフーミを睨みつけた。そして、この驚異的な身体を持つ敵を倒すために、奥の手を使う決意を固めた。悟空と戦う時まで秘密にしておきたかったべジータのとっておきだが、ジフーミを倒さねば悟空との再戦も有り得ないので、止む無く使う事を決意した。
「ダメージを受けない身体を自慢したいなら、今から俺が出す技を喰らってからにしやがれ!」
べジータはジフーミを挑発した。これから出す技から逃げないようにするためだった。一方、自分の身体に絶対の自信を持つジフーミは、腕を組んでべジータの出方を窺っていた。
「どんな技を出すのか知らんが、やるならさっさとやれ。どうせ俺には通じない」
ジフーミが余裕綽々でいる間に、べジータは右手をジフーミに向けてかざし、右手に気を集中してビッグバンアタックを放った。ところが、ビッグバンアタックはジフーミの立つ場所まで届かず、両者の中間地点で、球状を維持したまま止まってしまった。
「ははは、何をするかと思えば、失敗するとはな。まさかとは思うが、こちらから、その失敗作に当たりに行けと言うんじゃないだろうな?」
べジータの技を嘲笑するジフーミ。しかし、べジータは一向に気にせず、両腕を大きく広げ、再び気を練り始めた。そして、両腕を前方に突き出し、空中に浮かんでいるビッグバンアタックに向けて、ファイナルフラッシュを撃つべく構えた。
「ま、まさか・・・」
つい先程まで余裕の表情だったジフーミも、べジータの企みに気付き、流石にうろたえ始めた。ジフーミの焦燥に満足したべジータは、満を持してファイナルフラッシュを放った。
「喰らえ!ファイナルビッグバン!」
べジータから放たれたファイナルフラッシュは、ビッグバンアタックを押し出し、二つの超必殺技が同時にジフーミに迫った。危険を察したジフーミは、それ等を避けようとしたが、速度が余りにも速く、完全に避ける事は出来なかった。
ジフーミの身体を突き抜けたファイナルビッグバンは、そのまま客席まで到達してバリアと激突した。その時の衝撃で会場全体に激震が走り、爆音が鳴り響き、闘技場全体は煙に包まれた。
技を放ち終えたべジータは、腰を下ろし、煙が晴れるのを待った。手応えはあった。幾らジフーミの身体が凄くても、あれを喰らって無事で済むはずがない。例え生き延びたとしても、もはや戦える状態ではない。べジータは自分の勝利を確信していた。
会場の客も、控え室で試合を見ていた悟空達も、べジータの技に驚嘆していた。レードですら、もしべジータと戦う事があったら、今の技には警戒が必要だと感じていた。
「まさか二つの技を合体させるとはな。やるな、べジータ」
悟空はライバルの成長に、驚きながらも感心していた。悟空もまた、べジータの勝利を信じて疑わなかった。そして、準決勝でべジータと戦う事を今から心待ちにしていた。
徐々に煙が晴れてきた。会場中の人間は、闘技場にはべジータが一人いるだけで、ジフーミの姿は跡形も無いだろうと思っていた。しかし、完全に煙が晴れた時、そこには座って休んでいるべジータと、無傷のジフーミが立っていた。
ジフーミは死ぬどころか、傷一つ無い身体で、相変わらず憎らしい笑い顔を浮かべて立っていた。そんなジフーミを、べジータは信じられないと思いながらも、全身をじっくりと見定めた。どこを探しても傷一つなく、気が全く減っていないジフーミに、べジータは憎しみと恐怖を抱いた。
べジータの新技ファイナルビッグバンは、ビッグバンアタックとファイナルフラッシュを単体で放つよりも、数倍の破壊力を有する自慢の技であった。悟空の元気玉程ではないが、十倍かめはめ波や龍拳に対等に渡り合うために苦心して編み出した技でもあった。それを喰らって無傷のジフーミに、べジータは脅威を感じざるを得なかった。
「今のは中々の技だった。流石の俺も少しだけやばかった。少しだけな」
調子に乗ったジフーミは、また余計な事を話してしまった。まともに喰らって無傷だったのに、何故「やばかった」と言うのか。ジフーミの言葉を聞いたべジータは、必死になって理由を考えた。ジフーミの身体には何か秘密があり、そのお陰でこれまで無傷でいられた。その秘密を解ければ、ジフーミに勝つ事が出来るかもしれないという結論に達した。最大の技が通じなくても、まだべジータは勝利を諦めてはいなかった。
べジータはゆっくりと立ち上がると呼吸を整え、再びファイティングポーズを取った。
「まだ戦うつもりか?勝ち目が無いのに。人の事を散々馬鹿にしてくれたが、誰が一番馬鹿なのかな?」
ジフーミはべジータに止めを刺すべく攻め掛かった。べジータは戦術を変えて防御に徹し、ジフーミの動きの一つ一つを注意深く観察した。
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