「えっ!?今まで太陽が無かったって事は、魔界に住んでいる人達って太陽が無くても生きていけるの?」
悟空とシーガの話を聞いていた悟飯は、太陽が無くても生きていける事の方に驚き、素っ頓狂な声を上げた。
「我々魔族とお前達とでは、体の構造が違う。お前達は太陽が無ければ生きていけないようだが、我々魔族はそんなものが無くても生きていく上では困らない。太陽が突然出来ても、はっきり言ってありがた迷惑だ。魔族の中には太陽の光を浴びれば死んでしまう者さえいるぐらいだからな」
わずか一年で突然太陽が出来るなど、通常では起こり得ない。当然出来た理由が気になる悟空達だが、考えても何も思いつかないので、その事は一先ず置いといた。そして、本来の目的であるドラゴンボール探しを開始する事にした。
「さあ、ギル。魔界に本当にドラゴンボールがあるのかどうか見せて」
パンはギルの背中のドラゴンレーダーに目を向けた。するとレーダーに反応があった。
「やっぱりドラゴンボールはあるみたい。でも、この星にではなく、別の星にあるみたいね。どうしよう。この星には宇宙船なんてありそうもないし・・・」
別の星へ移動するためには宇宙船が必要である。しかし、原始的な惑星セモ-クには、そんな高度な乗り物はありそうもない。悟空達は魔界に来て早々出鼻を挫かれてしまった。途方に暮れる悟空達に対し、ライタが声を掛けた。
「宇宙船だと?そんな物が無くても、別の星に行きたければ飛んでいけば良いだろう」
「お前達はそれで良いかもしれないが、俺達は違う。俺達は酸素が無ければ生きていけないからな」
ウーブが早速反論した。ライタは笑った。
「はっはっはっ、ここはお前達の世界とは違う。星と星の間の距離が非常に短いし、魔空間という星と星の間の空間には有害な物質が一切ない。それに大抵の星には酸素があるから、少しの時間だけ息を止めて飛行すれば、すぐに別の星に移動出来る。俺達魔族は昔からそうやって移動している」
悟空達が上空を再度見上げてみると、今にもぶつかりそうな距離に幾つかの星が散見された。確かに一っ飛びで他の星へ移動出来そうである。悟飯はそれを見て、ふと疑問に思った事を質問した。
「あんなに星同士が近過ぎて、ぶつかったりしないのか?」
「魔界の星は動かないので、どんなに近くても問題ない」
問題が解決したところで、悟空達はレーダーを見て一番近い場所にあるドラゴンボールを確認し、各自息を止めてその方向に向けて一斉に飛び立った。同じ場所にジュオウ親衛隊の一人が軍を率いて向かっているとも知らずに・・・。
何度か息継ぎのために途中の星に寄りながら、悟空達はドラゴンボールの反応があった星にたどり着いた。この星も惑星セモ-ク同様人っ子一人いないが、それ程暑苦しい星ではなかった。ただ岩だらけの星で、ボール探しは難渋しそうに見えた。悟空達はレーダーを見ながらドラゴンボールの反応場所まで飛行を続けた。
「ドラゴンボールハッケン。ドラゴンボールハッケン。」
ギルが突然騒ぎ出し、戦士達は一斉に地上を見下ろしたが、ドラゴンボールらしき物は見当たらなかった。悟空達は一先ず地上に下りて探索を開始した。ところが、十一人という大人数で探しているにもかかわらず、ドラゴンボールは一向に見つからなかった。
「ちょっと、ドラゴンボールなんて全然見つからないじゃないの。あんた、壊れたんじゃないの?」
全然ドラゴンボールが見つからない事に苛立ったパンが、ギルに文句を言った。トランクスはそんなパンを宥めながら、レーダーを注視した。
「レーダーを見ると、ここよりかなり下の方に反応があるな。おそらく地中深く埋もれているのだろう」
一旦探索を中断し、トランクスは皆を下がらせてから地面に向けてエネルギー波を放った。地面に大きな穴が空き、トランクスを先頭に皆がその穴の中に入っていった。そして、探索を再開してしばらくすると、ピッコロが黒く光る石を発見した。彼がその石を割ると、中から黒光りする玉が出てきた。更にその黒い玉を凝視すると、中には赤い星が五個入っていた。
「あったぞ!ドラゴンボールが!五神球だ」
皆はピッコロの元に一斉に集まり、彼の手にあるドラゴンボールを見つめた。
「これがドラゴンボール?黒いドラゴンボールなんて初めて見たよ」
「色だけではないぞ、悟天。大きさは地球のと変わらんが、地球のより大分重い。まるで鉛球を持っているようだ」
「へー、貸してみろよピッコロ。わっ、ほんとだ。こりゃ持ち運びが面倒だぞ」
悟空の何気ない一言だが、ピッコロは聞き逃さなかった。
「今、何て言った?『持ち運びが面倒』だと?まさか全部集めようなんて言い出すんじゃないだろうな。界王神様が破壊しろと言ったのを忘れたのか?」
「そ、そんな怖い顔すんなよ。でもよ、このドラゴンボールからどんな神龍が出てくるか見てみたくねえか?」
ピッコロは物凄い形相で悟空を睨みつけた。悟空は「分かったよ」と言って持っているドラゴンボールを握り締め、バラバラに破壊した。しかし、次の瞬間、信じられない事が起こった。バラバラになったドラゴンボールの破片の一つ一つが、悟空の手の平の上で組み合わさり、破壊される前の球状に戻った。
「な、何!?ドラゴンボールが元に戻っちまった。信じらんねえ!ドラゴンボールに再生機能が付いてるなんてよ」
「くっ、ならば二度と再生出来ないように粉微塵に粉砕するんだ」
悟空はピッコロの指示に従い、ドラゴンボールを上空に放り上げ、ボールに向けて小さな気功弾を放った。今度は跡形も無く破壊したが、すぐに破壊したはずのドラゴンボールが上空より悟空の手の平に落ちてきた。まるで悟空の行為をあざ笑うかのように。
「何という事だ・・・。化石となって発見される事といい、破壊不可能な事といい、このドラゴンボールはおそらく過去に存在し、現代では失われた伝説の超魔力によって作られた特別なドラゴンボールに違いない」
どうやってもドラゴンボールを破壊出来ない事に悲嘆するピッコロだが、逆にベジータは嬉しくなって笑い出した。
「ふっふっふっ、ピッコロよ。あと一つ手段が残っているぞ。それはドラゴンボールを全部集めて神龍を呼び出し、殺す事だ。神龍がいなくなれば、ドラゴンボールを破壊したのと同じだ」
従来のドラゴンボールは、神龍が死ねばボールが石になり、機能しなくなる。ベジータの発想は間違いではないが、一つ大きな問題があった。
「ベジータ。全てのドラゴンボールを集めようとすれば、途中で必ずジュオウ親衛隊と遭遇する。はっ、お前それが狙いか!?ジュオウ親衛隊には絶対に勝てないと界王神様がおっしゃっていただろう!」
必死にベジータを説得しようとするピッコロだったが、ベジータの考えを変えさせる事は不可能だった。
「戦いもしないで負けを認めるなど出来るものか!奴等をこのままのさばらせておくぐらいなら、戦って死んだ方が遥かにましだ!俺は戦うぞ!例え一人でもな!」
ベジータの性格をよく知るピッコロは、彼の意思を変える事は不可能だと悟り、説得を諦めた。ジュオウ親衛隊との衝突は出来れば避けたかったが、ドラゴンボールを破壊する手段が他に思いつかない以上、ボール探しを続けながら一人でも多く親衛隊を倒す事に専念するよう頭を切り替えた。
「分かった。お前がそこまで覚悟を決めているのなら、俺も戦う。界王神様の命令に逆らうのは心苦しいが、このまま何もしないで帰るよりはましかもしれんな」
「ふっ、そうこなくてはな。おい、カカロット。貴様も異存はないな?」
「ああ。ピッコロにゃ悪いけど、オラも初めからジュオウ親衛隊とは闘うつもりでいたしな。これで心置きなく闘う事が出来っぞ」
こうして打倒ジュオウ親衛隊で意見がまとまった丁度その時、複数の邪悪な気がこちらに向かって近付いてくるのを感じた。悟空達はその気の内の一つがジュオウ親衛隊のものだと推測した。
「どうやら早くもジュオウ親衛隊と一戦交えるみてえだな」
悟空達の間に見る見る緊張が走った。
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