「お、俺に勝ち目が無いだと?合体したからといって、何が変わるというんだ?」
「まだ気付いていないのか?だったら、すぐに教えてやろう。俺の凄さをな」
ゴジータは一瞬でジフーミの真正面に移動し、ジフーミの左頬を右の拳で殴った。続けてゴジータは、ジフーミの右の蟀谷を左足で回し蹴りした。そして、ジフーミを右足で蹴り上げ、上空に蹴飛ばされたジフーミを、両手の平を合わせて握り締めながら追跡し、ジフーミの腹部を殴った。ジフーミは地面に叩きつけられたが、すぐに立ち上がった。ゴジータは腕を組みながら、ジフーミの眼前に降り立った。
「な、何てスピードとパワーだ。だが俺に、そんな攻撃は通用しないぞ」
「ふっ、通用してもらっては困る。まだまだ貴様には貸しがあるからな。今のは軽い準備運動だ」
「じゅ、準備運動だと!?」
ジフーミは合体前の二人の動きは微かに見る事が出来たが、今のゴジータの動きは全く見えなかった。ジフーミは底知れないゴジータの実力に恐怖を抱いた。
「お、俺を舐めるなー!」
ジフーミは恐怖を振り払おうと、猛然とゴジータに襲い掛かった。ジフーミは両手両足を使ってゴジータに攻撃を仕掛けたが、対するゴジータは手を使わず、両足だけでジフーミの全ての攻撃を凌いだ。更にゴジータはジフーミの攻撃を見計らい、隙を見つけて数発の蹴りをジフーミの顔面に見舞った。
「あ、足だけで俺の攻撃を・・・。そ、そんな・・・」
「どうした?もう一度、掛かって来いよ。そして、早く俺を本気にさせてくれよ。まあ、その程度の実力じゃ無理だろうがな」
ジフーミの肉体上のダメージは皆無だが、精神的なダメージは甚大だった。一回りも二回りも実力が上のゴジータとの戦いで、ジフーミのプライドは既にボロボロだった。
「くそー、最終砲を使えば、お前なんか・・・」
「最終砲か・・・。面白い。使ってみろよ。このまま貴様を倒しても、本当の意味で勝ったとは言えないからな。貴様の自慢とする技を破ってこそ、俺の完全勝利と言える」
「舐めやがって!後悔させてやるぞ!」
ジフーミは圧倒的な力を誇るゴジータを倒すには、最終砲しか方法が無いと考えた。しかし、作るのに時間が掛かる最終砲では、作成途中で必ずゴジータが邪魔をするだろうと予想していた。ところが、予想に反してゴジータから「使え」と言われたので、遠慮なく使う事にした。ジフーミはゴジータを指差し、その指先に気を集中させた。
ジフーミが最終砲を作っているのを見ながら笑みを浮かべ、腕を組んで待つゴジータとは対照的に、観戦しているピッコロ達は気が気でなかった。ゴジータが優勢なのだから、このまま一気に勝負を決めてもらいたいと彼等は願っていた。しかし、ゴジータは自分の実力に自信を持ち過ぎる余り、わざわざ相手の得意な分野で戦おうとしていた。その自信満々な態度が、ピッコロ達には恨めしかった。
そして、ジフーミの体が痩せ細ってきたのに合わせ、ゴジータは腕組みを解いて突然気を溜め始めた。気を最大限に高め、ビッグバンかめはめ波を撃つ構えになった。
「ふん。どんな技を出すつもりか知らんが、俺の最終砲は完全無欠の技だ。このままぶっ殺してやる」
「この世に完全無欠の技なんて存在しない。貴様に元気玉を破られた事で、俺はそれを痛感した。今度は貴様が、それを身をもって知る番だ」
二人の気が最高潮に達した時、両者同時に技を発射した。
「死ね!最終砲!」
「死ぬのはそっちだ!ビッグバンかめはめ波!」
ゴジータとジフーミの中間地点で二つの技が衝突した。その巨大なエネルギーの激突で、大地は激しく揺れ動いた。二人の意地と誇りを掛けた戦いは、双方一歩も譲らぬ展開となり、膠着状態に陥った。
「ぐぐぐ・・・。俺の最終砲と互角に渡り合うとは」
技を出す前は楽勝と思っていたジフーミだったが、ゴジータのビッグバンかめはめ波はジフーミの最終砲に勝るとも劣らない力を有していた。
ピッコロ達も二人の勝負の行方を心配そうに見つめていた。このままだと両者共に消滅するのではないかと危惧した。今の内にピッコロ達が、技に全エネルギーを使っているため衰弱しているジフーミを倒すという選択肢も頭に浮かんだが、技のエネルギーが余りにも強過ぎて近付く事さえ出来なかった。
二人の技が競り合いに耐え切れなくなり、大爆発を起こした。その衝撃で、ゴジータもジフーミも後方に吹き飛ばされた。そして、技が衝突した地点には巨大な穴が空いた。
「ふう。俺が全力で出したビッグバンかめはめ波と互角に渡り合うとはな・・・。何とか勝てると思ったけど、ちょっと考えが甘かったみたいだな。さすがジフーミだ」
最終砲を打ち破れなかったまでも、それと互角に渡り合ったので気分爽快のゴジータとは対照的に、元の体型に戻ったジフーミは、ショックの余り声すら出なかった。頼みとする必殺技だっただけに、引き分けでもそのショックは余りにも大きかった。その心境は、悟空が元気玉を破られた時のと似ていた。
「大分参ったようだな。もう俺の気も済んだ。そろそろ止めを刺すとするか」
ゴジータは言葉を発しないジフーミに右手をかざした。ジフーミは今まさに止めを刺されようという時なのに、ずっと下を向いていた。
「どうした?随分大人しいな。もしかして観念したのか?」
自慢の必殺技が通じなかった直後とはいえ、普段は口やかましいジフーミが、何も言葉を発しないのを不審に思ったゴジータは、ジフーミに声を掛けた。すると突然ジフーミが声を上げて笑い始めた。
「何がおかしいんだ?ひょっとして恐怖の余り、気でも触れたのか?」
「ふはははは・・・。そうではない。やっと分かったんだよ。お前を倒す方法をな」
「俺を倒す方法?貴様が頼みとする最終砲は、通じなかったばかりじゃないか。まだ他に技があるのか?」
ジフーミはゴジータの質問には答えず、右手の人差し指を口にくわえ、それを噛み千切って吐き出した。ジフーミの高速完全再生能力により、すぐに新しい右手の人差し指が生え、地面に転がったジフーミの指は変形し、もう一人のジフーミになった。
「そうか・・・。貴様は確か分裂が出来るんだったな。だが、貴様が二人になったとしても、俺に勝てはしない」
「そいつはどうかな?二人ならお前に勝てる方法を、他ならぬお前自身が教えてくれたではないか」
「何!?それはどういう意味だ?」
二人のジフーミは困惑するゴジータを尻目に並んで立った。
「確かこうやるんだったよな?フュージョン!はっ!」
二人のジフーミは何とフュージョンポーズを始めた。ジフーミの思いもよらぬ行動に呆気に取られたゴジータは反応が遅れ、慌てて止めに入った時は既にジフーミ達のポーズが終了した後だった。二人のジフーミが強烈な光を放ち、その光が消えると、そこには一人のジフーミが立っていた。着ている服以外の外見は以前のジフーミと全く変化ないが、気の大きさは明らかに違っていた。
「ぶっつけ本番でやってみたけど、どうやら上手くいったようだ。まあ元が同一人物だから、動きを合わせるのは難しくなかったがな。それにしてもフュージョンか・・・。素晴らしい技だ。まるで全身から力が漲ってくるようだ。さあ、ここからが本当の戦いだ。今までよくもさんざんコケにしてくれたな。たっぷりお返ししてやるぞ」
フュージョンが成功して急激に力を増したジフーミは、自信を取り戻していた。
「まさかジフーミがフュージョンをするとはな。こいつはちょっとやばいかもな」
思いもよらぬ強敵の出現に、ゴジータは慌てて気を引き締めた。
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