其の五十四 新技法の秘密

バトルフィールド内に突入した悟空達は、順調に勝ち進んでいた。トランクスも複数の敵を撃破し、現在はフリーザの父であるコルド大王が居る部屋の中に足を踏み入れていた。トランクスにとってコルドは初見だが、コルドにとってトランクスは、忘れたくても忘れられない顔だった。当然の如くコルドは、トランクスが部屋に入ってくるなり、敵対心剝き出しで話し掛けてきた。

「待っていたぞ。お前に復讐する時をな。今度こそ殺してやる!」
「俺への復讐だと?別の誰かと勘違いしていないか?俺とは初対面だぞ」
「お前自身に覚えが無くても、未来から来たとかいう、もう一人のお前は、ワシを殺すという許し難い大罪を犯した。その罪を現代のお前に償わぜてやる」
「未来から来た俺か・・・。ふっ、流石は俺だな」

トランクスは、未来から来たもう一人のトランクスが、どういう活躍をしたか詳しく話を聞いていない。彼が知っているのは、大勢の仲間が居て、何不自由無く暮らしている今の自分と違い、未来の自分は、仲間を失い、厳しい生活を強いられる正反対の生き方だった。同一人物でありながら、全く違う人生を送る未来の自分を哀れに感じつつも、孤高に戦うヒーローみたいで憧れてもいた。

「自分がした事は、自分で始末を付けろと言うが、これもそれに該当するんだろうか?とにかく、こいつを倒さないと先に進めないんだ。手っ取り早く倒すとするか」
「手っ取り早く倒すだと?ワシを舐めるなー!」

激怒したコルドは、猛烈な勢いで飛び込んできた。しかし、対するトランクスは、冷静にコルドの動きを見切って突進を避けた。コルドは、引き返して再び飛び掛かり、攻撃を何度も繰り出したが、トランクスの超スピードのせいで掠りもしなかった。コルドが攻撃を中断すると、その隙にトランクスが距離を置いた。

「くそー!ちょこまかと逃げおって!」
「ふう。思ったより素早いな。躱す事は出来ても、反撃までは無理だ。仕方ない。変身するか」

出来れば変身しないで倒して力を温存し、この戦いを監視しているであろうドクター・スカル側に手の内を見せたくなかったトランクスだが、更にスピードを上げる為、止むを得ず超サイヤ人に変身した。ところが、変身したトランクスの姿を見た途端、コルドは激昂した。

「またもや超サイヤ人になりおって!もう許せん!」

コルドは、かつて未来のトランクスに殺された時の状況を思い出し、ますます怒りが込み上げてきた。怒涛の勢いでトランクスに迫ったが、対するトランクスは、それ以上のスピードでコルドの背後に回り、エネルギー波を放った。エネルギー波はコルドの腹部まで貫通し、コルドは倒れた。

「お、おのれ。またしても・・・。しかし、その程度の強さでは、今のフリーザには通用しない。奴は・・・」

コルドは、無念の表情を浮かべて息絶えた。コルドが死ぬと、部屋の奥にあった扉が開かれた。変身を解いて元の姿に戻ったトランクスは、扉を通過して先を急いだ。

一方、これまで圧倒的な強さで勝ち進んでいたレードは、彼の叔父であるクウラが居る部屋の中に侵入していた。

「あなたがクウラか?お初にお目に掛かる。俺は、甥のレードだ」
「甥だと?そうか。フリーザの息子か。確かに似ている。しかし、どうして孫悟空達と共に行動しているんだ?フリーザが誰にやられたのか、知らぬはずがあるまい」
「奴等とはジニア人を排除する為、一時的に手を組んでいるだけだ。いずれ必ず倒す。しかし、それは復讐の為ではなく、我が一族の代々の悲願である宇宙征服の為だ」

レードは当たり前の事を言ったつもりだが、クウラは大笑いした。

「我が一族の代々の悲願だと?どうやら何も知らないようだな。最初に宇宙征服を目論んだのはフリーザで、俺や父が、それに同調したに過ぎない。それに、フリーザは子供に後を継がせるつもりはなかった。奴は永遠の命を手に入れ、永久に宇宙の支配者になるつもりだったからな」

宇宙は余りにも広大である為、その中を移動するには、宇宙空間を生きられるフリーザの一族でも宇宙船が必要となる。しかし、フリーザの時代以前の科学力では高速移動する宇宙船を造れず、移動には多くの時間を要した。その為、どんなに力があり、どんなに野心があっても、宇宙征服が現実的ではなかった。フリーザの時代になり、ようやく高速移動する宇宙船を開発出来るようになったので、フリーザが一族の中で初めて宇宙征服を目指すと主張した。

「それでは、もし父が永遠の命を手に入れていたら、自分の子供をどうするつもりだったのだ?」
「奴は欲深い男だ。自分の地位を脅かしそうな者は、例え自分の子供であろうと容赦なく排除しただろう。お前などは真っ先にな」

レードは、目の前が真っ暗になった。これまで抱いていた父親像が崩れ、フリーザへの怒りを増幅させた。しかし、努めて平静を装って話し続けた。

「父がいかなる考えであれ、宇宙を支配しようとしていた事実に変わりはないはず。その父が、何故ジニア人に従っているんだ?何か深い考えでもあるのか?」
「深い考え?そんなものは無い。今の奴は宇宙の支配よりも復讐で頭が一杯だ。孫悟空達を倒せるなら、喜んでジニア人に協力するさ」

クウラの言葉を聞いたレードは、天井を仰ぎ見て、深い溜息を吐き、フリーザを心の底から幻滅した。

「個人的な恨みを晴らす為に王としてのプライドを捨て、ただの復讐鬼に成り下がったのか・・・。情けない!そんな理念しか持ち合わせていないなら、父が相手でも容赦しない!一族も関係ない!自分が信じた道を行くまで!その邪魔をする者は、誰であろうと排除する!それが例え、あなた方だとしてもだ!」
「排除するだと?面白い。サイボーグに改造されて更に強くなった俺の力を見せてやろう」

クウラは、話し終わるや否や、すぐに身構えた。それに対し、レードは右手を前に出した。

「あなたを倒す為だけに、本気で戦う必要はあるまい。この右手だけで戦ってやる」
「右手だけで戦うだと!?この俺を舐めるのも大概にしろー」

クウラは、猛スピードでレードに迫ったが、レードの尻尾で床に叩き付けられた。しかし、頭を手で押さえて、すぐに立ち上がった。

「くっ!み、右手だけで戦うんじゃなかったのか?」
「あれは嘘だ。対戦相手の言葉を鵜呑みにするとは情けない」
「舐めた真似をしやがって!目に物見せてやる!」

クウラが力を溜めると、頭部がヘルメットのようなもので覆われ、体全体が少し大きくなった。クウラは、奥の手である変身を早くも使った。しかし、レードは、クウラの変身を見ても一向に動じなかった。

「それがあなたの最終形態か・・・。だったらこっちは、右手ではなく、右の人差し指一本で戦ってやろう。今度は嘘ではない」
「指一本だと!?どこまで俺を虚仮にすれば気が済むんだー!?」

クウラは、レード目掛けて飛び出した。対するレードは、クウラが自分の所に到着する前に、右の人差し指から光弾を放った。光弾がクウラの左胸にある心臓を貫通し、致命傷を負ったクウラは、血を吐いて倒れた。

「変身した俺が、たったの一撃で・・・。何という強さだ・・・」
「父より強いと言われた、あなたがこの様では、父も大した事なさそうだな」
「それは違う。フリーザは俺とは違った方法で改造された。その方法とは、体内に眠っている潜在能力を何倍にも増幅させ、一気に開花させるものだ。フリーザは、並々ならぬ潜在能力を持っていたからこそ、皆とは違った方法で改造された。お前が幾ら強くても、今のフリーザに敵うまい」

フリーザの体に施された新技法による改造は、必ずしも従来の方法より強くなれる訳ではなかった。大した潜在能力の無い者を新技法で改造しても、余り力が伸びず、従来の方法で改造するよりも弱い場合があった。更に新技法は、従来の方法よりも改造に手間が掛かった。今回は改造する者の数が多かった為、ほとんどの者は、無難で手軽な従来の方法で改造された。

「お、俺がフリーザより強かったのは、奴が己の才能に自惚れ、ろくに訓練を積まなかったからだ。真面目に特訓していれば、俺より遥かに強くなっていた。実際、あいつが一度生き返って四か月修業しただけで、俺より遥かに強くなった。今は更に強くなっている」
「それは負け惜しみのつもりか?どんなに強くなっていようと、父が俺に勝てるはずあるまい。父は生き返るべきではなかった。もう父の時代ではない。俺が地獄に送り返してやる」

レードはエネルギー波を放ち、クウラの体を完全に消し去った。そして、クウラが死ぬと、閉じられていた部屋の扉が開かれた。レードは冷たい表情を浮かべつつ先を急いだ。

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