「邪悪な気は、この場所に向かっている。間違いなく戦闘になる。でも、ここで戦うわけにはいかねえ。誰もいねえ場所に移るぞ」
「気をつけて下さい、お父さん。パワーアップが終了したら、すぐ俺も行きますから」
「心配いらねえぞ、悟飯。ここで大人しく朗報を待っててくれ」
悟空達は悟飯のパワーアップの邪魔にならないよう地上へと向かい、悟空達と一緒にいたブルマ達も飛行機に乗って彼等の後を追った。悟空は飛行しながら地上を見下ろし、決戦の舞台を何処にするか吟味し、岩山が多い場所を決戦の地に選んだ。悟空達は岩山の上に降り立ち、ブルマ達は悟空達から離れた場所に降り立った。一方、悟空達に向かってくる邪悪な気は、彼等の移動に合わせて進む方向を修正した。
「来たぞ!」
悟空達が一斉に上空を見上げると、熱を帯びた何かが間近に迫ってきた。それは大気圏を突き抜け、悟空達を目掛けて突っ込んできた。悟空達は慌てて後方へと退き、そのすぐ後に何かが地上に激突した。まるで隕石が衝突したのかと錯覚するほどの衝撃があり、激しい地響きが起こって辺りは厚い煙に覆われた。そして、その煙の中からジフーミが現れた。ジフーミは悟空達に向かって飛行し、彼等の目の前で降り立った。
「会いたかったぞ、ジフーミ。ようやく借りが返せる」
「馬鹿め。一度やられたくせに、まだ懲りないのか。今度こそ殺してやる。それにしても、ここは中々良い星だな。この世界を征服したら、俺はこの星をもらおうかな」
「お前なんかに地球をやるもんか!」
悟空達は憎悪を込めてジフーミを睨んだ。
「今まで色んな奴が、この地球に攻めてきたけど、宇宙船を使わずに飛んで来たのは、お前が初めてだ。よく広い宇宙の中から、オラ達の居場所が分かったな」
「当たり前だ。この世界には大した奴等がいないからな。お前達の気を探すのは、そんなに難しくなかった。方々を飛び回って気を探し、見つけた後は全速力で飛んで来た」
この二日間、ジフーミは宇宙中を飛び回りながら悟空達の気を探していた。宇宙空間でも生きられ、ずっと飛び回っていながら一切疲れないのは、高速完全再生能力を持つジフーミならではの芸当だった。
また、今更述べる事ではないが、悟空達の気は他の星にいる宇宙人とは比べ物にならないほど大きかった。気を探る能力がある者ならば、かなり離れた場所にいても、悟空達の気を見つけるのは容易だった。
「今度は俺が尋ねる番だ。つい先日、ジュオウ親衛隊のカイブとテキームが何者かに倒された。そして、魔界のドラゴンボールが何処かに持ち去られた。お前達の仕業か?」
「そうだ。二人とも手強かったけどな」
悟空は隠そうともせず、正直に答えた。その開き直った態度に、ジフーミは無性に腹が立ってきた。
「やはりそうか・・・。余計な真似をしやがって!二人が倒されたから、ジュオウ様は激怒したぞ。そして、ヒサッツはお前達の仕業だと断定した。更にヒサッツは、武道会で俺がお前等を殺さなかった事を告げ口したせいで、ジュオウ様の俺に対する評価はガタ落ちだ!二人が死んだのを俺のせいにされてな!」
ジフーミは烈火の如く怒った。べジータはジフーミが怒り出した事に多少の快感を覚え、もっとジフーミを怒らせようとした。
「そうか・・・。そいつは悪かったな。俺達が二人も親衛隊を倒したせいで、貴様はジュオウに散々叱られたのか?でかい図体して情けない野郎だ」
「こ、この野郎、言わせておけば・・・。ぶっ殺してやる!」
「最初からそのつもりだろ?ジュオウに俺達を皆殺しにし、ドラゴンボールを取り戻して来いと言われたんだろ?そうしなければ、失った信頼を取り戻せないからな」
べジータの言動に激怒したジフーミは、今にも襲い掛からんとする様相を見せたが、悟空達は応戦したい気持ちを抑えて会話を続けた。
「オラ達が二人を倒したと薄々気付いていながら、お前は一人でオラ達と戦うつもりか?ヒサッツは一緒じゃないのか?」
「ヒサッツだと!?お前等を倒すのにヒサッツの助けなんか必要無い!俺一人で充分だ!さっさと全員まとめて掛かって来やがれ!」
悟空達はジフーミが苦々しくヒサッツを語る様子から判断して、この二人が喧嘩したと推察した。武道会でも衝突していた二人だけに、いつか仲違いしてもおかしくないと悟空達は思っていた。一方、怒りで我を忘れているジフーミの頭の中には、どうやって悟空達はカイブ達を倒せたのかとか、自分の力だけで悟空達を倒せるのかという疑問は一切無かった。
ジフーミとは対照的に、悟空達は少々拍子抜けしていた。ジュオウ親衛隊を二人倒し、魔界のドラゴンボールを持ち出している以上、ジュオウが何らかの手を打ってくる事は、ある程度予想していた。もしジュオウが親衛隊を嗾けるとしたら、より強力な親衛隊、あるいはジフーミとヒサッツが同時に挑んでくると思っていた。
もしジフーミとヒサッツが来るならば、悟空達はフュージョンを使って応戦するという構想を頭に描いていた。しかし、実際に来たのはジフーミ一人なので、先のカイブやテキームに比べて多少見劣りする感じがした。ジフーミとヒサッツを同時に相手にする必要がない以上、二人を個別に撃破すれば良いと悟空達は目論んだ。
ジフーミから聞きたい情報を全て聞き出した悟空達は一斉に身構え、いざ決戦に移行するかと思いきや、べジータが皆を制止した。そして、ベジータは一歩前に出た。呆気に取られる悟空達やジフーミを尻目に、ベジータは自信たっぷりに話し始めた。
「ふっ。貴様如きを相手に俺達全員で戦えるか。俺が相手になってやる」
「待てよ、べジータ。お前一人で戦う気か?」
「そうだ。奴だけは俺の手で仕留めねば気が済まん」
「冗談じゃねえぞ!それはオラだって同じだ!あいつだけは譲れねえぞ。オラが戦う」
「ちっ。どうやら、どちらがジフーミと戦うか決めねばならんようだな」
悟空もベジータも、ジフーミに敗北を喫しただけに、ジフーミとの再戦を熱望していた。このまま言い争ってもキリが無いので、悟空とべジータは、ここで恒例のじゃんけんを始めた。二人とも心の底からジフーミと戦いたいだけに、じゃんけんといえども、彼等の表情は真剣そのものだった。
「よっしゃー!オラの勝ちだー!」
「くそっ。だがなカカロット、余り良い気になるなよ。戦闘時間は一分だけだ。一分経ったら俺と交代だからな」
「一分!?そりゃねえだろ!べジータ」
「うるさい!つべこべ言うな!ぼやぼやしてると、どんどん時間が無くなるぞ」
ベジータを除く悟空の仲間達は、戦いの邪魔にならないよう後方へ退いた。べジータ以外の仲間達は、後方に移動しながら、悟空とベジータが一緒に戦えば、確実にジフーミを仕留められるのにと考え、やきもきしながらも、それを決して口には出さなかった。
「仕方ねえ。一分で倒すとするか」
「俺を一分で倒すだと!?お前まさか俺の強さを忘れたのか?」
「そうじゃねえ。お前の事を良く分かっているからこそ、倒し方も分かるんだ」
悟空は気持ちを切り替え、超サイヤ人4に変身した。
「何だこの気は!?武道会の時よりも大きい。これは一体?」
悟空の気が想定以上に大きい事に動揺したジフーミに対し、悟空は果敢に飛び掛かった。こうして決戦の火蓋は切って落とされた。
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