ゴジ-タはサイヤ人を上回るタフネスなカイブを相手にして、焦りを禁じ得なかった。合体していられる時間内にカイブを倒せるか考えると、焦らずにはいられなかった。
肉弾戦では時間内に倒せないと判断したゴジ-タは、一気に勝負を決めるため、カイブに向けてビッグバンかめはめ波を放った。カイブはそれを避ける間もなく、まともに喰らった。ビッグバンかめはめ波の影響で現在いる星の約三分の一が消失し、カイブの姿は立ち込める煙に覆われ、完全に見えなくなった。
しかし、これで戦いが終わったわけではなかった。煙の中から身長が三十メートルにも巨大化したカイブが現れた。カイブもまた、このままでは勝てないと考え、奥の手である巨大化を使ってゴジ-タに対抗してきた。
カイブの突然の変化に驚き、動きが一瞬止まってしまったゴジ-タに、カイブの右拳のパンチが飛んできた。殴り飛ばされたゴジ-タだったが、すぐに体勢を立て直してカイブに向かっていった。巨大化したカイブの戦闘力は上昇していたが、それでもゴジ-タの戦闘力の方が上だった。お返しとばかりにゴジータは、カイブの腹部に渾身の力を込めて体当たりした。
ところが、カイブはすぐに反撃してきた。カイブは巨大化した事で戦闘力だけでなく、防御力も格段に増していた。こうなってしまうと、制限時間がある分ゴジ-タは益々不利になっていた。最早時間内にカイブを倒す事は出来ないと悟ったゴジ-タは、時間が来るまで可能な限りダメージを与えて弱らせようと頭を切り替えた。
カイブのスピードは巨大化したせいで遅くなっていたので、ゴジ-タの動きに付いていけなくなっていた。ゴジ-タはカイブを何度も攻撃し、時折ビッグバンかめはめ波も放った。カイブの体は傷付き、動きが徐々に遅くなっていった。
こうして最後はゴジ-タの思惑通り、カイブの弱体化には成功したが、結局カイブを倒すまでには至らなかった。フュージョンが解け、元の悟空とベジータに戻ったが、戦い続けた二人は体力を大幅に消耗していた。
「く、くそったれが!フュージョンしても倒す事が出来んとは!」
「で、でもよベジータ。相当ダメージを与えたから、あいつの気はかなり減ったぞ。あれだったら悟飯達で勝てるかもしれねえ」
大ダメージを負って沈静化しているカイブの相手を、後は悟飯達に任せようと彼等のいる方角を振り向いた悟空達だったが、突然カイブが動き出し、悟空はカイブの右手に、ベジータはカイブの左手に各々捕まってしまった。
「し、しまった!」
隙を付かれた悟空とベジータは、何とか脱出しようと藻掻いたが、今の二人に脱出するだけの力は残されていなかった。カイブに力強く握り締められ、それぞれ気を失ってしまった。この時、一部始終を見ていた悟飯の様子が豹変した。
「止めろー!」
悟空達の危機に、悟飯は果敢にもカイブに向かっていった。もはや実力差とかそんなのは彼の頭に無く、悟空達の身を案じての咄嗟の行動だった。そして、悟空達を傷付けたカイブに対して激しい憤りを覚えていた。
悟飯はカイブの眉間を蹴り、その衝撃でカイブは吹っ飛ばされた。悟空とベジータはカイブの手から開放されて地面へ落下した。悟空の元に悟天が、ベジータの元にトランクスが、それぞれ駆けつけて介抱したが、二人とも命に別状は無かった。それ程大きなダメージを負っているわけでもなく、一時的に意識を失っているに過ぎなかった。
悟飯は尚もカイブに攻撃を続けていた。彼は怒った事で久しぶりに真の力を解放していた。その圧倒的な力は、弱っているとはいえ、カイブを凌駕する程だった。
「す、凄い。あ、あれが悟飯さんの怒りのパワーか・・・。話で聞いた事はあるが、これ程とは・・・」
「さすが兄ちゃん。超サイヤ人4になった父さんに匹敵するパワーだ。か、勝てるかもしれない」
トランクスも、悟飯の弟である悟天でさえも、悟飯が本気で怒ったところを今まで見た事はなかった。
現在カイブと戦っていたのは悟飯だけではなかった。ピッコロは少し離れた所から援護射撃していた。彼は悟飯の位置を把握し、カイブにだけ当たるように神魔光裂斬を何度も放っていた。神魔光裂斬を使ってもカイブの体を切断する事は出来なかったが、体の様々な箇所に大きな裂傷を負わせていた。
トランクスと悟天は、この場を悟飯とピッコロに任せ、自分達の父親を抱えて先程いた場所へと移動した。そして、悟空達を地面に降ろし、戦いを観戦した。
悟飯達を鬱陶しく思ったカイブは、攻撃の合い間を見計らって反撃するものの、彼等の勢いは止まらなかった。
悟飯達は一方的に攻撃し続けていたが、やはりカイブを倒すのは容易ではなかった。カイブは更に傷付いていったが、一向に死ぬ気配が無かった。痺れを切らした悟飯は、カイブの口の中を目掛けてかめはめ波を放った。それも一度ではなく何度も放ち、遂にカイブは倒れた。悟飯の戦いぶりに満足したピッコロは、悟飯の元に駆け寄った。
「やったな、悟飯!とうとうこの化け物を倒したな!」
「まだ分かりませんよ、ピッコロさん。お父さん達があれだけ攻撃して倒せなかった奴ですから。また立ち上がってくると思います」
悟飯の予想は当たっていた。カイブは再び起き上がり、悟飯達への攻撃を再開した。カイブは理性を失い、死ぬまで戦いを止めない戦闘マシーンと化していた。悟飯とピッコロは、どうすればこの不死身の化け物を倒せるのか悩み、攻めあぐねた。
「どうやら俺達の出番のようだな。いくぞ悟天、フュージョンだ!」
トランクスは悟天に声を掛け、二人でフュージョンポーズを取り、ゴテンクスとなった。それも超サイヤ人3ではなく、何と超サイヤ人4に変身したゴテンクスだった。現在、彼等二人は単独では超サイヤ人3までしか変身出来ないが、ゴテンクスとなればワンランク上の超サイヤ人4にまで変身出来る様になっていた。
ゴテンクスはカイブの頭上に高速移動し、カイブに向けて連続スーパードーナツを放った。複数のドーナツ状の気の固まりによって動きを拘束されたカイブに向けて、ゴテンクスは今度は連続死ね死ねミサイルで攻撃した。側にいた悟飯とピッコロは慌ててその場から離れ、カイブはミサイルにより発生した煙に覆い尽くされた。
煙が晴れた時、カイブの周囲を無数のお化けが取り囲んでいた。当然ゴテンクスが出したお化けで、彼はカイブの視界が煙で遮られている間にお化け達をカイブの周囲に配置していた。
「喰らえ!止めの超ゴーストカミカゼアターック!」
ゴテンクスの指示の元、お化け達は一斉にカイブに突撃し、それぞれカイブを巻き込んで大爆発を起こした。カイブは再び煙に包まれ、煙が晴れると、そこには元の大きさに戻ったカイブが倒れていた。息も絶え絶えで、もはや立ち上がる力すら残っていないが、それでもカイブは生きていた。
「まだ死んでなかったのか。よーし、今度こそ・・・」
「待て。これ以上攻撃する必要はねえ。既に勝負はついた」
更にカイブを攻撃するため、ゴテンクスはもう一度お化けを出そうとしたが、その前に悟空がゴテンクスに近寄り、彼の肩に手を置いて攻撃を止めさせた。その悟空のすぐ後ろに悟飯、ピッコロ、ベジータ、パン、ウーブも立っていた。
悟空の指摘通り、カイブからほとんど気を感じられず、もうじき死ぬ事が予見された。どんなに耐久力がある戦士でも、不死身でない限り、攻撃を受け続ければ、いずれ限界が来る。ゴテンクスの攻撃によってカイブは、その限界まで達していた。
悟空は片膝を付いて倒れているカイブに話し掛けた。
「おい、オラの声が聞こえるか?」
「うっ、お、俺は負けたのか?」
「ああ。惜しかったな」
カイブは死に面して正気を取り戻していた。カイブは戦闘マシーンと化している間の記憶は一切無く、気付いたら自分が瀕死の重傷で倒れていた。生み出された時から類稀な戦闘力を有していたカイブは自分の実力に絶対の自信を誇り、そのため自分が負けるなど予想だにしない出来事だった。
「くっ、ジュ、ジュオウ親衛隊のこ、この俺が負けるとは・・・。だ、だが俺に勝てたぐらいで、いい気になるなよ。親衛隊の中には俺より遥かに恐ろしい奴がいるんだ。お前達はま、間違いなく皆殺しにされる」
話し終えたカイブの体は徐々に消えていき、やがて消滅した。悟空達は苦労の末にジュオウ親衛隊の一角を崩したが、これにより残り六人との激突は避けられないものとなった。カイブが死ぬ間際に言った彼より遥かに恐ろしい奴とは一体どんな敵なのか、悟空達は気になって仕方なかった。
コメント