三日ぶりに地球に帰ったピッコロとウーブは、帰還後すぐにパオズ山で修行中の悟空達に会いに行った。悟空達は、ピッコロ達を心配していたので、彼等の無事な姿を見て安堵した。
「予備の宇宙船を使って探しに行こうかとも考えたけど、範囲が広過ぎて、とても無理だしよ。ピッコロが居るから、大丈夫だろうとは思っていたけど・・・」
「心配を掛けて悪かったな。こちらには帰りたくても帰れない事情があった。何せ宇宙船が壊されたからな」
「宇宙船が壊された!?それなのに、よく帰ってこられたな。一体、何があったんだ?」
ピッコロとウーブは、これまでの経緯を説明した。
「色々と大変だったな。でも、お陰で新たなジニア人を発見した。正に病気の功名だな」
「お爺ちゃん。それを言うなら、怪我の功名よ」
「と、とにかく、そのドクター・スパインって奴を捕まえりゃ、惑星ジニアの場所を聞き出せるんだろ?そんでもって、そいつが居る星は、協力者から聞き出したんだろ?じゃあ早く行こうぜ。時間が勿体ねえ。ぼやぼやしてると、また逃げられるかもしんねえだろ」
気が急く悟空は、すぐに宇宙船があるカプセルコーポレーションまで飛んで行こうとしたが、ピッコロに制止された。
「待て!俺達がすべき事は、ドクター・スパインの捕獲以外に、もう一つある。残り三人のスパイン師団を倒す事だ。こいつ等は、ドクター・スパインに代わって侵略の指揮を取っている。ドクター・スパイン自身は、サイボーグ造りに専念し、本来の目的である侵略は、スパイン師団に一任しているらしい。だからスパイン師団を倒さない限り、その銀河を救えない」
ジニア人からの侵略を受けていて、それが自分達とは関係ない遠く離れた銀河だからといっても、見逃す訳にはいかない。そして、侵略行為を止めさせるのは、実際に攻めているスパインボーグ達を個別に倒すよりは、彼等に指示を出しているスパイン師団を倒した方が効率的である。
「三人のスパイン師団が拠点とする星の場所も、それぞれ聞き出しています。ただし、スパイン師団を甘く見てはいけません。俺が倒した奴も、かなりの曲者でした。また、個々のスパイン師団の周囲には、その手下であるスパインボーグも居ると予想されます。このスパインボーグは、リブマシーンよりパワーもスピードも上です」
実際にスパイン師団の一人と戦ったウーブは、彼等の力を侮り難しと見ていた。
「そういう訳で、俺達はドクター・スパインが居る星から攻めるか、先にスパイン師団が居る星を順に攻めるか決めねばならない。スパイン師団は確かに強敵だが、俺達全員で一人ずつ挑めば、間違いなく勝てるだろう」
ピッコロは安全策を取って、スパイン師団一人一人に対して味方全員で戦い、個別撃破するつもりだった。しかし、この提案にベジータが噛み付いた。
「気に入らんな。そのスパイン師団とやらが強敵とはいえ、ウーブ一人でどうにかなった相手だろ?そんな敵一人を相手に、俺達全員で向かう必要はあるまい。宇宙船の数は、元々あった三台に加え、お前達が持ち帰った一台と合わせて四台だ。それならば、こちらは四つグループに分かれ、スパイン師団が居る三つの星と、ドクター・スパインが居る星を同時に攻めれば良い。早くしないと、ドクター・スパインに逃げられるかもしれないぞ」
ベジータは、安全よりも時間を重視した。ドクター・スパインが異変に気付いて逃げる前に、彼を見つけて捕らえなければならない。そのためには四つの星を順に巡るより、同時に向かう方が良いと考えた。
「四つのグループに分かれて攻めるだと?それは却って危険だ。残る三人のスパイン師団の実力は、もしかしたらウーブが倒した奴より遥かに上かもしれんのだぞ。それに、バラバラに行動すると、誰かがピンチに陥っても、誰も助けに行けない。それに対し、俺達全員が一緒になって戦えば、スパイン師団が幾ら強くても確実に倒せる。総合的に見たら、こっちの作戦を取った方が、早く片が付くだろう」
スパイン師団に酷い目に遭わされたピッコロは、彼等の力を非常に危険視していた。
「もし全員でスパイン師団を個別に倒しに行ったら、時間が掛かり過ぎて、途中でドクター・スパインに気付かれて逃げられるでしょう。ドクター・スパインから先に攻めても同じです。スパイン師団が集まってくるかもしれません。だから、こうしたらどうですか?俺達は四つのグループに分かれて行動し、一時間経ったら全員が必ず地球に戻るようにするのです。もし戻らない者が居れば、その人は何か危険な目に遭っていると想定し、地球に戻った全員で助けに行きます」
四つの星は、それぞれ遠い位置にあるため、互いに連絡を取る手段を悟空達は持っていない。四つの星を同時に攻め、もし誰かが危険に陥っても、別の星に向かった者達には、その事を知る術が無い。その点をピッコロが不安視している訳だが、一時間までと時間を設定してしまえば、それまでに地球に戻らなかった者イコール危険に遭った者と全員が認識し、救援に向かえる。
「トランクスさん。それは良い考えです。俺達が気絶させた協力者達も何時かは目を覚まし、ドクター・スパインに俺達の事を伝えようとするでしょう。早く行動しなければならないのに、一つ一つを慎重に攻めていたのでは、全ての苦労が水泡に帰してしまいます。バラバラに行動するといっても、全員の行き先は分かっています。万が一、宇宙船を壊されても、奴等から替わりの宇宙船を奪えば良いんです。何の問題もありません。俺達一人一人の力を信じましょう」
トランクスの提案に、ウーブが同調した。結局、若者の意見に押し切られ、ピッコロは渋々同意せざるを得なかった。
「じゃあ次に、誰がどの星を攻めるか決めねえとな。グループの組み合わせは、トランクスとパンがコンビを組み、ピッコロとウーブがコンビを組み、オラとベジータは一人だ。そんでもって、オラとベジータとピッコロ・ウーブ組が、それぞれスパイン師団の居る星で、トランクス・パン組がドクター・スパインの居る星を攻める。それで良いんじゃねえか?」
悟空は、早く戦いたくて気持ちが昂っていた。
「個々の実力・経験・相性を考慮したら、それが一番無難だろう。トランクスとパン。お前達の役目が一番重要だ。俺達は敵を倒せば、それで良い。しかし、お前達は強敵と戦わない代わりに、ドクター・スパインを必ず生け捕りにしなければならないからだ。奴を捕らえられるかどうかで、今回の作戦の成否が決まる。ドクター・リブの時の様な失敗は許されないぞ」
「はい!今度こそジニア人を捕らえ、惑星ジニアの場所を聞き出してみせます」
トランクスとパンは、ドクター・リブを追い詰めながらも捕らえられず、死なせてしまった前回の苦い失敗を思い出し、同じ轍を踏むものかと、いつも以上に熱い闘志を燃やしていた。
話し合いが終わったので、悟空達はカプセルコーポレーションに向かった。そして、ブルマと会い、今回の作戦の趣旨を説明した。悟空達は、ブルマが話を聞いた後、他の科学者達と共に、すぐに宇宙船を動かしてくれるだろうと期待していた。しかし、ブルマは意外な事を口にした。
「今回は、私達が宇宙船を操縦するのをパスするわ。私だけでなく、五人の科学者達もね。あなた達は宇宙船に乗ってるだけだから分からないでしょけど、操縦は疲れるのよ。五人の科学者達も、大変だって不満を洩らしてたわ。そこで私は考えたの。他の人に操作方法を教えれば、宇宙船を動かせる人数が増え、結果として私達六人の負担が減るとね。今まで暇を見つけて、何人かに指導していたんだけど、今回は実習を兼ねて、その人達に操縦してもらうわ」
ブルマの視線は、その場に居たクリリン・ヤムチャ・ビーデル・ブラに向けられた。
「この四人には宇宙船の操作方法を伝授してあるわ。本来なら二人一組で宇宙船を操作するんだけど、今回は行って戻ってくるだけだから、一台につき一人で充分ね。頼んだわよ」
ブルマは自信満々に四人を勧めたが、悟空達は不安だった。機械に強いブルマや科学者達だからこそ、悟空達は安心して宇宙船の操縦を任せられたが、素人同然の四人も同様に任せて良いのか、確信が持てなかったからである。
「おめえ等、本当に宇宙船を動かせるのか?無理しない方が良いんじゃねえか?」
「水臭いぞ、悟空。俺達だって少しは役に立ちたいんだ。だから、ブルマさんが非番の時、空いてる宇宙船を使って指導を受けていたんだ」
「まあ操作方法が複雑だから、すぐには覚えられなかったけどな。でも、何度も練習して、今では完璧に扱えるようになったぜ」
クリリンもヤムチャも白髪が目立つようになっていたが、気持ちだけはまだまだ現役だった。
「ママやブラまで・・・。私達がこれから行くのは、かなり危険な場所なのよ。場合によっては、二人に危険が迫っても、助けられないかもしれない。それでも良いの?」
「パン。あなたは父親を助けるために、学校にも行かずに頑張ってるのよ。母親の私だって何かしないと。私にとっても他人事じゃないんだから、何かしないと居ても立ってもいられないの」
「別の星に行けるなんて滅多に無い機会だし、たまには付き合ってあげるわよ」
ブラは単なる興味本位だが、ビーデルは夫を救いたいという切実な思いから志願していた。
悟飯を救いたいという彼等の思いは、悟空達と何ら変わりなかった。悟空達は、そんな彼等の気持ちを無下に扱う事が出来なかった。結局、この四人が宇宙船を操縦する事で決まった。そして、悟空達は宇宙船に乗り込む前に円陣を組んだ。
「無理をする必要は無い。勝てないと思ったら、すぐに引き返せ」
「標的が一人だけでは物足りなくて、俺が割り当てられた星以外にも移動し、俺一人で敵を全員倒したとしても恨むなよ」
「それじゃあ一時間後、全員この場所で会おうぜ」
こうして悟空達は、一時間後の再会を約束して、それぞれ割り当てられた惑星へと旅立っていった。
コメント