其の五十八 二人のピッコロ

ベビーが産んだ卵が孵化して誕生したベビージュニア。そのベビージュニアに体を乗っ取られたピッコロ大魔王と対峙するピッコロ。これまでネイル、神様、そして多くのナメック人と融合したピッコロは、最早ピッコロ大魔王を親とは思い難い心情だったが、それでも彼が敵の手に落ちた事を不快に感じていた。

「幾ら悪とはいえ、かつては父と慕ったピッコロ大魔王が敵に操られているなど見るに耐えん。すぐに貴様を追い出してやる」
「ふん。身の程知らずめが。すぐに片付けてやろう」

ピッコロとピッコロ大魔王ベビージュニア。この二人による戦いは、ピッコロの先制から始まった。ピッコロが勢いよく飛び掛かると、凄まじい攻撃を次々と繰り出し、ピッコロ大魔王ベビージュニアを早くもダウンさせた。しかし、ピッコロ大魔王ベビージュニアは、すぐに笑みを浮かべながら立ち上がった。

「連戦で体力を消耗していると思っていたが、まだこれだけの力が残っていたとはな・・・。良かろう。次は、こちらの番だ。俺の恐ろしさを、とくと見せてやろう」

ピッコロ大魔王ベビージュニアは、猛烈なスピードでピッコロに襲い掛かり、激しい攻撃を何度も浴びせた。ピッコロは、倒れこそしなかったものの、早くも大ダメージを負わされた。そして、両者の実力に大きな開きがある事を、ピッコロは痛感させられた。ピッコロ大魔王ベビージュニアは、これまでピッコロが対戦したスカルボーグ達よりも遥かに強かった。

「な、何という強さだ・・・。スピードもパワーも俺より遥かに上回っている。化け物め!」
「話にならんな。俺は、まだ半分の力も使っていないんだぞ」

ピッコロ大魔王ベビージュニアの余りの強さに、ピッコロは驚愕した。正攻法で戦っても勝ち目が無いなら、何か策を用いなければ、ピッコロの敗北が必至である。ピッコロは、ピッコロ大魔王ベビージュニアと距離を置きつつ、何か良い対策が無いか思案していた。そして、ある事を思い出したピッコロは、足元に魔法で「大魔王封じ」と書かれた札が貼ってある電子ジャーを作った。

「それは何だ?そんな物を作り出して何をする・・・うん!?体の様子がおかしい。どうして震えてるんだ?」

一見、何の変哲も無い電子ジャーだが、ピッコロ大魔王ベビージュニアがそれを見た途端、本人の意思とは無関係に体が震え始めた。慌てるピッコロ大魔王ベビージュニアを見て、ピッコロは笑った。

「やはりな。貴様がピッコロ大魔王の体を支配し、意のままに操れても、体に染みついた恐怖心だけはどうしようもあるまい。ピッコロ大魔王は、魔封波を心の底から恐れている。札が貼ってある電子ジャーを見ただけで足が竦むほどにな」

かつてピッコロ大魔王は、魔封波によって電子ジャーの中に封じ込められた過去があった。そのせいで魔封波を極度に恐れており、札が貼ってある電子ジャーを見ただけで体が条件反射で震えた。現在、ピッコロ大魔王の意識を支配しているベビージュニアでも、彼の体に刻まれた恐怖心までは支配出来ないと読んだピッコロの予想が的中した。

好機と見たピッコロは、反撃に転じた。ピッコロ大魔王ベビージュニアは、震えて体が思うように動かせず、ピッコロの攻撃を何度も喰らった。この機会に何としてもベビージュニアを倒しておきたいピッコロだったが、このまま黙って敗れるベビージュニアではなかった。ベビージュニアは、ピッコロの攻撃の合間を見計らい、ピッコロ大魔王の体から外に飛び出した。

ベビージュニアの外見は、表面の色こそ緑だが、それ以外が親のベビーと瓜二つの姿であった。ベビージュニアは、スカルボーグに改造されていなかったが、スカルボーグに改造されたベビーと同じ体の構造で誕生したので、生まれた時からスカルボーグだった。

「役に立たん体だ。まあ良い。今のままでもピッコロ程度なら余裕で勝てる。ピッコロを殺しても良いし、生かしておいて体に乗り移るのも面白い。ピッコロ大魔王と違って変な恐怖心を持ってなさそうだしな」

ピッコロ大魔王の体から外に出たベビージュニアは、電子ジャーを見ても体が震えなかったので、まずは忌々しい電子ジャーを気功波で破壊し、それからピッコロに襲い掛かろうとした。ところが、ベビージュニアが襲い掛かろうとした正にその時、目覚めたピッコロ大魔王が大声で叫んだ。

「おのれ!よくもピッコロ大魔王様の体を乗っ取ってくれたな!」
「だから何だ?文句が言いたいのは、こっちの方だ。この役立たずめ!」
「許さん!このピッコロ大魔王様を舐めるな!」
「よ、よせ!」

ピッコロ大魔王は、体を操られていても、その時の記憶が無い訳ではなかった。その為にピッコロ大魔王は、自分の体を操っていたベビージュニアに対して憤怒を感じつつも、これまでは一切手出し出来なかった。しかし、ようやく体が自由になったので、これまで溜まっていた怒りを露にしていた。

ピッコロ大魔王は、ピッコロが止めるのも聞かず、ベビージュニアに向かって飛び掛かった。しかし、ベビージュニアの指先から放たれた光弾を胸に受け、呆気なく倒された。かつては己の力で周りを圧倒し、好き放題やってきたピッコロ大魔王だったが、戦いのレベルが上がった現在では、彼より格段に強い者が周囲に大勢居る。ベビージュニアもその一人であり、スカルボーグに改造された訳でもないピッコロ大魔王が勝てる相手ではなかった。

ピッコロ大魔王は、即死こそ免れたものの、息が絶え絶えで死が間近に迫っていた。ピッコロは、ピッコロ大魔王の側に駆け寄った。

「どうして戦いを挑んだ?戦っても勝てない事ぐらい最初から分かっていたはずだ」
「わ、我が子よ・・・。いや、我が子と言って良いのか?と、とにかく、奴の力は強大だ。俺は無論、お前の力でも勝てまい。しかし、お前が俺と融合すれば、奴に勝てるかもしれない」
「融合だと!?ま、まさか、俺に融合させる為に、わざと攻撃されたのか?」
「こうでもしなければ、俺とは融合すまい。早くやれ!このまま死んでは犬死だ!」

ピッコロ大魔王は、純粋な悪である。これまで善のナメック人とのみ融合してきたピッコロが、悪のナメック人を体に取り込めば、己も悪になるのではないかという不安を感じ、幾ら強くなる為でも抵抗があった。しかし、ピッコロ大魔王と融合する以外の方法でベビージュニアに勝てる見込みが無く、しかもピッコロ大魔王が己の命を掛けてまで融合のお膳立てをしてくれたのだから、それを拒む訳にはいかなかった。

ピッコロは、ピッコロ大魔王との融合に踏み切った。ピッコロ大魔王の体に手を触れると、ピッコロ大魔王の体が白く光り、ピッコロの体の中に溶け込んでいった。とうとうピッコロ大魔王との融合を遂げたピッコロだったが、心配されていた悪の影響は無く、善のままであった。ただし、ピッコロの体からは、これまで以上の大きな気が感じられた。

融合を終えたピッコロは、これまで静観していたベビージュニアを睨みつけた。ベビージュニアは、ピッコロ同士が融合した事に少し驚いていたが、それ以外の時は相変わらず余裕の表情を浮かべていた。例えピッコロがパワーアップしても、自分の勝利は揺るがないと信じて疑わなかった。

「大人しく死んでくれるのかと思っていたが、まさか融合するとはな・・・。最後の最後まで鬱陶しい奴だった。しかし、お前達が融合しても俺には勝てない」
「それはどうかな?ピッコロ大魔王は、どうしようもない悪だが、誇り高かった。それなのに貴様みたいな奴に体を乗っ取られ、意のままに操られ、さぞかし無念だったろう。ピッコロ大魔王の恨みを、今こそ思い知れ!」

ピッコロ大魔王の恨みを受け継いだ新生ピッコロは、これまでとは比較にならないスピードでベビージュニアに迫った。ピッコロの意外な速さに驚いたベビージュニアは、反応が遅れ、攻撃をまともに喰らった。更に二撃三撃と攻撃を受けたが、体勢を立て直して反撃してきた。しかし、ピッコロは、反撃に怯まず、攻撃の手も緩めなかった。

双方が共に本気となり、激しい肉弾戦を繰り広げた。お互い一歩も引かない互角の展開で、両者の体は傷だらけになった。しかし、ピッコロが徐々に押されてきた。融合しても疲労やダメージが回復されず、しかも連戦なので限界が近かった。

ところが、勝利を確信したベビージュニアの一瞬の隙を突き、ピッコロの目から放たれた光線がベビージュニアの右膝を負傷させた。そして、片膝を付いてベビージュニアが痛がってる間に、ピッコロは最後の力を振り絞って気を溜め、ピッコロ大魔王の技であった爆力魔波を放った。爆力魔波を至近距離から喰らったベビージュニアは、わずかな肉片も残さずに完全に消滅した。二人のピッコロの力が結集したからこそ届いた勝利であった。

「ハアハア・・・。俺の出番は、ここまでだ。後は任せたぞ、悟空」

全ての力を出し切ったピッコロは、勝利の余韻に浸る間も無く、その場に倒れて意識を失った。その後にセルが現れて、ピッコロを中央部に連れて行った。

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