其の五十 順調な滑り出し

バトルフィールドの中に突入した悟空達は、それぞれ単独で中心部を目指して走った。そして、悟空達一人一人の様子は、中心部の部屋にある無数のモニターに映し出されていた。レードの読み通り、バトルフィールドの各所には監視カメラが設置されており、悟空達の動向は、ドクター・スカル側に筒抜けとなっていた。そのドクター・スカルは、悟空達が映るモニターを注視していたが、彼の傍らには、フリーザとセルが居た。

「ようやく乗り込んできたか・・・。随分と時間が掛かったな。ところで、中に入った八人の内の一人に、お前に似ている者が居るが、あれは一体誰だ?お前の子供か?」
「さあ?僕の子供かもしれないけど、詳しくは知らないよ。大体、僕に子供が居たかどうかなんて覚えてないし、興味も無いよ。だけど、あれが本当に僕の子供だとしたら、何で孫悟空達と行動を共にしているんだ?親の敵に味方するなんて許しがたいね」

フリーザは、子供が生まれたという報告を受けても全く意に介さなかった。そして、自分が支配する星に子供を放置し、一度も会おうとしなかった。そして、フリーザの死後、レードを含めた彼の子供達は、フリーザの子供というだけで大勢の人から恨まれて命を狙われた。こうした経緯があったから、レードが悟空からフリーザが復活したと聞かされた時、一族の誇りの為に父親を討つと息巻いていたが、その言葉の裏には個人的な理由もあった。

「フリーザ。あれはレードといい、お前の子供で間違いない。孫悟飯は、レードと直接戦っていないが、その部下の一人と対戦した事がある。その部下も生き返らせようとしたが、不可能だった。その部下の名前は、判明していたが、魂を呼び寄せられなかった。あの世に魂が無いと生き返らせる事が出来ない。まだ何処かで生きてるのか、あるいは死んでいるが、魂が別の場所にあるのかまでは分からない」

ドクター・スカルが言うレードの部下とは、宇宙一武道会で悟飯と対戦したライタだった。ライタは魔界で死んだので、彼の魂は神魔界に送られた。その為、リバイバルマシーンでライタを生き返らせる事が出来なかった。

悟空達が走るバトルフィールド内の通路は、複雑な迷路となっていた。そんな中、ピッコロは、広い部屋の中に足を踏み入れた。そして、その部屋の中には、一人の男がいた。その男の図体は、ピッコロよりも大きいが、頭髪が無かった。しかも、ピッコロには見覚えある顔だった。

「けっ、誰が来るかと思っていたら、お前かよ。ベジータだったら良かったのに。まあ良いか」

ピッコロの前に立ちはだかったのは、ナッパだった。三十年以上前、ベジータと共に地球に来襲したナッパは、悟空の仲間を次々と倒したが、遅れて来た悟空と戦って敗れ、最後は役立たずとしてベジータに殺された。そういう経緯があったから、ナッパとしては、出来ればベジータと戦いたかったが、期待に反して、彼の居る部屋に現れたのはピッコロだった。

「貴様は、確かあの時の・・・。そういえば、以前、俺は貴様に殺された事があったな。丁度良い。あの時の借りを返してやる」
「ナメック星人の分際で、俺に勝てると思ってるのか?馬鹿め!」

ナッパは、猛然と襲い掛かってきたが、ピッコロの目にも止まらぬ攻撃で、逆に部屋の隅まで吹っ飛ばされた。

「ふん。サイボーグに改造されても、その程度の力しか無いのか?実力差があり過ぎて詰まらんな。超サイヤ人になれるなら、さっさと変身したらどうだ?もっとも、その頭では、超サイヤ人になっても外見が余り変わらないがな」

最初の攻防で勝利を確信したピッコロは、彼にしては珍しく相手を挑発した。

「くっ、それは嫌味か?どうせ俺は超サイヤ人になれねえよ!」
「超サイヤ人になれないのか?それだけの力があれば、超サイヤ人程度にはなれると思っていたが・・・。そうか!お前は、サイボーグに改造されて強制的に強くなったのであり、レベル自体が上がった訳ではない。ふっ。そういう事か」
「超サイヤ人になれないのが、そんなにおかしいか!?この俺を舐めるんじゃねえー!」

頭に血が上ったナッパは、再度ピッコロに飛び掛かった。しかし、ピッコロの気功波で、あっさり昇天した。そして、ナッパが死んだ途端、部屋の片隅にあって、これまで硬く閉まっていた扉が、突然開いた。

「なるほど・・・。部屋の番人を倒すと扉が開き、先に進める仕組みになっているのか。しかし、その番人が死んでも、すぐに生き返れる。まあ、あの程度の敵だったら、何度生き返っても、全然脅威ではないがな。さてと。先を急ぐか」

ピッコロは、開いた扉を通過し、先へと進んでいった。

ピッコロが部屋を出たのと同時刻に、ベジータは別の部屋に進入し、一人の敵と相対していた。その敵とは、ギニュー特戦隊の一人であるグルドだった。フリーザに仕えていた頃、ベジータはグルドを馬鹿にし続けていたから、グルドはベジータを嫌っていた。しかも、そのベジータに殺されたものだから、グルドのベジータに対する憎しみは尋常ではなかった。

「ベジータ。ようやくお前に復讐する時が来たぞ」
「貴様如きがガラクタ人形に改造されても、俺に勝てるはずなかろう。また俺に殺されたくなければ、引っ込んでろ」
「ぐ・・・。相変わらず俺を馬鹿にしやがって。俺を見くびるな!止ま・・・」

グルドは時間を止めようとしたが、その前に、ベジータのエネルギー波で胴体の真ん中に穴を開けられて倒れた。

「ち、畜生。またしても、お前に殺されるとは・・・」
「お前が時間を止める事が分かっているのに、それを黙って待つ馬鹿が居るか」

グルドは、無念の表情を浮かべたまま息絶えた。そして、グルドが死ぬと、この部屋でも扉が開いた。ベジータは、すぐに扉を通過し、先へと急いだ。

一方、一人先行していた悟天は、別の部屋で、ある敵と対峙していた。それは、父親の悟空とそっくりの顔を持つターレスだった。かつてターレスは、星の生命力を吸い上げる神聖樹の種を地球に蒔き、その実を食して自らの戦闘力を高めようとしたが、悟空と戦って敗れ、神聖樹も破壊された過去があった。しかし、これは悟天が生まれる前の話なので、悟天がターレスを知るはずもなく、ただ父親に似た顔の敵に、げんなりしていた。

「世の中には似た顔が三人居ると聞いた事があるけど、宇宙規模で考えると、それ以上か・・・。しかし、よりにもよって父さんと同じ顔とは・・・。これも何かの因縁なのか?」
「カカロットの息子か・・・。これまで俺の部下を倒してくれたようだが、俺は、そう簡単にやられんぞ」

悟天が敵と遭遇するのは、これが初めてではなかった。この部屋に来る前までに悟天は、ターレスの部下が居る部屋を順に巡り、悉く倒していた。

「どいつも大した事なかった。お前も似たようなもんだろう」
「腕に多少の自信があるようだが、その自惚れが原因で、身を滅ぼす事がある。お前の亡骸をカカロットに見せたら、奴は嘆き悲しむだろうな」
「それはどうかな?案外、厄介者が消えたと喜ぶかもしれない。まあ、お前が俺を倒す事自体が、そもそも無理な話だけどな。話は終わりだ。行くぞ!」

ターレスの眼前に一瞬で移動した悟天は、ターレスの顔に一撃を見舞った。ターレスは、殴り飛ばされて倒れたが、よろよろと立ち上がった。ターレスにとってショックだったのは、悟天の強さよりも、その大胆さだった。

「お、お前。親と同じ顔を持つ俺を、よく平気で殴れるな。罪悪感とか無いのか?」
「無い。親不孝者だからな。続けて行くぞ!」

悟天は、再び飛び掛かり、ターレスを何度も攻撃した。ターレスは、一方的にやられていたが、それは彼が油断していた訳でも、ましてや弱い訳でもなく、悟天が圧倒的に強過ぎたからである。最後は、悟天のかめはめ波で、ターレスも呆気なく敗れた。

「こいつも大した事なかったな。この中には、この程度の敵しかいないのか?それとも、奥に近付くにつれて徐々に強い敵が出てくるのか?いずれにしても、俺が全員倒してやる!そして、父さんを見返してやる!」

悟天は、日々のトレーニングで鍛えられ、相当強くなったという自信があった。そんな自信に満ち溢れた悟天は、新たに開いた扉を通り抜け、先へと急いだ。

他方、悟空も別の部屋に入り、ある人物と対面した。しかし、悟空は、その人物を見て、深い溜息を吐いた。

「・・・出来れば二度と会いたくなかった。敵としてはな」
「ふっ。俺もだ」

悟空の目の前に立っていたのは、兄であるラディッツだった。兄弟でありながら、お互い憎み合い、激しい戦闘を繰り広げた過去があるだけに、悟空の心情は複雑だった。

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