其の二十四 パンの脱出作戦

トランクスとパンは、捕らえた男を先導させて飛行していると、ある建物が視界に入ってきた。その建物は、以前に見たドクター・リブの基地と類似していた。

「ドクター・リブは、あの基地の中に居る。それじゃあ、俺はこれで・・・」

男は基地を指差すと、そそくさと別の方向に飛び去ろうとしたが、トランクスに襟首を掴まれた。

「お前を解放するのは、この基地の中にドクター・リブが居るか確認してからだ」
「それに、私達はドクター・リブの顔を知らない。だから仮に会えたとしても、本物と確認出来るまでは逃がさないわよ」
「そ、そんな・・・」

結局、男は逃げられず、三人は基地の手前の地面に降り立った。そして、基地の中に入ろうとした時、上空から音が聞こえてきた。トランクス達が見上げると、真上に強化リブマシーンが浮かんでいた。強化リブマシーンは、彼等に向けて複数の光弾を放ってきた。トランクスとパンは、難なく光弾の雨を避けたが、男は逃げ遅れて絶命した。リブマシーンを使って人々を殺してきた男が、リブマシーンの同タイプに殺されたのである。何とも皮肉な話だった。

トランクスは超サイヤ人3に変身すると、上空の強化リブマシーン目掛けて飛び上がった。そして、両者の間で激しい戦闘が繰り広げられた。以前のトランクスは、強化リブマシーン相手に大苦戦したが、今回は違っていた。前にも戦った事があるから勝手を知っているだけでなく、一年の間、しっかり修行を積んできたので、終始強化リブマシーンを圧倒していた。何とトランクスは、わずか一分足らずで強化リブマシーンを撃破した。

「凄い・・・。何時の間に、そんなに強くなったの?」
「ふっ。少しは見直したかい?」

難無く強化リブマシーンを撃破した後、トランクスは変身を解き、パンと共にドクター・リブの基地の中に正門から堂々と中に入った。基地の内部では、二人は全く妨害を受けず、ドクター・リブの居る部屋に足を踏み入れた。部屋の中では、ドクター・リブがトランクス達を待ち構えていた。

「お前がドクター・リブで間違い無いな?ようやく面を拝めたぜ。お前には、惑星ジニアの場所を話してもらうぞ。それと、この銀河の侵略行為も止めてもらう」
「・・・止むを得んな。強化リブマシーンが、あんなに呆気なく敗れるようでは、お前達に従う以外に俺の選択肢は無い。俺の宇宙船のログファイルを見れば、惑星ジニアの場所が分かる。宇宙船が格納してある場所まで案内するから、付いて来い」

ドクター・リブは、両手を上げて降参のポーズを取り、部屋の外へと歩き出した。意外にも一切抵抗してこなかったので、トランクス達は思わず拍子抜けしたが、この場は言われた通り、彼の後に続いて歩き出した。三人は長い廊下を歩いて、ある一室に入ったが、そこには宇宙船が一台も見当たらなかった。その代わりに、一台の金色のリブマシーンが安置されていた。唖然として立ち止まるトランクス達を無視し、ドクター・リブは、そのリブマシーンに向けて歩みを続けた。

「おい!宇宙船が何処にも無いようだが、どうして俺達を、この部屋に連れて来た?」

トランクスが問い詰めると、ドクター・リブは後ろを振り返らずに高笑いした。

「馬鹿め!そう易々と惑星ジニアの場所を教えると思ったのか?こいつで、お前達を始末する為に決まっているだろう。ついでに言っておくが、俺の宇宙船に惑星ジニアのログは無い。他人に読まれるのを回避する為、惑星ジニアの場所だけはログファイルに残さない決まりになっている。惑星ジニアに行く時だけ場所を入力し、移動後は直ちに削除する」

ジニア人は総じて知能指数が高いので、大抵の事は一度覚えたら決して忘れない。惑星ジニアの場所を覚えるのは、ジニア人にとって容易だった。そして、惑星ジニアに移動する際は、毎回宇宙船に惑星ジニアの場所を入力し、移動後は情報を削除していた。

「くっ、こんな単純な手に引っ掛かるとは・・・。こうなったら、このデカ物を破壊して、改めて貴様に問い質してやる!」

トランクスは超サイヤ人3に変身し、対するリブマシーンは、ドクター・リブの声に反応して動き出した。まずトランクスは気功弾を放ったが、リブマシーンには全く効果が無かった。続いてトランクスは、背後に回りこんで後頭部に回し蹴りを試みたが、リブマシーンに右腕で防がれた。更にリブマシーンは、左腕でトランクスの足を掴み、背後の壁に向けて投げ飛ばした。トランクスは壁に激突し、崩れ落ちた壁の破片の中から立ち上がったが、いささか傷を負っていた。

「強い・・・。これまでのリブマシーンとは、比べ物にならない。何なんだ?こいつは!?」
「教えてやろう。こいつは史上最強のリブマシーン。その名も超リブマシーンだ!」
「捻りの無い名前だ。ネーミングセンスを疑うぜ」
「この状況下で、そんな事を気にしている余裕があるのか?このままだと・・・うぐっ!」

ドクター・リブがトランクスに気を取られている隙に、背後から忍び寄ったパンが、ドクター・リブの右腕を掴み、取り押さえていた。

「さあ!殺されたくなかったら、あの超リブマシーンを止めなさい!」
「くっくっくっ・・・。俺を殺せば、惑星ジニアの場所が永久に判明しないぞ。それに俺が死ねば、超リブマシーンは暴走し、結局お前達も死ぬ。あの男を助けたかったら、俺を解放して、命乞いでもするんだな」

ドクター・リブの言葉に動揺しているパンの背後を、超リブマシーンが素早く回り込んだ。そして、パンが後ろを振り返った時、超リブマシーンに殴り飛ばされてしまった。パンは壁に当たる前にトランクスに受け止められたが、頭部から血を流していた。

「大丈夫かい!?パンちゃん」
「平気よ。殴られる寸前に飛び上がったから、掠っただけよ」

パンが無事だったので、トランクスは安堵の溜息を吐いた。超リブマシーンとの力の差を考慮すると、パンが即死しても不思議ではなかったからである。

「あの超リブマシーンは、とてつもなく強いわ。多分、トランクスでも勝てない。地球に帰って、お爺ちゃん達を連れて来ないと・・・。お爺ちゃんだったら、間違いなく勝てるわ」

パンは双方の力量を客観的に分析し、今の戦力では勝てないと判断し、直ちに助力を得るべきだと主張した。しかし、トランクスは首を横に振った。

「ドクター・リブも悟空さんなら超リブマシーンに勝てると思うだろう。だから悟空さんの姿を見たら、また逃げ出すかもしれない。俺達の真の目的は、あの超リブマシーンを壊す事じゃない。惑星ジニアに行って、悟飯さんを救出する事なんだ。ドクター・リブを捕らえ、惑星ジニアの場所を聞き出す為には、俺達の力だけで勝つしかないんだ」

トランクスは悟空に頼らず、是が非でも自分達の力だけで戦う覚悟だった。それは、ドクター・リブをこの場に釘付けにしておく為だけでなく、戦士としての意地でもあった。

「俺が超リブマシーンを食い止めておく。その間にパンちゃんは、地球に帰って超ブルーツ波発生装置を持って来て欲しい」
「えっ!?まさかトランクス、超サイヤ人4になるつもりなの?」
「ああ。そろそろ試そうと思っていたんだ。俺が超サイヤ人4になれば、勝てるはずだ」
「分かったわ。急いで戻って来るから、それまで頑張って!」

パンは部屋の外へと走り出した。パンの後を追って、超リブマシーンも部屋の外に出ようとしたが、部屋を出る前に、トランクスに背後から蹴られた。

「お前の相手は、この俺だ!何処にも行かせないぞ!」

超リブマシーンはパンの追跡を諦め、トランクスの打倒に専念する事にした。一方、部屋の外に出たパンだったが、何処からともなく大量のリブマシーンが現れ、パンの行く手を阻んだ。基地の中には、ドクター・リブの他にも、彼の協力者が何人もおり、彼等がリブマシーン達に指令を出していた。パン一人の力では、まだリブマシーンに勝てないため、止むを得ず気配を消して、物陰に隠れた。そして、リブマシーン達がパンを見失って混乱している隙に、本人は基地から脱出した。

基地の外に出たパンは、リブマシーン達に気付かれないよう気を抑えたまま、ブルマが待つ宇宙船まで走っていこうとした。ところが、リブマシーン達は一斉に基地の外に出て、パンの後を追ってきた。実は、管制室にいるドクター・リブの協力者が、星の内外を監視している人工衛星から転送されてきた映像が映っているモニターを観て、パンの居場所を特定し、基地内のリブマシーン達に指令を出していた。

リブマシーン達はパンを見つけると、猛スピードで追ってきた。パンは気を全開して、逃れようと飛行した。パンは必死になって飛行したが、リブマシーン達の方が速かったため、振り切れなかった。しかし、途中で湖を発見し、一か八かで湖に飛び込んだ。次に湖の中から斜め上空に気功波を放った。リブマシーン達は、気功波をパンと勘違いして、一斉に後を追った。その間にパンは湖から出て、ブルマの元へと向かった。そして、ようやく宇宙船に到着したパンは、大急ぎで中に入った。

「あら、パンちゃん?ちょっと、怪我してるじゃない!一体どうしたのよ?それに、トランクスは?一緒じゃなかったの?」
「今は詳しく話している時間が無いの!早く地球に戻って!そうしなきゃ、トランクスが殺されちゃう!」
「何ですって!?と、とにかく地球に行けば良いのね?」

ブルマは理由も分からず、言われた通りに宇宙船を動かして、地球に戻った。そして、地球に戻ったパンは、カプセルにしてある超ブルーツ波発生装置を手にすると、元の星に移動するよう頼んだ。元の星に戻ると、パンは急いで基地の方角に向けて飛行した。

「待ってて、トランクス。すぐに行くわ」

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