意識が無いパンとウーブを抱えたセルは、ドクター・スカルが居る中央部の部屋に移動した。そこにはフリーザも同席しており、部屋には無数のモニターがあった。モニターの一つ一つには、バトルフィールド内の各所の様子が映し出されており、それ等を二人は苦虫を噛み潰したような顔で観ていた。二人の表情を一瞥しただけで、セルは現在の状況を理解したが、それでも敢えて訊いてみた。
「戦況は、どうなっている?もう一人ぐらい脱落しそうか?」
「ふん。そんな訳があるまい。あれを観ろ!」
ドクター・スカルが指差したモニターには、悟天とボージャックが戦闘する様子が映っていた。悟天は超サイヤ人4に、対するボージャックは肌が緑色に、それぞれ変身しており、共にフルパワーの状態で戦っていた。戦闘は、これまで互角の展開で、双方とも体中が傷だらけだった。
かつて銀河中を暴れ回ったボージャックは、その力を危険視した四人の界王によって封印された。しかし、北の界王が死んだ事で封印が解けて再び自由の身となり、銀河系の中で最も美しい星と独自の視点で判断した地球を支配する為、部下達を率いて来襲したが、真の力を発揮した悟飯によって撃退された。
リバイバルマシーンによって復活したボージャックは、即座にドクター・スカルへの協力に応じた。そして、戦いたい相手を好きに選んで良いと言われたので、悟飯との再戦を希望した。しかし、悟飯が参戦していなかったので、代わりに彼の弟である悟天との対戦を望んだ。その希望は聞き入れられ、悟天とボージャックの戦いが実現したが、いざ戦ってみると、悟天が予想外に強かったので、戦ってる内に段々と腹が立ってきた。
改造前でも相当の実力を持っていたボージャックだが、改造された今では、スカルボーグの中でも上位の実力を持ち、周囲からの期待も大きかった。そのボージャックが楽に倒せると思われた悟天を相手に戦い、少しも優勢に持ち込めないので、ドクター・スカルの失望は大きかった。
一方の悟天は、レードの元で力を付け、今ではレードの評価も良かった。この場に悟空が居たら、悟天の成長に舌を巻いていただろう。悟空に自分の成長を見せられない事が、歯痒かった。
戦ってる者も、観戦している者も、それぞれ不満を抱えながら、戦闘は次第に悟天が有利な展開へと推移していった。この原因は、力量の差でも、技量の差でもなく、精神面の差であった。
元々、自分の実力に過度の自信を持っていたボージャックは、スカルボーグに改造されて、無敵の力を得たと自負していた。ところが、悟天一人を相手に苦戦しているので、彼の自尊心は深く傷ついていた。そのせいでボージャックの集中力が切れ、攻撃は大振りが目立つようになり、動きも散漫になっていた。
苦戦しているのは悟天も同じであるが、彼の場合は、むしろ喜んでいた。ようやく自分が本気になって戦える強敵と出会えたからである。この喜びに比べれば、悟空が観戦していない不満など、微々たるものであった。喜び勇んで戦う悟天の動きは、決して単調にはならなかった。
ボージャックが冷静になって己を見つめ直し、気持ちを切り替えようとした時には、既に遅かった。攻撃を受け続けたボージャックの体は、傷付き、疲れ果てていた。悟天は、優勢になって以降も決して手を緩めず、着実に攻撃を重ねていた為、両者の体に蓄積されたダメージ量には大差が付いていた。
逆転するのは不可能と判断し、勝利を諦めたボージャックは、最後の賭けに出た。悟天を抱き締め、彼を道連れにして自爆しようと試みたが、その作戦は悟天に見抜かれてしまった。悟天は、飛び上がってボージャックの突進を避けると、かめはめ波を放った。かめはめ波を浴びたボージャックの体は消滅し、戦いは悟天の完全勝利で終わった。
戦闘を終えた悟天は、すぐに変身を解き、開かれた扉を走り抜けた。悟天の体の傷は、決して軽症ではなく、疲れも溜まっていたが、彼の頭の中に休むという発想は無かった。それだけ悟天は、早く次の戦いがしたいと気持ちが高ぶっていた。
一方、別の部屋では、トランクスが超十七号と戦っていた。各宇宙の強者が犇めく力の大会で勝ち残るほど強かった十七号が、マシンミュータントと結合して超十七号と名を改めて究極の人造人間になり、更にジニア人の科学力で改造され、旧技法によって改造されたスカルボーグの中では最強の力を有していた。ところが、超十七号は、戦いたい相手を指名しなかった為、たまたま部屋の中に入ったトランクスが対戦相手となっていた。
トランクスと超十七号が戦う状況に、フリーザが驚いていた。自分の手で憎きトランクスを殺したいと願っていたフリーザだが、今では超十七号に獲物を横取りされるのではないかと冷や冷やしていた。
トランクスは、超サイヤ人4となって戦っていたが、それでも劣勢を免れなかった。不利な状況でも決して諦めず、何度倒されても立ち上がり、果敢に勝負を挑み続けていた。色々と手法を凝らし、攻め方を毎回変えてはいるものの、対する超十七号は、冷静沈着で決して惑わされず、何度もトランクスに手痛い打撃を与えていた。
懸命に奮闘していたトランクスだが、遂に力尽きた。そして、超十七号は、倒れているトランクスに近付き、拳を振り上げて止めを刺そうとした。しかし、次の瞬間、突然現れた何者かにより吹っ飛ばされた。トランクスが顔を上げると、そこには何とレードが立っていた。二人が戦っている部屋の中に侵入したレードは、猛スピードで超十七号に迫り、強烈な一撃で超十七号を吹っ飛ばしていた。
「レ、レード。ま、まさか、お前に助けられるとは・・・」
「助けたのではない。こいつが邪魔なだけだ。父への道を阻む者は、誰であろうと消す」
レードは、トランクスを気遣う素振りを微塵も見せず、立ち上がったばかりの超十七号に飛び掛かった。そして、両者の間で早くも激しい攻防戦が繰り広げられた。流石に超十七号は強く、さしものレードでも容易には倒せなかった。その間にトランクスは、必死に体を起こし、少しでも激闘の場所から己の身を遠ざけて、巻き添えを回避しようとした。
焦れたレードが手っ取り早く勝負を終わらせる為に、自らの体に気円斬を周回させて突撃した。それに対して超十七号は、何と電撃地獄玉を使って応戦してきた。電撃地獄玉は、レードの体の周囲を旋回する気円斬を消し飛ばしたが、レードには回避され、壁に激突して大爆発を起こしてバトルフィールドの一部を破壊した。バトルフィールド全体が破壊されなかったのは、それだけ頑丈に造られたからであるが、激震は全体に及んだ。
「ちっ。そう簡単に倒せる相手ではないな。もっと慎重に戦わねば」
超十七号を強敵と認めたレードは、じっくり戦う事に方針を切り替えた。レードは、すぐに飛び込もうとせず、超十七号の出方を慎重に伺った。対する超十七号も、レードを手強い相手だと認識し、無闇に動こうとはしなかった。戦いが膠着状態になっている間に、トランクスは先程の電撃地獄玉によって作られた穴を通り、別のルートから中央部を目指して歩き出した。大ダメージを負っているトランクスだが、彼の頭の中にも休むという発想が無かった。
レード対超十七号の激戦の様子は、中央部に居る三人も注視していた。フリーザとセルは、彼等でさえも実力を認めている超十七号が、優位に立てない戦況に驚いていたが、同じく観戦していたドクター・スカルは、ショックの色を隠せなかった。
「ま、まさか、ここまで強い奴が居るとは・・・。完全に見込み違いだ」
「そう気落ちする必要は、あるまい。私とフリーザが居れば事足りる。もし私達まで敗れても、すぐに生き返らせれば問題無いはずだ」
「でも、孫悟空達の強さは、聞いてた以上だったよ。ドクター・スカル。君達が準備に手間取ってる間に、孫悟空達を更に強くさせる時間を与えてしまったようだね」
ドクター・スカルは、これまで彼の協力者達と共同して、百人を超える戦士達をスカルボーグに改造し、この巨大なバトルフィールドまで製造した。それには何年もの歳月を要し、その間、悟空達に修行する時間を与えていた。準備する事ばかり考え、悟空達の成長スピードまで頭が回らなかった結果、現在の悟空達の実力が想定を大きく上回っていた。
「幾ら生き返るとは言っても、体の元になるリビングドールが無くなれば、それ以降の復活が不可能となる。リビングドールは、すぐに作れる物ではない。また、こちらには二人の人質が居るが、それだけでは不十分だ。もう勘弁ならん!こうなったら取って置きの奴を使って、まずは孫悟空から倒してやる!例え孫悟空でも実の親には手出し出来まい。孫悟空さえ倒せば、奴等の士気が一気に下がるはずだ!孫悟空の驚き慌てる顔が見ものだぞ」
ドクター・スカルは、中央部のコンピュータで通路を変更した。そして、何も知らない悟空は、変更された通路を走り、ある部屋の中に誘導された。割と広い部屋の為、部屋の端の方に居た人物を鮮明には見えなかった。しかし、その人物が歩いて近付いてきたので、徐々に肉眼で全容を確認出来た。そして、その人物の姿を認識した瞬間、悟空の表情が一変した。顔に傷があるが、自分に酷似している人物の正体を、見た瞬間に分かった。
「おめえが父ちゃんだな?オラは孫・・・いや、カカロットだ」
悟空の目の前に立っていたのは、父親のバーダックだった。悟空は、敢えてカカロットと名乗り、父親に自分の事を分かって欲しかった。高ぶる興奮を抑えるのに必死で、兄のラディッツが最後に言い残した忠告を忘れていた。
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