其の四 宇宙一の知的民族

リブマシーンという名前のロボットを操っていた男を捕虜にした悟空は、仲間を引き連れて惑星レードに向かった。今回は戦闘メンバーばかりでなく、ブルマやチチといった非戦闘員の仲間も一緒だった。その理由は、悟空達戦士一同が地球を留守にしている間に、捕らえた男の仲間が、リブマシーンを地球に差し向け、皆殺しにされる危険性を回避してのものであった。

惑星レードに到着した悟空達は、まずは町に移動し、そこでブルマ達と別れた。ブルマ達は町を探索しながら、ホテルへと向かった。一方、悟空達は縄に縛られた男を連れて、レードが居る基地へと向かった。そして、基地内に居たレード親子と会い、男を引き合わせて、これまでの経緯を簡単に説明した。

「オラの話は、ここまでだ。後は、この男から話してもらう。実はオラ達も、まだ何も訊いていねえんだ。おめえも関心あるだろうから、一緒に話を訊くため、ここまで連れて来た」
「従来のお前達なら、こいつの仲間の居場所を訊き出して、自分達だけで全てを片付けようとするはず。何故、今回はそうしなかった?俺と交わした情報公開の約束を律儀に守るためか?」

多くの星が滅ぼされている現状を考えると、一刻も早く敵を全滅させるのが、本来の悟空達らしい行動だった。レードの質問には、悟空に代わってピッコロが応えた。

「お前の疑問は、もっともだ。実際に悟空や悟飯は、仲間の居場所を訊き出し、一刻も早く攻めようとした。しかし、俺が押し止めた。敵の力が全くの未知数だから、力強い味方が一人でも多く欲しかったからだ。敵の討伐が遅れると、その分、犠牲者の数が増えるのは心苦しいが、俺達が敗れたら、結局この宇宙は滅ぼされる。だから、俺は時間を遅らせてでも、お前の力を借りたかった。一時的とはいえ、お前が味方でいるのは、大変心強いからな」

悟空がレードと交わした約束は、敵の情報を知れば、それを互いに伝えるだけで、共闘ではない。なので悟空達だけで敵を一掃しても、約束を破った事にはならない。しかし、未知の敵を相手にするなら、強大なレードの力を借りた方が得策だとピッコロは考えた。

「一時的な味方か・・・。ふっ、確かにその通りだ」

レードが納得した所で、いよいよ男への尋問が始まった。まずピッコロが質問した。

「素直に白状すれば、命だけは助けてやる。ロボットは、お前が造ったのか?」
「違う。俺はリブマシーンを運んだだけだ。ドクター・リブに命令されてな。リブマシーンは、そのドクター・リブが設計したものだ。俺は彼の一協力者に過ぎない」
「ドクター・リブだと?そいつは何者だ?」
「ドクター・リブは、宇宙で最も高い知能を誇る、知的民族ジニア人の一人だ」

ピッコロに凄まれた男は、あっさり白状した。男はドクター・リブへの忠誠心が低く、ただ助かりたい一心だった。

ジニア人という聞き慣れない名前を耳にしたベジータは、ピッコロに代わって質問した。

「ジニア人だと?知らんな。そのジニア人とやらは本来、どのエリアに住んでいるんだ?やはり西銀河か?それとも東銀河か?あるいは南銀河か?もしくは北銀河か?」
「そのどれでもない。ジニア人の母星である惑星ジニアは、ここから遠く離れた別の銀河にある。ドクター・リブは、ある特別な使命を帯びて、この銀河にやって来た」

続けてトランクスが質問した。

「その特別な使命とやらはさておき、ドクター・リブは何が目的でロボット、いやリブマシーンに俺達を襲わせたんだ?」
「深い意味は無い。ただ、この銀河で最も強いと思われる、お前達の強さが、どれ位あるか知りたかっただけだ」

男の言葉に、ベジータとレードが激怒した。

「そんな事のために、俺はカカロットとの戦いを邪魔されたのか!?俺は、あの戦いに全てを賭けていたんだ!例え死んでも、一片の悔いも無いほどにな!」
「ドクター・リブにとっては、単なる調査のつもりだったかもしれないが、そのせいで俺は子供達を殺されたんだ!いくら出来が悪かったといっても、その中の一人に、俺の後を継がせるつもりだった!命令したドクター・リブは無論だが、それに従ったお前も絶対に許さん!」

感情的になっている二人を宥めながら、今度は悟天が質問した。

「ドクター・リブは何のために、この銀河に来たんだ?この銀河を支配するためか?」
「そうだ。ただし、ジニア人は、この銀河だけでなく、全銀河の支配を目論んでいる」
「全銀河の支配だって!?この宇宙には、どれだけ銀河があるのか、ジニア人は知らないのか?宇宙には、何千億もの銀河が存在するんだぞ。しかも一つの銀河の中には、同じく何千億もの星が点在するんだ。ジニア人が何人いるのか知らないが、絶対に出来っこない」

悟天の指摘に、男は笑いながら応えた。

「その考えは少し違うな。確かに各銀河には何千億もの星があるが、その中で知的生命体が住む星は、せいぜい百万。だから百万の星を制圧すれば、その銀河を支配した事になる。ジニア人は高度な科学力を持ち、どの星にも一瞬で移動出来る宇宙船を開発した。また彼等は、同族の医師による手術を受けて、永遠の命と若さを手に入れている。そんな優秀な頭脳を持つ彼等は、千年で全銀河を支配する一大計画を打ち出した。それを彼等は、『ミレニアムプロジェクト』と呼んでいる」

男の壮大な話に、この場に居た誰もが圧倒されていた。気を良くした男は、更に話を続けた。

「ジニア人達は物心が付くと、すぐに英才教育を受けさせられ、ある程度の知能に達すると、それぞれ担当する銀河を割り当てられる。それから彼等に追従する協力者と共に、その銀河を攻める。そして、銀河を征服すると、それを惑星ジニアに報告し、次に担当する銀河を指示される。俺はジニア人ではないが、これまで協力者として、ドクター・リブと共に、数多くの銀河を征服してきた。各ジニア人の元には、俺のような協力者が大勢居る」

捕まっているくせに、男は次第に饒舌になり、増長した。

「協力者と一言で言っても、その役割は様々だ。俺の役目は、ドクター・リブに指定された星へ行き、その星に住む種族を数人捕らえて、その資質を検査する事だ。その検査でAランクに認定されれば、協力者として大いに役に立つ種族だから、説得もしくは洗脳して、全員協力者にする。Bランクに認定された種族は、服従を誓う者だけが協力者として生かされる。そして、Cランクの烙印を押された種族は、役立たずとして皆殺しにされる。大半の種族は、このCランクに該当する」

男の態度を不快に思っていたウーブは、遂に怒りを爆発させた。

「役立たずと判断された種族は、有無を言わさず皆殺しというわけか?何て勝手な奴等だ!こうしている間にも多くの人が、ジニア人の息の掛かった者に殺されていると思うと腹が立つ!宇宙の平和を守るためには、他の銀河に居るのも含めたジニア人全員を、一刻も早く倒さないといけない!」

ウーブの台詞に、男は大笑いした。

「ジニア人を全員倒すだと?馬鹿め!宇宙で最も優秀な頭脳を持つ彼等に敵うものか。そんな事より、お前達もドクター・リブに協力した方が身のためだ。もし協力すれば、お前達も恩恵に与れるぞ。それにジニア人を倒すとしても、お前達の持つ宇宙船では、彼等の母星である惑星ジニアまで、到底たどり着けまい。惑星ジニアがどこにあると思う?3C324にあるんだぞ」

「3C324」と聞いても、その場に居た者の大半は、どれ位離れた銀河なのか分からなかった。しかし、天文学の知識があるトランクス、悟飯、レードは、大声を上げて驚いた。

「3C324だって!?地球から百億光年も離れた銀河じゃないか!そんな途方もなく遠い所から来たというのか!?」

秒速三十万キロの光速で移動しても百億年掛かる銀河から来れるジニア人の科学力に、トランクスは改めて驚愕した。

「驚くのは早いぞ。この銀河を担当する事になったドクター・リブの知能指数は、どれ位あると思う?何と八百だぞ。この銀河に、これだけの指数を持った奴は居まい」
「八百だと!?俺の知能指数は百八十。地球で最高と思われるブルマさんですら、二百五十しかないというのに・・・」
「この銀河一の科学者ですら、約三百五十。ドクター・リブは、その倍以上あるのか!?」

ドクター・リブの知能指数に驚く悟飯達とは対照的に、知能指数自体が分かっていない悟空は、隣のベジータに尋ねた。

「なあ、ベジータ。オラの知能指数って、どれ位あると思う?」
「さあな。五十程度じゃないのか?」
「五十?それって高いのか?」

ベジータの皮肉に、悟空は全く気付いていなかった。

「お爺ちゃん!今は、そんなボケをかましている時じゃないでしょ!早くドクター・リブの居場所を訊き、倒しに行かないと!」
「そうね。私達が協力して戦えば、絶対に勝てるわ。あなた達と戦えるなんて、今からわくわくする」

アイスは闘志に燃えていた。しかし、レードが横槍を入れた。

「待て、アイス。お前は行っては駄目だ。この惑星レードに残れ」

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