其の五十三 才能に勝る努力

パンがザンギャを倒した頃、バトルフィールド内の別の場所では、ベジータがギニュー特選隊の隊長であるギニューと対峙していた。ギニューは、紫色の皮膚で頭部に血管が浮き出ていて、二本の角が生えた人の姿だったが、それが彼の生まれた当時の姿ではない。リバイバルマシーンは、魂が記憶している肉体を再現する。ギニューは、体の交換を繰り返していたから、生まれた時の姿よりも今の姿の方が強く記憶に残っていたので、この姿で復活した。

余裕の表情を浮かべているベジータとは対照的に、ギニューは憎悪を込めて激しく睨んでいた。その理由は、ベジータがギニューの居る部屋に着く前に他の特選隊員を全て倒していたからであるが、その他にも、ギニューにはベジータを憎む事情があった。

「ふっ。てっきり蛙の姿で出てくるかと思ったが、どうやら元の姿に戻れたようだな。蛙での生活は楽しかったか?」
「くっ、ベジータ!俺は蛙となって以降、屈辱の日々を過ごしていた。その辛さを、お前には決して分かるまい!長い蛙での生活の後、ようやく人の姿に戻れたと思ったら、貴様に殺された。今日こそは積年の恨みを晴らしてやるぞ!」

ギニューは、悟空達との戦いで蛙となった後、悟空達を恨みながら地球で暮らしていた。それから十数年後に復活したフリーザが地球に来襲した際、タゴマの体と入れ替わったが、すぐにベジータに殺された。ようやく人の姿に戻り、これから敬愛するフリーザの為に働こうと思った矢先に殺されたので、ベジータへの恨みは相当なものだった。

「そんなに俺と戦いたければ戦ってやる。どうせ貴様を倒さなければ、先に進めないんだ。あっさり片付けてやる。他の特戦隊のメンバーの様にな。行くぞ!」

ベジータとギニューの戦いが始まった。ギニューは最初から全力で挑んできたが、対するベジータは半分以下の力で応戦した。それでもベジータが優位となり、ギニューは何度も攻撃を受けて、すぐに追い詰められた。

「詰まらん。あのギニュー隊長がサイボーグに改造されても、その程度の力しかないとはな・・・。俺が強くなり過ぎてしまったのか?まあ良い。すぐに終わらせてやる」
「ま、まさか、これほどまでに強くなっているとは・・・」

ギニューは、ベジータの強さに驚きつつも、すぐに例の良からぬ企みを抱いた。

「ふっふっふっ・・・。ベジータよ。多少、年を取ってはいるが、その体を気に入ったぞ!チェンジ!」

ギニューは、必殺のボディチェンジを使った。しかし、ベジータは、高速スピードでチェンジ光線を避けた。

「ふっ。相手が自分より強ければ、その肉体を手に入れようとする戦法は、以前から変わってないな」
「ぐ・・・。当たりさえすれば、お前なんぞ・・・」
「この体が欲しいか?だったら、もう一度やってみろ」
「舐めやがって!チェンジ!」

ギニューは、再度ボディチェンジを使った。しかし、またしてもベジータが避けたため、体を入れ替える事が出来なかった。体を奪えずに悔しがるギニューを、ベジータは鼻で笑った。

「その技は、真正面に居る相手にしか効果が無い。だったら、貴様の前に立たなければ、簡単に防げる。だから技を知らない者にしか通用せず、知っている者には通用しない。また、誤って狙っていた相手とは違う者と体を入れ替えてしまう危険もある。唯一無二の凄い技ではあるが、欠点だらけだからこそ、貴様は宇宙一の戦士になれなかった。貴様は、ここまでだ。すぐにフリーザも地獄に送り届けてやるから、安心して待っていろ。じゃあな」

ベジータの手の平から放たれたエネルギー波で、ギニューの肉体は消し飛んだ。そして、ギニューが死ぬと、閉まっていた部屋の奥の扉が開いた。

「ちっ。雑魚ばかりで嫌になるぜ。早くフリーザを探し出さねば、レードに先を越されてしまう」

ベジータは、開かれた扉を潜り抜けて先を急いだ。

一方、別の部屋では、ピッコロがスラッグと対峙していた。このスラッグは、穏やかな種族であるはずのナメック人なのに、悪の道を突き進んでいた。また、他のナメック人と比べて桁違いに強かった為、超ナメック人と言われていた。

かつてスラッグは、地球を乗り物替わりにしようと大勢の部下を率いて侵攻した。そして、地球を自分達にとって住み心地の良い環境にする為、地球全体を極寒の地に変えた。しかし、悟空やピッコロの必死の抵抗によってスラッグは倒され、地球は元の姿に戻った。

「久し振りだな。どちらが最強のナメック人か決めようではないか」
「そういう台詞は、サイボーグに改造される前に言うべきだったな。貴様が改造された時点で、もうナメック人ではなくなった。そんな貴様がナメック人面する事すら気に食わん。すぐに倒してやる。お前の弱い部下達と同様にな」
「ふはははは!お前に出来るかな?俺の実力は、役に立たない部下共とは比べ物にならんぞ!」

ピッコロは、この部屋に着く前にスラッグの部下一人一人と順に戦い、全て余裕で倒していた。スラッグは、その事を気にも留めていなかった。ピッコロは、流石にスラッグは別格だろうと感じていた。

ピッコロとスラッグの戦いが始まった。ピッコロは、相手の実力を探る為に様子見程度の力で戦ったが、いきなり重い一撃を喰らわされた。続く第二撃目は、辛くも回避したピッコロだったが、短い攻防の中で、スラッグが想像以上に強かった事を、ピッコロは存分に思い知った。その後は双方が交互に攻撃を繰り出したが、お互い決め手を欠いて相手の体に攻撃を当てられず、頃合を見て、両者同時に後方に退いた。

「なるほど・・・。言うだけの事はある。部下共とは偉い違いだ。こいつを倒しても終わりではなく、この後も戦闘が続くから、エネルギーの消費は極力避けたかったが、今は止むを得まい。本気を出すか」

ピッコロは、身に着けていたマントとターバンを脱ぎ捨て、気を開放した。そして、本気になったピッコロは、スラッグに飛び掛かった。ピッコロは段違いに速くなっており、スラッグは必死に応戦したが、地力で勝るピッコロが徐々に優位となり、スラッグは立て続けに攻撃を喰らった。そして、ピッコロの強烈な蹴りで、スラッグは後方の壁に激突した。壁が崩れ落ち、スラッグは瓦礫の下敷きになった。しかし、スラッグは即座に立ち上がった。

「お、おのれ!もう許さん!」

スラッグは逆上し、ピッコロに猛烈な勢いで襲い掛かった。しかし、怒っていたせいで、スラッグの攻撃が単純になり、その為にピッコロに動きを容易に読まれた。ピッコロは攻撃を全て避け、逆にカウンターを喰らわせた。劣勢になると逆上し、動きが単調になるのは、力は強いが、逆境に弱い者によく見られるパターンだった。

「ば、馬鹿な!?超ナメック人である俺が、サイボーグに改造されて更にパワーアップしたのに、改造されていない普通のナメック人に押されているだと!?」
「馬鹿め!俺がどれだけ修行を積んでいると思ってるんだ!才能は貴様の方が上でも、努力は俺の方が遥かに上だ!目先の強さに踊らされ、ナメック人としての誇りを失った貴様に、俺が負けるか!」

超ナメック人とまで呼ばれた天才のスラッグは、他のナメック人より恵まれた才能を持っていた。しかし、その力を正しい事に使わず、己の私利私欲の為に使っていた事に、ピッコロは同じナメック人として腹立たしかった。更に、安易に強さを得ようとサイボーグに改造された事が、ピッコロの怒りを増長させた。

ピッコロの勢いの前に、スラッグは気圧された。それでもスラッグは必死で抵抗し、数回の攻撃を当てたが、数十回も攻撃を当てられ、最後に止めを刺された。そして、スラッグが死ぬと、部屋の奥にある扉が開かれた。

「ちっ。勝つには勝ったが、割と攻撃を当てられた。この先は、更に強い敵が登場するだろう。気を引き締めねばな」

ピッコロは小休止し、呼吸を整えてから先に進んだ。

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