悟空はジフーミに正面から突っ込んだ。対するジフーミは迎撃態勢を取って待ち構え、悟空の接近に合わせて右のパンチを繰り出した。しかし、当たったかに見えたジフーミのパンチは空を切り、一瞬でジフーミの背後に回った悟空の右エルボーがジフーミの後頭部を捉えた。
悟空はジフーミから距離を置き、再び突撃した。ジフーミは「今度こそは」と悟空の動きを凝視し、迫る悟空に向けて右のキックを出したが、これも悟空には当たらず、上空に移動していた悟空の蹴りを側頭部に喰らう羽目になった。ジフーミは自分の攻撃が当たらないので苛立ってきた。
「くそー、何故だ!どうして俺の攻撃が当たらないんだ!?」
「まだ分からないのか?お前の攻撃が当たる瞬間、俺はスピードを上げているんだ。お前は俺の動きを目で追っているから、俺のスピードに付いてこれないんだ」
「なるほど。だったら、今度こそ攻撃を喰らわせてやる」
悟空は再度ジフーミに突っ込んだ。ジフーミはすぐに迎撃しようとせず、悟空の気を読もうとした。だが、今回の悟空は小細工無しで、そのままジフーミの顔面をぶん殴った。戦いの駆け引きにおいては、悟空の方が一枚も二枚もジフーミを上回っていた。
「お、お、おのれー!」
悟空の攻撃に業を煮やしたジフーミは悟空に襲い掛かり、無我夢中で攻撃し続けた。しかし、そんな攻撃が悟空に当たるはずもなく、悟空は余裕でジフーミの攻撃を全て避けた。そして、悟空は隙を見てジフーミを足払いした。
ジフーミはバランスを崩して片膝を付いた。狙っていた瞬間が遂に巡って来た悟空は、ジフーミが立ち上がる前に、ジフーミに向けて十倍かめはめ波を放つ構えを取った。もし悟空が十倍かめはめ波が放っていたら、ジフーミは避ける事も防ぐ事も出来ずに完全消滅していただろう。ところが、悟空が十倍かめはめ波を放つ直前、何者かが悟空を背後から蹴飛ばした。
蹴飛ばされた悟空は慌てて態勢を立て直し、先程自分がいた方角に目を向け、自分を蹴った相手を直視した。何と犯人はベジータだった。千載一遇の好機を潰された悟空は怒ってベジータに詰め寄った。
「何すんだよ!?ベジータ!もう少しでジフーミを倒せたのに!」
「残念だが時間切れだ。後は俺が戦うから、貴様は大人しく後ろで見学していろ」
「お前だって戦える時間は一分だけだからな。一分経ったら、また俺が戦うぞ」
「いいだろう。どうせ一分後にジフーミは、この世にいないのだからな」
悟空は元の姿に戻って後退し、代わりにベジータが超サイヤ人4に変身した。危ない場面を敵であるベジータに助けられたジフーミだったが、気を取り直してベジータに照準を合わせた。
「な、何なんだ一体?お前等は仲間じゃなかったのか?」
「今回ばかりは仲間というよりも、同じ獲物を狙う競争相手だ。貴様という獲物をな」
ベジータは早速ジフーミに攻撃を仕掛けた。ジフーミに飛び掛かり、彼の右腕を掴んで上空に投げ飛ばした。そして、ジフーミに向けてファイナルシャインアタックを放った。ジフーミは何の構えも取れずに攻撃が命中したが、ジフーミの完全消滅までには至らず、ジフーミはすぐに元の体の状態に戻った。
「ちっ、ファイナルシャインアタックではパワー不足か。やはりファイナルビッグバンしかないか・・・」
上空のジフーミは悟っていた。パワーはともかく、スピードに関しては、悟空やベジータの方が自分より遥かに上だという事を。ジフーミは感情の赴くまま、一人で地球に来た事を後悔した。
ベジータは両手に、それぞれビッグバンアタックを作った。そして、右手に作ったビッグバンアタックだけをジフーミに向けて発射した。迫り来るビッグバンアタックを完全には避けられないと判断したジフーミは、両手を突き出して受け止めようとした。しかし、ジフーミの力を持ってしても、それは容易な事ではなかった。ジフーミは更に上空へと押し出されたが、踏ん張ってビッグバンアタックを空の彼方に投げ飛ばした。
ジフーミがビッグバンアタックに悪戦苦闘している間、ベジータは何もしていなかったわけではなかった。その間にファイナルフラッシュを作成し、それを先程左手で作ったビッグバンアタックに向けて放った。
作るのに時間が掛かるファイナルビッグバンを作っても、その途中でジフーミが必ず妨害する。そう考えていたベジータは、まず二つのビッグバンアタックを同時に作り、その内の一つだけをジフーミに向けて放つ事でジフーミの意識をそこに向けさせ、その間にファイナルフラッシュを作っていた。
ビッグバンアタックを回避出来て安心していたジフーミは、ファイナルビッグバンの存在に気付いていなかった。気付いた時にはファイナルビッグバンが間近に迫っており、それに対して何の準備もしていなかったジフーミの消滅は避けられないはずだった。ところが、ファイナルビッグバンがジフーミに当たる直前、どこからともなく放たれたエネルギー波がファイナルビッグバンに当たって軌道を変え、ジフーミは難を逃れた。
ジフーミは一度ならず二度までも危ない目に遭い、完全に萎縮してしまった。ジフーミは悟空とベジータに恐怖を抱いた。そして、一人で地球に来た事を激しく後悔した。どうも勝ち目が薄そうなので、この場から逃げ出そうかと思ったが、スピードは悟空達の方が上なので、それは不可能と判断し、ひとまず地上に降りて様子を見る事にした。
ベジータはエネルギー波が放たれた方角に目を向けると、そこには悟空が立っていた。後少しでジフーミを倒せただけに、ベジータは激怒した。
「カカロット!貴様、何しやがる!?」
「お前が戦ってから、もう一分経ったぞ。さっきの仕返しだ。次はオラの番だ」
「あ、後少しでジフーミを倒せたのに・・・。俺達が共に戦っても、美味しい所を取るのは大概貴様だろ!今回は俺に譲れ!」
「他はともかく、ジフーミだけは譲れねえ!」
ブルマやブラが見ているので、ベジータは己の手でジフーミを倒さなければ気が済まなかった。そして、ベジータは次に悟空がジフーミと戦えば、今度こそ一分以内にジフーミを倒せるんじゃないかと思った。ベジータの頭の中には、自分が同じ事を悟空に対してした事など既に無かった。遂にはジフーミそっちのけで、悟空とベジータは口論を始めてしまった。ここまで来れば、さすがにピッコロが黙っていられなかった。
「お前等、いい加減にしろ!二度もジフーミを倒すチャンスを潰しやがって!早く二人でジフーミを倒せ!お前等が負ければ、地球は終わりなんだぞ!」
ピッコロは顔を真っ赤にして怒鳴った。悟空とベジータがピッコロのいる方角に目を向けると、彼の側にいるトランクス達までが悟空達を冷ややかな目で見ていた。ピッコロに叱られ、我が子達からは白い目で見られた二人は、さすがにこのままではまずいと思って押し黙った。
今は味方同士で言い争いをしているよりも、ジフーミを倒す方が先決である。しかし、ベジータは悟空と二人で戦う気にはなれなかった。ベジータのファイナルビッグバンは作るのに時間が掛かるのに対し、悟空の十倍かめはめ波は短時間で作れる。そのため、悟空とベジータが同時にジフーミと戦えば、悟空が止めを刺す可能性が遥かに高い。確実に自分の手でジフーミを倒すためには、一つしか方法が無いとベジータは考えた。
「カカロット。ピッコロの言う事は最もだ。ここはフュージョンで手を打たないか?」
「珍しいな。お前がフュージョンしたがるなんて」
「あんな奴を相手にフュージョンする必要なんて本当は無いが、このまま戦い続け、どちらかがジフーミを倒しても、もう一人との間に必ず溝が出来る。フュージョンなら後々いがみ合わず、お互い気持ち良くジフーミを倒せる」
悟空もベジータも本心は自分の力だけでジフーミを倒したかった。しかし、二人ともその思いが強過ぎるだけに、お互いの足を引っ張ったのでは、両者共にジフーミを倒せない可能性があった。それならばフュージョンをすれば、双方いがみ合わず、平和的にジフーミを倒せるという結論に達した。
悟空は再び超サイヤ人4となり、悟空とベジータはジフーミの目の前でフュージョンポーズを取った。フュージョンに対する知識が無いジフーミは、二人が仲直りの印に変なポーズを取っている程度にしか考えていなかった。しかし、その考えは間違いだったと気付く事になる。
「な!?が、合体した・・・」
「覚悟しろ、ジフーミ。こうなってしまえば、もう貴様に勝つチャンスはないぞ」
戸惑うジフーミに対し、ゴジータは不敵に笑った。
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