カプセル状の超ブルーツ波発生装置を持ったパンは、トランクスの元へと急いで飛行していた。その途中、リブマシーンの大軍が行く手を阻んだが、パンはリブマシーン達を上手く躱し、無事に基地まで到着した。基地の前では、トランクスが場所を移して超リブマシーンとの戦闘を続行していたが、体の所々に傷を負っており、超サイヤ人3の変身が解けていた。
急を要すると察したパンは、持参したカプセルを放り投げて超ブルーツ波発生装置を出現させると、それを操作し始めた。パンは以前、ブルマから操作方法を教わっていたので、迅速にトランクスに光線を浴びせる事が出来た。光線を浴びたトランクスは、体が変形しつつ大きくなり、黄金色の毛の巨大猿となった。
トランクスの大猿化が完了した時、パンの後を追っていたリブマシーン達が、続々と基地の前に集まってきた。ところが、そのリブマシーン達をトランクスが順に破壊していった。現在のトランクスは、理性を失っていたが、パンを襲う気配は無かった。それでもパンは、超ブルーツ波発生装置をカプセルに戻すと、念のため後退した。そして、この一連の様子を基地の中でモニター越しに観ていたドクター・リブは、トランクスの突然の変化に驚いていた。
「もしかして、あれがサイヤ人が巨大猿となった姿か!?しかし、ドクター・ハートの文献によると、サイヤ人は満月を見て大猿となるはずだ。あの小娘が持ってきた機械は、月が無くてもサイヤ人を強制的に大猿に変えるものなのか?ちっ、小娘と思って見くびった。しかし、そんな巨体で超リブマシーンに勝てるかな?」
トランクスは、迫り来るリブマシーン達を次々と破壊していた。トランクスにとっては普段の状態でもリブマシーンを壊すのは苦ではないのに、巨大猿となった今では、赤子の手を捻る様なものだった。更に状況を好転させたのは、ドクター・リブや彼の協力者達は、巨大猿の尻尾を切れば元の人間の姿に戻せるという事を知らなかったため、リブマシーン達に適切な指示を出せなかった。
これ以上リブマシーンを失うのは得策でないと判断したドクター・リブは、リブマシーン達に後退するよう指示すると、これまで待機していた超リブマシーンを出動させた。指令を受けた超リブマシーンは、早速トランクスに襲い掛かった。トランクスは、すぐに超リブマシーンの接近に気付き、両者の間で戦闘が再開された。
まずトランクスが口から気功波を放ったが、対する超リブマシーンは気功波を避けつつ、トランクスの腹部に突撃した。図体が大きいから、トランクスは避けきれずに吹っ飛ばされた。トランクスは尻餅を搗いたが、すぐに立ち上がった。しかし、超リブマシーンは再び突撃を敢行し、トランクスは、またもや吹っ飛ばされてしまった。巨大猿となるとパワーは上がるが、スピードは変わらない。しかも今のトランクスは、我武者羅に攻撃するのみで、相手の動きを読もうとしなかった。
しかしここで、何とパンが超リブマシーンに飛び掛かった。パンは少し離れた場所から、この戦闘を観戦していたが、トランクスの劣勢に居ても立ってもいられず、つい飛び出してしまった。パンは超リブマシーンの背中を何度も殴ったが、全く通用していなかった。それどころか、超リブマシーンに殴り返されてしまった。パンは地面に叩き伏せられて吐血した。
超リブマシーンは、倒れているパンを追撃しようと試みたが、トランクスに後ろから握り締められた。先程まで散々攻撃を受けていたトランクスは、ここぞとばかりに両手で強く握り締めた。超リブマシーンは必死に抵抗したが、脱出は叶わず、ボディを覆う装甲に亀裂が生じた。この時のトランクスは、我武者羅ではなく、パンを守る意思を持って戦っていた。
ところがここで、トランクスの体に変化が生じた。体から煙が立ち込めたので、トランクスは手にしていた超リブマシーンを地面に叩き付けた。そして、トランクスの体が縮みだした。最終的には元の体の大きさまで縮小したが、その姿は猿ではなかった。上半身は赤い体毛に覆われ、目の周りには赤い隈取があり、髪の毛が以前より伸びていた。トランクスは、遂に念願叶って超サイヤ人4になった。しかし、当人は喜びもせず、パンの元に駆け寄り、彼女の無事を確認した。
「大丈夫かい?パンちゃん」
「平気よ。これでも私は孫悟空の孫よ。そう簡単に死なないわ。それよりも、とうとう超サイヤ人4になれたね。中々なれなかったから、つい焦って飛び出しちゃったけど、これで安心ね」
「ああ。パンちゃんがやられそうになったのを観て、俺の理性が戻った。そして、俺の体の中で何かが起き、こうして超サイヤ人4になれた。後は俺に任せてくれ」
パンを離れた場所まで運んだトランクスは、ようやく起き上がった超リブマシーンの目前まで移動して対峙した。
「よくもパンちゃんを酷い目に遭わせてくれたな。もう許さないぞ」
トランクスは、超リブマシーンとの戦いを再開した。まず超リブマシーンが飛び込んで、右手でパンチを繰り出したが、対するトランクスは、それを避けようともせずに顔面に受けた。パンチを喰らって口元から血が滲み出たが、トランクスは余裕の笑みを浮かべていた。
「お前の力は、その程度か?どんなに強くても、所詮はロボットだな。本当のパンチとは、こうやるんだ!」
トランクスの繰り出したパンチが、超リブマシーンの顔面を捉えた。超リブマシーンは吹っ飛ばされ、後方で待機していたリブマシーンの群れと激突した。リブマシーンは何体も破壊されたが、超リブマシーンは勢いよく立ち上がった。ところが、超リブマシーンの顔面の装甲には、ひびが入っていた。超リブマシーンの装甲は、リブマシーンや強化リブマシーンよりも遥かに頑丈だが、パワーアップしたトランクスの攻撃には耐えられなかった。
トランクスは立て続けに攻撃した。トランクスの打撃が当たる度に、超リブマシーンの装甲は徐々に破壊され、装甲の下のボディが剥き出しとなった。トランクスは更に攻撃を加え、超リブマシーンの動きが段々と鈍くなってきた。誰の目から見ても超リブマシーンの劣勢は明らかだった。
ところが、膨大な数のリブマシーンがトランクスの周りを取り囲んだ。ドクター・リブは、トランクスが超サイヤ人4になった時点で超リブマシーンの敗北を予想しており、苦し紛れの策として、銀河に分散していた協力者達を緊急で召集していた。そして、現存する全てのリブマシーンを、基地の前に集結させていた。リブマシーン達は各地から続々と集められ、元々居たリブマシーンと合わせると、その数は千を優に超していたが、トランクスは全く動じなかった。
「やれやれ・・・。どんなに数を揃えようと、リブマシーンは戦力にならないと、まだ分からないのか?」
トランクスは、これだけの数のリブマシーンと相対しても、自分が負けるとは微塵も思っていなかった。リブマシーン達は一斉に飛び掛かったが、一度に攻められる数は限られており、トランクスにとっては容易に対処出来る数だった。案の定、リブマシーン達は次々と破壊され、その数を激減させていった。
一方、緊急招集された協力者達は、基地の中に入っていったので、基地の中は人で溢れ返っていた。そして、召集された協力者の一人が、ドクター・リブに問い詰めていた。
「ドクター・リブ。何故あの男を倒すためだけに、我々全員を呼び戻したのですか?あの男が厄介なら、惑星ジニアに退くか、あるいは惑星ジニアに応援を求めれば良いではありませんか!」
緊急で呼び戻され、狭い基地の中で鮨詰め状態になっていたので、協力者達は機嫌が悪かった。
「馬鹿を言え!俺は以前、サイヤ人達のせいで逃げ帰った事があるんだ!あの時はサイヤ人が大勢居たから、どうにか面目を保てたが、今はあいつだけだぞ!それなのに逃げ帰ったり、応援を呼んだりしたら、今後の俺の立場は、どうなるんだ!?ここは是が非でも、現状の力だけで対処せねばならない!幾ら強くても、あれだけの数と戦えば疲れてくるはずだ。その時がチャンスだ!」
ドクター・リブは、この期に及んでも、己の体裁を保つ事だけを考えていた。
場面を再び戦場に戻すと、膨大な数のリブマシーンを相手にするのは面倒だと思ったトランクスは、超リブマシーンの両足を両脇に抱えて、その場で回転するジャイアントスイングを始めた。リブマシーン達は、トランクスに飛び掛かるよう命令されていたので闇雲に飛び掛かり、回転する超リブマシーンと衝突し、次々と弾き飛ばされた。弾き飛ばされたリブマシーン達は、例外なく破壊されていた。回転速度は更に増し、巨大な渦となった。やがて全てのリブマシーンが破壊された。
頃合いを見たトランクスは、超リブマシーンを放り投げた。超リブマシーンは、受身も出来ずに地面に衝突し、その場に大きな穴が空いた。超リブマシーンは穴の中から出てきたが、装甲が崩れ落ち、両腕が捥げ、まだ動いてるのが不思議な状態だった。
「ふう。何度も何度もぶつけられたのに、まだ完全には壊れていないとはな。ドクター・リブの自信作だけあり、流石に頑丈だな。でも、それもここまでだ」
トランクスは、超リブマシーンを完全に破壊するため飛び掛かった。トランクスには、まだまだ体力が残っており、ドクター・リブの目論みは、惨めなほど外れた。
「最早ここまで。惑星ジニアからの応援も間に合うまい。ここに乗り込まれる前に撤退するぞ!」
ドクター・リブは、基地内の全ての協力者達に向け、撤退の指示を出した。この時、意外な人物が登場した。重傷を負いながらも協力者達を押し退け、この部屋の入り口に辿り着いたパンだった。協力者には多種多様な宇宙人が大勢居るので、全員の顔を把握していなかった。そのため、パンが基地の中に侵入しても、協力者達は彼女も同じ協力者だと思い、道を空けてしまった。
「もう何処にも逃がさない。今度こそ惑星ジニアの場所を話してもらうわ。ドクター・リブ。チェックメイトよ!」
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