其の五十七 父親達との対決

初めて父親と会った悟空は、感慨無量であった。しかし、父親であるバーダックは、悟空と出会って感動するどころか、悟空を嘲笑していた。当初は感激していた悟空だが、バーダックの只ならぬ態度に違和感を感じ、思わず問い質した。

「ど、どうしたんだよ、父ちゃん?オラの事が分からねえのか?」
「くっくっくっ・・・。父ちゃんだと?馬鹿め!お前の方こそ俺が誰か分からないのか?」

突然、バーダックの髪が白髪に変わり、目の上や口の下に赤い線が入った。その変化を見ただけで、悟空は真相を悟った。

「おめえは、ベビーだな。オラを倒す為に、父ちゃんの体を乗っ取ったのか?」
「そうだ。大抵の子供は親に手出し出来ない。お前を倒すのに、これ程の適任者は他に居ない」

悟空の父バーダックの体は、ベビーに乗っ取られていた。ベビーは、他人の体内に入り込み、その者の体を己の意のままに操る能力を持つ。かつてベジータの体に寄生し、ベジータベビーとして悟空を散々苦しめた。それを知ったドクター・スカルは、ベビーが乗り移る対象にバーダックを選んだ。

生き返ったばかりのバーダックは、即座にベビーに体を乗っ取られた。その現場を見ていたラディッツは、悟空の優しさを考慮して、悟空ではベビーに勝てないだろうと判断し、死ぬ間際に「父親に会ったら逃げろ」と忠告していた。

悟空は、ようやく実現した父親との対面の喜びを、父親と分かち合えない事が悔しかった。そして、ベビーやドクター・スカルの卑劣さに憤りを感じた。

「卑怯だぞ!オラの父ちゃんの体を乗っ取るなんて!さっさと父ちゃんの体から出て行け!」
「ふん。何とでも言え。お前を倒せるんだったら何でもするさ。それがドクター・スカルの考えだ」
「くそっ!ジニア人のやり方は、いつもながら腹が立つ!」

中身がベビーとはいえ、表面は実の父親である。流石の悟空でも、簡単に割り切って戦えるはずがなかった。しかし、対するバーダックベビーは、そんな悟空の心情を察してか、容赦なく悟空に襲い掛かってきた。悟空は、反撃して父親の体を傷つける訳にはいかないので、必死に逃げ回っていた。

何とか攻撃を避け続けていた悟空だが、彼の素早さに業を煮やしたバーダックベビーは、両手を上に挙げて念じ始めた。すると、バトルフィールド内に居る他のスカルボーグ達から、悟空に対する恨みのエネルギーが集まってきた。また、既に敗れたスカルボーグ達の残存のエネルギーまでもが集まってきた。

エネルギーを吸収したバーダックベビーの体が変化した。両目がサングラスを掛けたように青く光り、体が一回り大きくなった。身に着けていた旧式のバトルジャケットが変形し、ベジータベビーの時に装着していたのと同じようなジャケットになった。バーダックベビーは、恨みのエネルギーを吸収し、パワーアップした。

より強くなったバーダックベビーは、猛烈な勢いで悟空に襲い掛かった。悟空は、超サイヤ人への変身も間に合わず、強烈な一撃を喰らってしまった。

ベビーが寄生した時の強さは、ベビー自身と寄生された人との合算である。バーダックは生身のままだが、 ベビーはスカルボーグに改造されて以前よりパワーアップしていた 。そこに恨みのエネルギーによって得たパワーが加わり、今のバーダックベビーの強さは、悟空がこれまで戦ってきたスカルボーグ達とは一線を画していた。

「くっ・・・。ベビーを父ちゃんの体から追い出す方法はねえんか?このままじゃ、何も出来ずにやられちまう」

ベジータベビーの時とは、状況が明らかに違っていた。ベジータとはライバル関係で、ベジータと拳を交えた事があったから、悟空は気兼ねなくベジータベビーと戦う事が出来た。しかし、今回は相手が父親なので、悟空は戦う事に抵抗を感じていた。

このバトルフィールド内に居るのが悟空だけだったら、この場は退散して、別のルートから中央部を目指す選択肢があった。しかし、バトルフィールド内の別の場所には仲間が居るので、悟空が離れても、仲間の誰かが、バーダックベビーと遭遇するかもしれない。並の敵ならともかく、バーダックベビーが相手では負けるかもしれない。仲間が殺されるかもしれない状況を考慮すると、悟空が留まってバーダックベビーを倒さざるを得なかった。

「ベビー!おめえだけは、おめえだけは、絶対に許さねえ!」
「ほう。父親に手を上げる気か?親不孝な奴め。まあ良い。無抵抗な奴を殺すのも詰まらんからな。分かっているとは思うが、俺が死ねば、お前の父親も死ぬ。それを承知の上で攻めて来い」
「ごちゃごちゃうるせー!」

悟空は覚悟を決めて超サイヤ人4に変身し、臨戦態勢になった。悟空は父親に手出し出来ないというドクター・スカルの目論見は、あっさり覆された。しかし、バーダックベビーは、悟空の心を揺さぶる第二の策として、恐ろしい事実を伝えた。

「俺が他人の体内に卵を産んで、その人間を操って配下に出来る事を覚えてるだろ?卵の状態でも人を操る事は可能だが、卵は孵化する。以前は期間が短かったから、孵化するまでには至らなかったが、今回は充分な時間があった。俺は二人の人間の体内で卵を産み、それが無事に孵化した。俺と同等の力や能力を持つ子供、ベビージュニアが誕生したのだ!そいつ等は、バトルフィールド内の別の場所で、お前の仲間を殺しているだろう」

バーダックベビーの衝撃の告白に、悟空は声が出なかった。ベビーだけでも厄介なのに、今回は他に二人も居る。そして、ベビージュニア達もまた、こちら側にとって戦い難い人間に乗り移っている可能性が高かった。その悟空の心配は、現実のものとなっていた。

一方、バトルフィールド内の別の部屋の中では、ベジータがある人物と対峙していた。それは彼の父親であるベジータ王だったが、ベジータ王の体はベビージュニアに支配され、ベジータ王ベビージュニアと化していた。

「ベビージュニアだと!?ちっ。ふざけた奴が現れたぜ」
「ベジータよ。以前は父がお前の体を乗っ取ったそうだが、今回はそんな事はしない。お前を殺す」
「ほざけ!やれるものなら、やってみやがれ!年を取ってるとはいえ、この俺がそう簡単にやられると思うなよ!」

ベジータ王ベビージュニアの体も変形を始めた。白髪となり、顔に赤い線が何本も入り、装着していたバトルジャケットが変形した。ベジータ王ベビージュニアは、事前に生き返ったサイヤ人達からサイヤパワーを頂戴していた。

「俺を王と戦わせたかったら、貴様が寄生せずとも、ガラクタ人形に改造して洗脳すれば済む話だろうが」
「馬鹿め。この男をスカルボーグに改造しただけで、お前を倒せる程の力を得られると思うか?俺が寄生したからこそ、お前を倒せるだけの力を得たんだ」
「この年になって親と対決するとはな。以前の俺なら容赦なく殺せると思うが・・・」

地球で暮らしてる内に穏やかな性格になったベジータは、父親を倒す事に躊躇いがあった。

他方、別の部屋では、ピッコロが彼の親であり同一人物でもあったピッコロ大魔王と対峙していた。そして、ピッコロ大魔王も、もう一人のベビージュニアに体を支配され、ピッコロ大魔王ベビージュニアとなっていた。そして、ピッコロ大魔王の顔にも赤い線が入っていた。

「ベビーの子供か・・・。今まで戦ってきた連中より強そうだな。サイボーグに改造するより寄生させた方が強いなら、ベビーは全員の体に卵を植えつけるべきではなかったのか?」
「本来ならそうしたかったが、ドクター・スカルが許可しなかった。卵を体内に植えつけられると、その者は父に支配される。全員の体内に卵を植えつけると、全員が父に従う事になる。そいつ等を使って父が反旗を翻す事を、ドクター・スカルが恐れたからだ」

ベビーに卵を植え付けられた者は、ベビーに身も心も完全に支配される。ベビーがその能力を使って全員を支配すれば、誰もがベビーに従うようになる。そうなると、かつては銀河の支配を目指した程の野心家であるベビーが、大人しくドクター・スカルに協力するとは思えない。ベビーが支配した連中を使い、ドクター・スカルに対して戦いを仕掛けてくる可能性すらあった。ドクター・スカルは、そうなる事を恐れていた。

「ふん。ドクター・スカルは、慎重な奴なのか、只の臆病者なのか。まあ良い。俺が貴様を倒せば、それで済む話だ」

ネイルや神様と融合した今のピッコロは、ピッコロ大魔王を親と思う気持ちが薄れていた。その点だけは、ピッコロは悟空やベジータよりも有利ではあった。

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