フュージョンによってパワーアップを果たしたジフーミは、ゴジータに向けて光弾を放った。ゴジータは回避のため上空に飛び上がったが、ジフーミも飛び上がってゴジータの後を追ってきた。そして、ジフーミがゴジータに追いつくと、右の拳を突き出してきた。ゴジータは攻撃を避けると同時に右のエルボーをジフーミの顔面にお見舞いしたが、ジフーミは怯まずに更に攻撃してきた。
再生能力があるため、攻撃が当たった直後に回復してしまうジフーミを相手に接近戦をするのは不利だと判断したゴジータは、ジフーミから一旦離れようとしたが、ジフーミがゴジータに付きまとってきた。ジフーミのスピードはゴジータの想像以上に速く、ゴジータが何度振り切ろうとしても、それが出来なかった。そのせいでゴジータは気功弾を撃てず、接近戦へと追い込まれた。
ジフーミはゴジータから何回も殴られたり蹴られたりしたが、一切気にせず幾度も向かってきた。一方、ゴジータはジフーミから攻撃を喰らわなかったが、内心では危機感を抱いていた。同様の思いを観戦しているピッコロも抱いていた。そして、ピッコロは呟いた。
「このままでは負けるぞ。ゴジ-タは・・・」
ピッコロの発言に驚いたトランクス達は、一斉にピッコロの顔を見た。
「ゴジータがジフーミを倒すためには、ビッグバンかめはめ波しか無い。それもフルパワーで放たなければ通じないだろう。そのためには気を溜めなければならないが、ジフーミが懲りずに向かってくるから、ゴジータが気を溜めるための時間を作れない。しかもゴジータはスタミナを徐々に消耗するが、ジフーミにはそれが無い。ジフーミめ、考えやがったな。ベジータはジフーミを馬鹿だと言っていたが、戦いに関しては違うようだ。もしくは悟空達との戦いで、ジフーミが知恵を付けたか・・・」
ピッコロは更に話を続けた。
「一番厄介なのは、ジフーミがフュージョンした事ではない。奴が落ち着きを取り戻した事だ。地球に来たばかりのジフーミは頭に血が上っていて、周りが見えていなかった。だからこそ悟空達が付け入る隙があった。しかし、今のジフーミは冷静で、隙が無い。ああいう奴を倒すのは、本当に至難の業だ」
ジフーミはフュージョンして能力が増すと同時に、自信と平静さを取り戻していた。ジフーミは冷静に戦局を分析し、どうすれば確実に勝てるかを考えていた。そして、ゴジータから離れずに殴り合いに持ち込めば、ゴジータが気を溜めるための時間を作れずに徐々に体力を消耗していき、自ずと自分が勝つという結論に達した。
「じゃあ俺達がジフーミを食い止めて、父さん達が気を溜めるための時間を作らないと・・・」
「駄目だ!今のジフーミは俺達が知っているジフーミではない。俺達が奴を足止めしようとしても、一瞬で殺される可能性の方が遥かに高い。とてもゴジータが気を溜めるための時間は作れないだろう。この戦い、時間を制した者が勝つ」
ピッコロの指摘通り、ジフーミの執拗な攻撃は徐々にゴジータの体力を奪っていった。初めは一切攻撃を受けなかったゴジータだったが、疲れて動きが鈍り、少しずつジフーミの攻撃を受けるようになっていた。ジフーミの作戦が功を奏し始めたのである。
ジフーミの攻撃を受ける内にゴジータは冷静さを失い、合体していられる時間を気にして焦りの色が見え始めた。ゴジータは不利な状況に置かれながらも、起死回生の策を頭の中で何度も思い描こうとしたが、焦りがゴジータの判断力を鈍らせ、良策が思い浮かばなかった。
ゴジータは反撃の糸口すら見出せないまま、遂に恐れていた事態が起きた。合体していられる時間が終了し、元の二人に戻ってしまった。一方のジフーミはフュージョンしたままだった。悟空達は最大の危機を迎え、ジフーミは自分の勝利を確信した。
「どうやらここまでのようだな。お前達には散々苦しめられたが、やはり最後に勝つのは俺のようだ。お前達を殺す前に、一つ礼を言っておこう。このフュージョンという技があれば、ジュオウ親衛隊最強の座も夢じゃない。ジュオウ様は俺を見直してくれるだろう。そして、今まで俺を馬鹿にし続けていた他の親衛隊を見返す事が出来る。くくく・・・。あいつ等の驚いた顔を見るのが待ち切れないぜ」
大喜びするジフーミの側で、悟空達は誰もが絶望的な表情を浮かべていた。一度フュージョンが解けてしまうと、その後一時間は再び合体が出来ない。フュージョンの他に今のジフーミに対抗するための手段を、悟空達は誰一人として思い浮かばなかった。ジフーミによって全滅させられる悪夢のような光景だけが彼等の脳裏をよぎっていた。
危機感を募らせていたのは、ジフーミの側にいる悟空達ばかりではなかった。天界でパワーアップ中の悟飯も同様の思いを抱いていた。ジフーミの気が大幅に上昇したままなのに対し、悟空達の気が減少していた。悟飯は心配で居ても立っても居られず、立ち上がって決戦の地に向かおうとしたが、老界王神に止められた。
「行かせて下さい!界王神様!このままじゃ父さん達が殺されてしまいます!」
「待て悟飯!気持ちは分かるが、今は行ってはいかん!中途半端なパワーアップで勝てる相手ではない!ここは悟空達を信じて耐えるんじゃ!今まで悟空達は、こうした危機を何度も乗り越えてきたじゃろうが!もし悟空達が敗れたとしても、お前が健在なら、何時か必ず復讐のチャンスは来る」
老界王神に説得された悟飯は、口惜しく思いながらも大人しく座ってパワーアップが終了するのを待ち続けた。そして、目をつぶりながら、悟空達の無事を心の中で祈った。
場面を再び悟空達の方に戻すと、戦局は依然としてジフーミが絶対的に有利だった。悟空とベジータは同時にジフーミに攻め掛かったが、双方の実力差は歴然だった。ジフーミの重い一撃を左頬に喰らったベジータは変身が解けて倒れた。
「ベジータ!しっかりしろ!」
「他人の心配よりも自分の心配をしたらどうだ?まあ心配したって今更どうにもならんがな」
「く、くそ・・・。これでも喰らえ!」
悟空は余裕の表情を浮かべて隙だらけになったジフーミに向け、至近距離から十倍かめはめ波を放った。渾身の力を込めて放った十倍かめはめ波だったが、ジフーミには効果なかった。
「くくく・・・。今、何かしたのか?」
ジフーミはノーガードで十倍かめはめ波を喰らったが、全く効いていなかった。悟空は愕然となり、今のジフーミには自分の力では歯が立たないと判断し、自ら変身を解いて元の姿に戻った。そして、両手を上空に高く掲げた。それを見たジフーミは、大声で笑い始めた。
「何をするかと思えば、確か元気玉とかいったか・・・。武道会の時でも俺に通じなかったのに、パワーアップした今の俺に、そんなものが通じるとでも思っているのか?」
「この地球にはオラに元気を分けてくれる物がたくさんあるんだ。あの時のよりも凄い元気玉を作り、お前を倒してやる」
「やれやれ・・・。まあ好きにするが良いさ。今の状態で放つ最終砲を試してみたいしな」
ジフーミは腕を組み、悟空の元気玉が完成するのを待つ事にした。そして、待っている間に上空の元気玉を見上げたが、それは武道会の時よりも遥かに小さかった。
「あんな物で、本気で俺を倒せると思っているのか?」
ジフーミは余りにも小さい元気玉に思わず首を傾げた。その後、段々と元気玉は大きくなっていったが、それが自分にとって脅威の対象になるとは、ジフーミはどうしても思えなかった。
一方、悟空が元気玉を作っている事に気付いたパンは、元気玉作りに協力しようと両手を高く上げたが、ピッコロがそれを止めさせた。
「どうして止めるの?ピッコロさん。このままじゃお爺ちゃんが・・・」
「あの元気玉は、ジフーミを倒すために作っているのではないからだ。後で俺達の出番が回ってくるかもしれないから、ここで余計なエネルギーを使うべきではない」
「絶対に上手くいくという保障は無いんだけど、今はこれしか方法が無さそうだからね。これは父さんの賭けなんだ。ジフーミが途中で気付かなければ良いんだけど」
ピッコロだけでなく、悟天も悟空の意図を把握していた。パンは悟空の考えが分からなかったが、黙って祖父を信じる事にした。
悟空達に幾度も辛酸を舐めさせ、遂に最強の敵へと進化して悟空達の前に立ちはだかったジフーミ。その強敵ジフーミに対処するために、悟空は一か八かの大勝負に出た。
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