フュージョンして一気に形勢逆転したいゴジータは、何度かサキョーに攻撃を仕掛けたが、サキョーの前に立ちはだかる光壁に遮られ、全ての攻撃が届かなかった。そこでゴジータは戦法を変え、サキョーを挑発して自発的に光壁を解除させようとしたが、サキョーは一向に動じなかった。このままサキョーが光壁の中に閉じこもったままだと、ゴジータはサキョーに一撃も攻撃を加えられずに合体が解けてしまう。ゴジータは平静を装っていたが、内心では焦りを禁じ得なかった。
「俺に手出し出来ず、さぞ悔しかろう。逆に俺は直接お前の体に触れなくても攻撃する事は出来るぞ。この様にな」
ゴジータを侮り難しと見たサキョーは、攻撃が届かない安全地帯で魔法を使う事にした。まずサキョーは、右の人差し指を伸ばした状態で右腕を高く掲げた。次にサキョーの指先から細い光線が飛び出し、それが光壁や天井を通過して上へと向かっていった。すぐに上の方から轟音が聞こえたので、ゴジータと悟飯は、天井を見上げて警戒した。数秒後、巨大な隕石が天井を破って墜落してきた。しかし、ゴジータ達は素早く側面の壁を破って外に出、難を逃れた。その後、隕石は城を押し潰した。
外に出たゴジータ達が浮遊島から地上を見下ろすと、地上の広範囲に渡って隕石が連続して降り注いでいた。最悪な事に、彼等が城に来る途中で立ち寄った町にも隕石が墜落していた。ゴジータ達が心を痛めている間に、光壁に守られて隕石が墜落しても無傷だったサキョーが、城を押し潰した隕石を破壊してゴジータ達に近付いてきた。
「やはり隕石程度ではダメージを与えられなかったか。まあ期待はしていなかったがな」
自分の城は愚か、自分が治める星に大打撃を与えても、サキョーは何事も無かったかの様に平然としていた。その態度に、ゴジータ達は怒った。
「サキョー!あれを見ろ!貴様の魔法のせいで、あの町に住む大勢の人が死んだんだぞ!」
「それがどうした?あんな連中、また造ればいいだろう。取り立てて惜しむ命ではない」
「造るだと!?まさか貴様の魔法で、あの人達を造ったとでも言うのか?」
「そうだ。人だけではない。この星に存在する物は、星自体も含めて全て俺が造った。だから俺が、どう扱おうと勝手なはず。まあそうでなくても、俺は好き勝手に暴れるがな」
ゴジータ達はサキョーの話が壮大過ぎて圧倒された。しかし、俄かには信じ難い話であるが、もしそれが本当ならば合点が行く点も多々あった。新品で同じ様な家屋が等間隔で立ち並ぶ町や、魔界の住人にしては弱過ぎる町人達。これ等は昔から存在していたとは思えない不自然さがあった。それに町人がサキョーを「神様みたい」と言った理由も、彼等がサキョーによって造られた人達なら当然だった。
「元々ここには別の星があり、数日前に俺はドラゴンボールを探すという名目で、ジュオウが付けた数人の兵を率い、その星を訪れた。しかし、俺は己の野望のために、ボールを見つけても即座にジュオウの元には戻らず、ジュオウに嘘をついてでも、ジュオウの元に六個のボールが揃うまで、この場所に滞在する必要があった」
本来ならドラゴンボールを発見した親衛隊は、直ちにジュオウの元に戻り、ボールをジュオウに渡さなければならない。しかし、サキョーはジュオウが持つボールを奪い、最終的に全てのボールを自らの手中に収めるつもりだから、自身がボールを最後に発見する方が都合良かった。そうすれば、サキョーがジュオウの元に行く際、ジュオウが六個のボールを持っているからである。
「地道にボール探しをするなんて面倒臭かった。それに、俺の裏切りを知ってジュオウに密告するかもしれない兵達の存在が邪魔だった。ボールは絶対に壊れないから、手荒な真似をしてでも手軽に発見したかった。それに兵達を逃がさず確実に葬るためには、星ごと消すのが最適だと考えた。そこで兵達にボールを探させ、その間に俺は星ごと兵達を消し去った。案の定、星が消滅してもボールだけが残った。こうして俺はボールを易々と手に入れると同時に、邪魔な連中を片付けた」
サキョーが避けたいのは、自身の裏切りがジュオウに途中で発覚する事である。流石に最後まで隠し通せるのは無理だとしても、発覚するのはボールを奪った後か願いを叶えた後にしたかった。そのために不安材料を消しておきたかった。
「その後、俺は新たな星を造り、そこに俺を崇拝する純真無垢な人間と、そいつ等の住む町を造った。まだまだ驚くのは早いぞ。以前に俺は、この星を遥かに越える質量を持つ、ある恒星も造った」
サキョーは上空にある太陽を指差した。
「あの光り輝く太陽。決して魔界には存在しなかった太陽。それが何故、存在するか分かるか?」
「ま、まさか、まさか太陽も貴様が造ったのか?」
「魔界は光一つない暗黒の世界。それでも魔族は夜目で物を見る事は出来るが、如何せん視界が狭い。だから俺は魔界を見やすい世界に変えるため、魔界の各地に太陽を造った。もっとも言葉だけで信じる事は出来まい。だから、今から実際に見せてやろう。俺の最大魔法である太陽をな」
サキョーが両手を上空高く掲げると、炎の玉がサキョーの頭上に出現し、それが尋常でない速度で拡大を始めた。ゴジータ達は急いでサキョーから離れたが、炎の玉の拡大は止まらず、彼等は止むを得ず星から退去した。そして、星と星の間の空間である魔空間に移動してから後ろを振り返ると、炎の玉は先程までいた星と同じ位の大きさにまで拡大していた。ゴジータ達は更に遠くの星へと避難した。
その間にもサキョーの炎の玉改め太陽は実物に近い大きさにまで拡大し、そこから発生した重力によってサキョーのいる星ばかりか、その周辺に位置する星まで引き寄せられて消滅した。その様子を、ゴジータ達は遠くの星から眺めていた。
「魔界に太陽が突然出現した理由が、まさかサキョーによって造られたからだったとは・・・。界王神様がサキョーの魔法を恐れた理由が、ようやく分かりましたよ」
「しかし、サキョーの奴、あんな物を造って一体どうする気だ?俺達を倒すためだとは思うが、あんな大きいのを使って、どうやって攻撃する気だ?」
ゴジータ達が会話をしている間に、サキョーが造った太陽の拡大が止まった。そして、サキョーが手の平をゴジータ達のいる方角に向けると、太陽がゴジータ達のいる方角に猛スピードで移動した。
「あんなのまともに喰らったら、一発でお陀仏だ!しかも大き過ぎて、とても避けられそうにない!は、破壊しないと!」
悟飯は迫り来る太陽の中央付近を目掛け、かめはめ波を放った。しかし、惑星の十や二十は軽く破壊出来る悟飯のかめはめ波でも、太陽を破壊するどころか、その進行を止める事すら出来ず、わずかに進む速度を遅らせる程度の効果しかなかった。しかも太陽の重力のせいで、彼等のいる星も太陽に徐々に引き寄せられていた。
しかし、悟飯はそのままの体勢で気を高め、フルパワーの状態でかめはめ波を出し続けた。またゴジータも気を最大限に高め、悟飯のかめはめ波が当たっている箇所にビッグバンかめはめ波を放った。二人のかめはめ波によって、太陽は徐々に押し返されてきた。
「小癪な真似を!人の力で太陽をどうにか出来ると思っているのか!このまま魔界の塵になれ!」
サキョーは太陽に魔力を送り、更に勢いを増した太陽が再びゴジータ達の元に迫ってきた。
「悟飯!お前の力は、まだそんなもんじゃない!爆発させろ!力を!」
「うああああ・・・!」
ゴジータも悟飯も限界以上に力を出し続けた。対するサキョーも必死に魔力を送り続け、太陽は双方の間で一進一退を繰り返した。しかし、遂にゴジータ達のかめはめ波が太陽に穴を空け、その中心部の核を射抜いた。核を破壊された太陽は鳴動を始めた。
「まずい!爆発するぞ!早くバリアーを・・・」
ゴジータが話し終える前に、太陽は大爆発を起こした。その凄まじい爆発の衝撃で、ゴジータ達のいた星は瞬く間に消し飛んだ。しかし、ゴジータは間一髪でバリアーを張って爆風を防いだ。そして、ゴジータが魔空間でバリアーを解除すると同時に合体が解け、元の悟空とベジータに戻った。
「い!?もう元に戻っちまったのか?」
「サキョーの太陽を破壊するためとはいえ、かなりエネルギーを消耗したからな。合体が早く解けても何ら不思議はない」
「このままじゃまずいぞ。しばらくフュージョン抜きでサキョーと戦わなくちゃならねえからだ。悟飯だって結構エネルギーを使っちまったはずだしよ。なあ、悟飯・・・ってあれ?悟飯がいねえ」
悟空は隣にいたはずの悟飯に話を振ろうとしたが、悟飯の姿が見当たらなかった。
「もしかしてバリアーを張るのが間に合わなくて、あの爆発に巻き込まれちまったのか?」
「バリアーが間に合わなかったか、それともバリアーが衝撃に耐えられなかったか。どちらにしても、悟飯の身に何かが起こったのは間違いあるまい。まずい事になったぞ」
悟空達は周辺の気を探ったが、悟飯の気を感知出来なかった。そして、サキョーの気も。
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