悟空がラディッツと再会していた頃、他の戦士達は、それぞれ遭遇した敵と戦っていた。大抵の者は、一人か二人の敵としか戦っていないが、皆より先にバトルフィールド内に突撃した悟天だけは、ターレス一派と個別に戦い、難無く全滅させていた。しかし、紅一点のパンだけは、偶然にも敵の居る部屋に立ち入らず、これまで戦闘を回避して先に進んでいた。
そんなパンも、とうとう敵が待ち構えている部屋の中に足を踏み入れた。その部屋には、カールした髪で、青い肌の美しい女性が居た。しかし、この女性からは邪悪な雰囲気を醸し出していたので、パンは敵と認識した。
「敵の中に女性が居るなんて思いもしなかった。あなたが誰だか知らないけど、私と戦うなんて運が悪かったわね。でも、ここを今すぐ通してくれるなら、あなたには何もしないであげるよ」
この女性の正体は、かつて銀河系を暴れ回ったボージャックの部下のザンギャだった。以前にボージャック軍団が地球に襲来した際、当時まだ子供だった悟飯が返り討ちにした。しかし、自分の手柄話をしたくなかった悟飯は、パンにボージャック達と戦った時の話をしなかったので、パンはザンギャの事を知らなかった。
得意気に話すパンに対し、ザンギャは一言も発さず、パンを見て冷笑していた。その人を見下した態度に、パンは次第に苛立ってきたが、突然ある事に気付いた。
「あら?あなたから気を感じるわ。サイボーグって気が無いんじゃなかったっけ?それとも、セルとかいう奴と同じ様に、何か特別な改造でもされたのかしら?」
パンが質問しても、ザンギャは応答しなかった。そんなザンギャの態度に、パンは憤慨した。
「ちょっと!聞こえてるんでしょ!?何か言いなさいよ!それとも言葉が通じないの!?」
ザンギャは、パンを鼻で笑ってから、ようやく口を開いた。
「お馬鹿さんねえ。同じ女なのに、そんな事も分からないの?サイボーグに改造されるのを拒んだに決まっているじゃない。他人に自分の体を弄られたくなかった。体が生身のままだから、私からは気を感じるの。あなたも女なら、改造を拒んだ私の気持ちが分かるでしょ?」
「・・・そうね。その点は、同意してあげるわ。でも、何でそれをすぐに言わないの?」
「これから戦う相手に教える義理は無い。キャンキャン五月蠅いから、仕方なく話しただけよ」
やっとザンギャが口を開いたと思ったら、パンを罵倒する言葉を浴びせたので、パンの怒りが激化した。
「何よ、その言い方は!?幾ら敵同士とはいえ、もっとましな言い方が出来ないの!?」
「何か言えと言ったのは、あなたの方よ。私の言い方が気に入らないなら、話し掛けないで黙ってなさい」
「・・・絶対に友達にしたくないタイプね。中心部に行く為、さっさと倒させてもらうわ!」
パンは身構え、正面から飛び掛かった。しかし、ザンギャに簡単に躱され、逆にカウンターを喰らった。ザンギャは、更に追撃して連続攻撃を浴びせた。頭に血が上っていたパンは、動きに斑があったのに対し、ザンギャの動きには無駄が無く、しかもダンスを踊っているかのように優雅だった。
「アハハハハ・・・。その程度の実力しかないくせに、中心部に行こうだなんて、笑っちゃうわ。あなたって、本当に馬鹿ね。このバトルフィールドの中には、サイボーグに改造されて、私より強くなった者が大勢いるのよ。あなたなら途中で必ず殺されるわ。今の内に尻尾を巻いて逃げたら?あなたみたいな雑魚なんて、見逃してあげるわよ。あなた一人を逃しても、後々の災いにはなりそうもないしね」
ザンギャの度重なる罵倒に堪忍袋の緒が切れたパンは、体を震わせながら超サイヤ人に変身した。
「その生意気な減らず口を、これ以上叩けなくしてやるわ!覚悟しなさい!」
パンは再度飛び掛かると、連続攻撃を繰り出した。しかし、ザンギャの方が一枚上手で、パンの攻撃が一つも当たらなかった。それでもパンは攻撃を続け、最初は余裕の表情で避けていたザンギャも、次第にパンの勢いに押されて余裕が無くなってきた。パンは諦めずに攻撃を繰り返し、遂にパンチがザンギャの腹部に命中した。
パンの攻撃を喰らったザンギャは、苦悶の表情を浮かべ、動きが一瞬止まった。この好機をパンが見逃すはずもなく、更にもう一撃を喰らわせ、ザンギャは後方の壁に激突してから倒れた。ザンギャは、すぐに立ち上がったが、パンの予想外の強さに驚き、笑みが消えていた。
「雑魚だと思って甘く見てたわ。意外とやってくれるじゃない。でも、こんなのはどうかしら?」
ザンギャの手の平から、赤い蜘蛛の糸の様な物が放たれた。その赤い糸は、パンの体に巻きつき、彼女の身動きを封じた。しかも、パンが暴れても、糸は一向に千切れる気配が無かった。
「な、何よ、これ!?」
「ふふふ・・・。私は超能力で結界を作れるの。藻搔けば藻搔くほど体力を失っていくわよ」
ザンギャの結界は強力で、パンは逃げたくても逃げられず、体力が失われていった。
「この結界から逃れられた者は、誰も居ないわ。只一人を除いてね。その一人とは子供だったんだけど、凄まじいパワーを発揮して結界を打ち破ったわ。でも、あなたには無理ね。パワーが足りないから。さあ!お喋りは終わりよ!死になさい!」
結界の締め付けが更に増し、パンは苦痛の声を上げた。普段なら、こんな時には必ず誰かが助けに来てくれるが、今この場に助けに来る者は居ない。自分自身の力で、この危機を乗り越えねばならない厳しい現実を、パンは嫌というほど思い知った。これまでのパンは、自分では果敢に戦っていたつもりでも、知らず知らずの内に、悟空やトランクスといった仲間に頼っていた。
「わ、私が何とかしなくちゃ!そうじゃなきゃ、何時までも足手纏いのままだわ!」
「無駄よ無駄。あなたの力じゃ、この結界を破れない・・・え!?力が下がるどころか、逆に上がってきているような・・・」
本来なら結界に捕らわれた者の気は減少するはずなのに、パンの気は減るどころか、むしろ上昇してきた。ザンギャが呆気に取られている間に、パンは今まで以上の力を発揮し、遂にザンギャの結界を破った。
「そ、そんな馬鹿な!?はっ!?そ、その姿は・・・」
パンの周辺にスパークが生じ、彼女の気が信じられないほど高まっていた。パンは、土壇場になって超サイヤ人2に変身した。これまで何度挑戦してもなれなかった超サイヤ人2に、とうとう変身した。一方、ザンギャは、目の前に居るパンが、以前に自分を震え上がらせた少年時代の悟飯と重なって見え、恐怖を感じ始めた。
結界を自力で脱出したパンは、改めてザンギャに飛び掛かった。ザンギャは、反応が間に合わず、パンの攻撃を受けた。先程より遥かに重い一撃の為、それだけでザンギャは大ダメージを負った。パンは続けて二度三度と攻撃し、ザンギャは吐血して倒れた。ザンギャは力を振り絞って立ち上がったが、既に勝敗は明らかだった。
「な、何なのよ、この地球という星は!どうして、こんなに強い女がいるの?以前に出会った子供といい、この女といい、この星の連中には不愉快なのが多いわ!」
「子供子供って、さっきから誰の事を言ってるのか知らないけど、きっとパパの事ね。パパは、子供の時から凄く強かったって聞いてるから」
「パパ!?もしかして、あの子供の娘!?そういえば、何処となく面影がある。そんな・・・」
パンの正体を知ったザンギャは、真の力を発揮した当時の悟飯と対峙した時と同様に、恐怖に震えて後退りした。
「対戦相手が女性であれば、私は誰にも負けない!あなたにも、そしてアイスにも!覚悟しなさい!」
勢い付いたパンは、すっかり戦意を喪失したザンギャに突撃を敢行した。最早ザンギャには、パンに抗う力も意思も無く、攻撃を受け続けた。そして、最後はパンのかめはめ波で、ザンギャは消し飛んだ。ザンギャが死ぬと、部屋の奥にあった扉が開いた。
独力で強敵を打ち破ったので、パンは安堵して変身を解いた。ところが、安心した途端に、パンは倒れた。先程のザンギャの結界によって削られた体力は、決して少なくなく、更に慣れない超サイヤ人2への変身のせいで、パンは莫大なエネルギーを消耗していた。
「つ、次は、もっとスマートに勝ちたいわね。今すぐの前進は無理だから、少し休まないと・・・」
疲労困憊したパンは、意識を失った。
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