其の四十 ゴジータ再び

大事な髪を燃やされて丸坊主になったカイブは、憤怒の表情でライタの眼前に立った。

「何だ?この俺とやろうというのか?身の程知らずめ。お前なんか髪の毛が無ければ、只の馬鹿だ」

カイブの無様な様子を目の当たりにしたライタは、カイブがジュオウ親衛隊の一員である事を忘れて舐め切っていた。しかし、次の瞬間、ライタはカイブの強烈な一撃を受け、後方へ吹き飛ばされて倒れた。そして、そのまま動かなくなった。

「ラ、ライタ!お、おのれ!」

ライタの敵討ちとばかりにシーガとアストレーが同時に攻め掛かったが、それぞれ一撃を浴び、やはり同じ様に吹き飛ばされた。三人とも瞬く間に倒されてしまったが、幸いにも全員死んでいなかった。悟空達は奇妙な縁で共に戦う事になったセモークの三兄弟に仙豆を使ってあげたかったが、宇宙一武道会で仙豆を使い切って一粒も残っていなかったため、彼等を回復させてあげる事が出来なかった。

「つ、強い。これがジュオウ親衛隊の強さか。あの兄弟を一瞬で倒すとは・・・」
「くっ、やはり油断出来ない。慎重に戦わないと、瞬く間にやられてしまうぞ」

悟天とトランクスは、カイブの強さを目の当たりにして肝を潰した。悟飯達があれほど苦戦したセモ-クの三兄弟を一瞬で倒したカイブを見て、自分達との実力差を改めて思い知らされた。

怒りが覚めやらぬカイブは、続いて悟空達の方を見据えた。悟空達全員が一斉に身構え、一触即発の場面となったが、ここで悟空が仲間達を制止した。

「待て!お前等が束になっても勝てる相手じゃねえ!奴とはオラ一人で戦うから、お前等はここから離れてくれ。」

更なる犠牲が出るのを恐れた悟空は、一人でカイブと戦う決意を固めた。悟飯達は悟空の戦いの邪魔にならないよう少し離れた場所に移動したが、ベジータだけはその場から動かなかった。

「ベジータ、何をしている?お前も早く・・・」
「ふん。相手はジュオウ親衛隊だ。幾ら貴様でも一人では手に負えまい。俺も戦うぞ」
「分かった。お前と一緒なら心強い」

しばらく悟空達とカイブの睨み合いが続いた後、悟空とベジータは同時に超サイヤ人4へと変身し、カイブに攻撃を仕掛けた。二人は最初は様子見程度に戦い、戦いながら徐々に気を高めていき、遂には両者とも武道会で見せた以上のパワーとスピードで激しく攻め立てたが、カイブはそれ以上のスピードで二人の攻撃を全て弾いた。

正面からでは敵わないと判断した二人は、今度はカイブの背後に回りこんで後ろから攻めたが、カイブには行動が既に読まれていたために攻撃を避けられ、逆に二人とも手痛い反撃を喰らった。

まともに戦っては不利と判断した悟空は、ベジータにカイブの注意を引き付けさせ、隙を見てカイブの腹部に龍拳を放った。龍拳は狙い通りの場所に直撃したが、驚いた事に貫通出来なかった。龍拳で敵を貫けなかったのは今回が初めてであり、カイブの肉体は悟空の想像以上に強靭だった。

カイブの腹部からは血が滴り落ち、龍拳を喰らって決してダメージを受けなかったわけではないが、致命傷には程遠かった。悟空は続けて龍拳を放とうとするが、その前にカイブに右手首を掴まれ、投げ飛ばされた。悟空は飛ばされながらも空中で停止したが、その悟空に向けてカイブは口からエネルギー砲を放った。しかし、悟空が急いで上空へと逃れたため、間一髪でエネルギー砲を避けられた。

カイブは上空の悟空に対して続けてエネルギー砲を放とうと口を開けたが、背後よりベジータが右の回し蹴りを繰り出し、それがカイブの首の付け根に当たった。カイブがその衝撃で前のめりになり、その間に悟空は地上へと戻った。一方のベジータは少し距離を置いてから、カイブの背中に向けて連続エネルギー波を放った。バランスを崩したままのカイブは連続エネルギー波を受け、その後に発生した爆発に巻き込まれた。

ベジータは攻撃を止め、一息ついた。そんな彼の元に悟空が歩み寄った。二人共これで決着が付いたとは露ほども思っておらず、爆発により発生した煙からカイブが出てくるのを待ち構えた。そして、煙が晴れた後、多少傷を負いながらも平然としているカイブが現れた。その余りのダメージの少なさに、二人は苛立ちを覚えた。

「くそったれが!俺の攻撃を喰らって、ほとんどダメージを受けていないだと!?」
「どうやら俺達、とんでもねえ化け物を相手に戦ってるようだな。参ったな、こりゃ」

一方のカイブは自分の強さに自惚れるわけでもなく、時折「ウー」と妙な唸り声を上げていた。カイブは口数が少なくなり、態度が明らかに変わっていた。実はカイブは髪を燃やされた怒りから理性を失い、野獣と化していた。

カイブは髪が無くても強かった。むしろ髪はカイブにとって、おまけに過ぎなかった事を悟空達は嫌と言うほど思い知らされた。このまま二人で戦っても勝ち目が無いと悟空とベジータは既に悟っていた。

不利を悟っていたのは悟空とベジータだけではなかった。戦いを観戦している悟飯達も同様の思いだった。

「ある程度の強さは予想していたけど、まさかここまで強いとは・・・。ジフ-ミやヒサッツよりも遥かに強い。もしかすると本気になったレードより強いかもしれない。やはり界王神様が仰られた通り、ジュオウ親衛隊とは戦うべきでなかった」
「今更そんな事を言っても、最早どうにもならん。ここはあいつらを信じるしかない」

ピッコロが珍しく弱気になっている悟飯に励ましの言葉を掛けた。しかし、半分は自分自身に言い聞かせていた。

焦る悟空とベジータは、カイブと距離を置いて戦闘を中断し、話し合いを始めた。

「どうするベジータ?ここは魔界だから大した元気玉は作れねえだろうし、あの様子じゃ十倍かめはめ波も余り効きそうにねえ」
「回りくどい言い方はやめて、ハッキリ言ったらどうなんだ?フュージョンしか奴を倒せる方法はないとな。フュージョンだけは避けたかったが、そうも言ってられんな」
「そうだな。なーに、フュージョンを使えば、あんな奴すぐに倒せるさ」

意見が一致したところで二人はフュージョンポーズを取った。久しぶりの割には見事に息が合い、強烈な気を放つ超サイヤ人4ゴジ-タが出現した。その余りの威圧感に、カイブは一瞬動きが止まった。

「さあ、一気に片付けさせてもらうぜ」

自信満々のゴジ-タは正面からカイブに飛び掛かった。流石と言うべきか、ゴジ-タはカイブを圧倒する力で次々と攻撃を浴びせた。ゴジ-タの攻撃が当たる度にカイブは苦悶の表情を浮かべ、最後は上空に逃れたカイブを、ゴジ-タが追いかけ追いつき、地上に思いっきり叩きつけた。ゴジ-タはこれで勝負は付いたと思ったが、カイブは平然と立ち上がった。

「ほう、あの攻撃を喰らって立てるとは、思ったよりやるな」

ゴジ-タは更に気を高め、再度攻撃を試みた。ゴジ-タはまだ本気を出していなかったが、完全にカイブを圧倒していた。カイブは既に本気モードでゴジ-タに戦いを挑んでいたが、ゴジ-タに触れる事も出来ず、逆に攻撃を受け続けて再び倒れた。しかし、すぐに立ち上がった。

ゴジ-タは絶えず攻撃し続け、カイブは幾度となく倒れたが、その度に立ち上がってはゴジ-タに向かっていった。カイブにはゴジ-タに対する恐怖心は無く、本能の赴くままに戦っていた。その余りのしぶとさに、初めは楽勝ムードだったゴジ-タも、段々不安を覚えてきた。カイブはゴジ-タの攻撃を喰らって着実に傷ついていたが、驚くほどタフだった。

実力はゴジ-タの方が完全に上回っていたが、ゴジ-タは内心焦っていた。カイブと違い、ゴジ-タには合体していられる制限時間があるせいで、焦らざるを得なかった。それさえなければ普通に戦って順調に勝利を収める事が出来るが、如何せん合体していられる時間が短く、敵がタフマンなため、ゴジ-タには遊んでいられる余裕は無かった。

「何てしぶとい奴だ。このまま戦い続けても、きりが無さそうだ」

ゴジ-タは本気になって戦っていた。ゴジ-タはカイブから一撃も攻撃を受けず、一方的に戦いを有利に進めていたが、実際に追い詰められていたのはゴジ-タの方だった。

合体が解ける前にカイブを倒せたら勝利で、倒せなければ敗北必至という厳しい状況へ追い込まれたゴジータ。カイブとの戦いは間も無く決着の時を迎えようとしていた。

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