其の四十三 レジスタンス

飛行中に奇襲を受けた悟空達だったが、この程度の攻撃でやられる彼等ではなかった。各々が余裕で飛んできた光弾を避け、ベジータは光弾の雨を潜り抜けて地上の森に向かって急降下した。

森の中には魔族が十人ばかりいて、ベジータが降り立つと魔族達が一斉にベジータに飛び掛かったが、瞬く間に一蹴された。ベジータは倒れている魔族の一人の襟首を掴んだまま持ち上げ、問い質した。

「貴様等は何者だ?どうして俺達を襲った?」

尋問された魔族は何も答えず、苦しそうな呻き声を上げていた。答えようとしない魔族に苛立ったベジータは、その魔族を殺そうとした。

「ま、待ってくれ、ベジータ。頼むから殺さないでくれ」

ベジータの後を追って悟空達は地上に降り立っていたが、シーガが慌ててベジータに魔族の命乞いを始めた。

「殺すなだと?貴様はこいつ等を知っているのか?」
「ああ。魔王ルーエ様に仕えていた時の俺の部下達だ。頼むから放してやってくれ。こいつ等が我々を襲ったのには何か理由があるはずだ」

魔族達はシーガの顔を見て表情が一変した。ベジータに持ち上げられている魔族以外は、シーガの元に感激した面持ちで駆け寄った。ベジータは捕まえている魔族を放してやると、その魔族もシーガの元に駆け寄った。そして、魔族の一人が話し始めた。

「シーガ様、ライタ様、アストレー様、お久しぶりです。生きてたのですね」
「ああ。お前達も無事で何より。それより、何で我々を襲った?」
「じ、実は現在この星にジュオウ親衛隊の一人テキ-ムが来ていて、シーガ様達の事をテキ-ムの手の者だと思い込んでしまい、よく確かめもしないで攻撃してしまいました。も、申し訳ありません」

魔族達は悟空達に頭を下げて謝った。悟空達は誰も傷ついていなかったので、これ以上は彼等を責めない事にした。

「それにしても、よく今日まで生き延びたな。生き残ったのは、お前達だけか?」
「いえ、近くに洞窟があり、その中に他に生き残った者達が居ます。俺達はそこをアジトにして、ジュオウに復讐する機を窺っていました。そこに案内しますから、どうか俺達に付いて来てください。皆もシーガ様達の顔を見たら喜ぶでしょう」

悟空達は魔族に案内されて洞窟へと向かった。道すがら彼等の話を聞いていたが、敗戦後に生き残った者達は追跡を逃れるために四散したが、しばらくすると再びこの星に集まり、ジュオウ親衛隊に発見されないように洞窟内で潜んでいたらしい。少し歩いた後、その洞窟に到着した。

悟空達が洞窟の中に入ると、そこに千人ぐらいの魔族が居た。魔族達はシーガ達の顔を見ると一斉に歓喜の声を上げ、中には涙を流す者すらいた。

悟空達は案内されるがまま洞窟の奥へと進んだ。作戦会議室として使用されている岩を削って作られた一室に通されたが、その部屋には中に赤い星が入った黒い珠が飾られていた。ドラゴンボールである。

「あ!ドラゴンボール!何でここにあるんだ!?」
「この珠を知っているんですか?この洞窟内で発見した物で、珍しい珠だから飾っていました。よろしければ誤って襲った詫びも兼ねて差し上げます」
「サンキュー」

悟空はドラゴンボールを手に取り、中にある星の数を数えた。全部で七個の星がある七神球で、悟空は持っていた鞄の中に七神球を入れた。その鞄の中には、以前見つけた五神球もあった。

「先程の話に戻りますが、現在テキームが兵を率いてこの星に来ており、どういう訳か奴等はこの洞窟の場所を知っていて、度々ここを襲撃しているのです。恐らく一年前の戦争で生き残った俺達を皆殺しにするためでしょう。これまでは何とか撃退しているのですが、今まで襲撃してきた奴等の中にテキームはいませんでした。全てテキームに仕える兵士達でした」

ドラゴンボールの事を知らない魔族達は、テキームが兵士を使って襲撃している本当の理由が、ドラゴンボールがこの洞窟内にあるためだとは気付いていなかった。ジュオウ親衛隊は各々ドラゴンレーダーを所持しているのだから、ボールがあるこの場所を見つけるのに苦労しない。またテキーム自身が襲撃メンバーに加わっていない事から、今まで本腰を入れてドラゴンボールを奪いに来ていないと予想された。

「じゃあ、ここで待ってればテキームの兵が来るわけだな?そいつ等だったらテキームが何処にいるか知ってんだろ?」
「そうだと思いますが、もしかしてあなたはテキームと闘うつもりですか?」
「ああ。正確に言えば倒すつもりだがな」

自信満々に応えた悟空だが、それを聞いた魔族達の表情が一斉に青ざめた。

「あなたはテキームがどんな奴か知っているのですか?」
「どんな攻撃も通じないって聞いてるけど」
「そこまで知っていながら、どうして闘おうとするのですか?誰であろうと、テキームには勝てません。あの魔王ルーエ様でさえ、為す術なく殺されたのですから・・・」

この魔族の発した言葉に、ライタが敏感に反応した。

「何?ルーエ様はテキームに殺されたのか?」
「そうです。ご存知ありませんでしたか?」
「知らなかった。ルーエ様を殺したのは、ジュオウ親衛隊の誰なのか気になっていたが、まさかテキームだったとは・・・。いい機会だ。テキームを討ち、ルーエ様の無念を晴らしてやる!」

ライタの言葉に、シーガやアストレーも力強く頷いた。こうしてセモ-クの三兄弟も打倒テキームに闘志を燃やした。しかし、魔族は血相を変えて反対した。

「お止めください、ライタ様!折角あなた方が生き残っていると知り、俺達のリーダーになってもらおうと思っていたのに、こんな所で命を落とす気ですか?あなた方まで死んでしまったら、俺達はこの先どうすればいいんですか!?」
「心配いらん。この者達が一緒なら、相手がジュオウ親衛隊でも負けはしない。実を言うと、俺達は既に親衛隊の一人カイブを倒したのだ」

ライタは髪を燃やした後は大した活躍もしていなかったくせに、まるで自分がカイブを倒したかのように居丈高に言い放った。

「それは凄い!でも、カイブとテキームじゃ比較になりません。ここはテキームと遭遇する前に、この星から離れましょう」
「お前には魔族としての誇りがないのか!?仇敵が目の前にいるのに、何もしないで逃げ出す気か!」
「そ、そう言われても、テキームは普通じゃないんです。あいつの体は・・・」

ライタと魔族との議論は、駆け込んできた一人の魔族によって遮られた。

「大変です!テキームの兵が、またやって来ました!ですが、これまではすぐに襲い掛かってきたのに、今回は洞窟の外に待機して『代表者を出せ』と言っています」

その場にいた者達は、この報告を聞くや否や急いで洞窟の外へと出た。洞窟の入り口から少し離れた所に、テキームの兵士達が手ぐすねを引いて待ち構えていた。悟空達と一緒にいた魔族が、その兵士達に向けて叫んだ。

「性懲りもなく、また来たのか!また打ちのめしてやる!」
「ふん。これまで散々やってくれたな。今回はこれまでの様にはいかんぞ。なにせテキーム様が直々に来られたのだからな」

この兵士の一言を悟空達は聞き逃さなかった。

「ありがてえ。向こうから来てくれたのか。こっちから出向く手間が省けたぜ。どいつがテキームだ?出て来い!」
「何だ貴様は?テキーム様に逆らう気か?馬鹿な奴め。こてんぱんにやられて己の無力を知るがいい」

兵士達は左右に分かれ、中央を開けた。そして、その中央から白い光が悟空達の方にゆっくりと近付いてきた。

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