悟空とベジータは、行方不明になった悟飯を探すために周囲の気を探っていた。その時、遠くからギルが悟空達の元に飛んで来た。悟飯の事で頭が一杯だった悟空達は、ドラゴンレーダー兼ドラゴンボールの運搬係であるギルの存在を完全に忘れていた。しかし、悟空は愛好を崩してギルを出迎えた。
「ギル!よく無事だったな!」
「ドラゴンボール ギル マモッテクレタ」
「ドラゴンボールがギルを守った!?一体どういう意味だ?」
「ドラゴンボール ギル アンゼンナバショマデハコンデクレタ」
これまでの戦いでは、ギルは巻き込まれないように悟空達の背後に隠れる、もしくは安全な場所まで避難していた。しかし、今回はサキョーの太陽のせいで、戦場となった星は愚か、その周辺の星までもが消滅する大惨事となった。ギルだけだったら、とても助かりそうにない状況だったが、鞄の中に入れていたドラゴンボールが危険を察知し、事前にギルを被害が及ばない場所まで引っ張っていた。
「よくは分からねえけど、ギルが助かって良かった。でも、今は一刻も早く悟飯を見つけないと」
悟空達は悟飯の気を感じられなかったので、近くの星まで移動し、そこに悟飯が居ないか目視で探す事にした。しかし、その探し方は大海の中から一粒の砂を探す様なもので、悟飯の捜索は難航を極めた。
その悟飯は、悟空達の居る星から遠く離れた星で、重度の怪我と火傷を負った状態で横たわっていた。太陽の爆発による爆風を、まともに浴びた悟飯は、遠くの星まで吹き飛ばされていた。そして、意識はあるが、もはや立ち上がる事すら出来ない悟飯の側に、サキョーが現れた。
「サ、サキョー?な、何故ここに?どうして俺の居る場所が分かった?」
「それぐらいの事、俺の魔法を使えば簡単だ」
サキョーは悟空達より先に悟飯の居場所を突き止めたが、その表情には不快感が滲み出ていた。
「お前達には呆れたぞ。取って置きの魔法を使ったのに、誰一人として死んでいないのだからな。しかし、流石に無事では済まなかったな。このまま放っておいても死にそうだが、俺の手で直接葬らなければ気が済まない。お前からは気を感じないし、俺は気を抑えているから、お前の仲間達は、この場所を特定する事が出来まい。よって俺は誰にも邪魔されずに、たっぷり時間を掛けて、お前を処刑する事が出来る。その後で、お前の仲間達も同様に殺してやる」
サキョーは抵抗出来ない悟飯を容赦なく攻撃してきた。悟飯の体を何度も踏みつけ、最後に腹部を蹴飛ばした。蹴飛ばされた悟飯は、後方の岩山に激突し、仰向けになって倒れた。
「か、体が動かない。も、もう駄目だ」
自分の死が間近に迫っている事を悟った悟飯は、次第に意識が遠ざかっていった。そして、薄れていく意識の中で、悟飯は何者かが自分の名前を呼んでいるのが聞こえた。最初は面倒臭がって声がする方を見ようとしなかった悟飯だが、何度も繰り返して呼ぶ声が聞こえたので、流石に鬱陶しさを感じ、一言だけ文句を言ってやろうと起き上がって声がする方を見た。すると、そこには死んだはずのヒサッツが立っていた。
「ヒサッツ!?な、何でここに?ひょっとして、俺は死んだのか?」
「いや。まだ辛うじて生きている。そんな事より、早々に勝負を諦めるな!俺と戦った時は、もっと闘志に満ち溢れていたぞ!」
思いもよらぬ人物からの激励に、悟飯は思わず絶句した。しかし、すぐに我に返って反論した。
「だ、だって、仕方ないじゃないか。ダメージが大き過ぎて体が動かない。それに引き換え、サキョーは無傷だ。何より太陽を造るような化け物を相手に、どうすれば勝てると言うんだ?」
今の悟飯はダメージのせいもあるが、サキョーの魔法に圧倒されて珍しく弱気になっていた。
「何を弱気な!いいか!冷静になって考えろ!太陽を造るのは確かに凄い事だが、そのせいでサキョーは随分魔力を消耗している。その証拠に、今の奴は光壁を使っていない。お前を相手に防御魔法である光壁は必要ないと判断したせいもあるが、何より余分な魔力の消費を避けたいと考えているからだ。だから、お前の攻撃を当てれば、奴の体にダメージを与える事が出来る。奴の右の胸を目掛けて俺を倒した破砕拳を使え!そうすれば勝てる」
サキョーの魔力は強大とはいえ、限度がある。そして、大きな魔法を使えば、大量の魔力を消耗する。今のサキョーには、余計な魔法を使えるほどの魔力が残っていなかった。
「む、無茶だ。ほとんど力が残っていないのに、大量のエネルギーを使う破砕拳なんて出来っこない」「お前は以前、こう言ったぞ。『限界以上の力で戦う事が出来る』と。あれは口からの出まかせだったのか?違うと言うのなら、口でなく行動で示して見せろ!今こそ、あの言葉が正しかったと証明する絶好の機会ではないか!」
ヒサッツの励ましは、悟飯の心を激しく揺さぶった。悟飯は自然と目頭が熱くなった。
「お、お前に諭されるとはな・・・。お前は俺を憎んでたんじゃなかったのか?」
「確かに憎い。しかし、それ以上にサキョーが憎い。奴は生まれた当時から全てを兼ね備えた天才だった。その事を奴は鼻にかけ、よく俺を含めた他の親衛隊を馬鹿にしてきた。それに俺は耐えられず、いつか奴に追いつこうと努力してきた。結局、俺は奴の足元にも届かなかった。だが、お前だったら奴を越えられるはずだ。俺は信じている」
話し終えたヒサッツは徐々に消えていき、ヒサッツが完全に見えなくなると悟飯は目を覚ました。
「い、今のは夢?」
現実とは違う世界で、悟飯は長い時間ヒサッツと会話していたつもりだったが、実際に悟飯が気を失っていたのは数秒だった。そして、悟飯はサキョーが歩み寄ってくる事に気付いた。そのサキョーは、ヒサッツが指摘した通り光壁を使っていなかった。好機と見た悟飯は、右の拳に気を集中させた。一方、そんな悟飯の考えなど露ほども知らないサキョーは、何の警戒心も抱かずに悟飯の側まで来た。明らかにサキョーは油断していた。
「もはや生きている事さえ苦痛だろう。今から止めを刺してやる」
勝ち誇ったサキョーは、右腕を振りかざした。しかし、次の瞬間、悟飯がサキョーの右の胸を目掛けて拳を突き上げ、破砕拳を放った。ところが、天性の勘で直前に危険を察知したサキョーは、とっさに体をのけ反らせ、悟飯の拳はサキョーの右の胸ではなく脇腹を貫いた。サキョーは自分の体に突き刺さった悟飯の腕を抜き、魔法で脇腹を治癒した。
「あ、危うく心臓を潰されるところだった・・・。お、おのれ!」
激怒したサキョーは、改めて悟飯を殺そうと右腕を振り上げた。しかし、サキョーは悟飯に手出しせず、振り上げた右腕を下に降ろした。これ以上の悟飯への攻撃は無意味だと気付いたからであった。
「俺を道連れにするつもりだったのか・・・。最後の最後まで忌々しい奴め」
悟飯は右腕を突き上げたまま絶命していた。残念ながらサキョーの命を奪う事は出来なかったが、悟飯の最後の一撃は体内に残ったエネルギーを全て使っての攻撃だった。しかし、この悟飯の行動が、悟空達に場所を教えていた。悟飯の最後の灯火とも言える気を感知した悟空達は、直ちに現場に急行し、悟飯の変わり果てた姿を見て愕然となった。
「そちらから来てくれるとは都合が良い。この男の死を悲しむ必要はない。すぐに会える」
悟空達の合体が解けて二人に戻っている事を知ったサキョーは、自分の勝利を確信して微笑んだ。悟空達は悟飯の死を悲しむ暇もなく、どうサキョーに対処するか即急に答えを出す必要があった。しかし、フュージョンが解けてから一時間も経っておらず、二人掛かりで戦っても勝ち目が無い。彼等が取るべき選択肢は自ずと絞られていた。
「カカロット。ここは一先ず悟飯を連れて撤退し、体力を回復させてから改めてサキョーと戦った方が良いんじゃないか?」
「それだとサキョーの魔力も回復させちまうぞ。そうなったら悟飯の死が無駄になる。サキョーは今この場で倒さないと。そのためにオラ達が何をすべきか、分かるな?ベジータ」
悟空は懐からポタラを取り出し、ベジータもそれに続いた。
「こいつだけは使いたくなかったが、この戦いは悟飯のためにも絶対に負けるわけにはいかねえんだ!ベジータ!左耳にポタラを付けてくれ!」
悟空は右耳にポタラを付け、ベジータは左耳に付けた。二人は互いに引き寄せられて合体し、最強戦士ベジットとなった。
「よっしゃー!」
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