其の八 三者三様の勝利

ドクター・リブが差し向けた四体の強化リブマシーンの内、一体は既にレードに壊されたが、残る三体はトランクス・ピッコロ・ウーブと戦っていた。トランクスとピッコロは悪戦苦闘していたが、ウーブは最初こそ互角だったが、次第に優勢な展開へと推移させていた。

魔人と化したウーブは、緒戦は様子見のために力を抑えていた。しかし、ウーブが相手の力を見抜いてくると、徐々に真の力を発揮していった。ウーブのスピードが増すにつれ、強化リブマシーンはウーブの動きを捉えられずに翻弄された。対するウーブは、強化リブマシーンの動きのパターンを把握し、次の行動を読めるようになっていた。

ウーブは魔人になると、軽い興奮状態になった。それは、サイヤ人が超サイヤ人に変身した時の現象と似ていた。しかし、それでもウーブが初めて魔人となった頃に比べれば、かなり良くなっていた。魔神龍との戦いの際は、ウーブは理性を完全に失い、目の前の敵を倒すだけの殺人マシーンと化していた。だが今では、体は魔人となっても、心は人間の状態を維持しており、魔人の力を上手くコントロール出来るようになっていた。

ウーブは相手の攻撃を上手く避けつつ、自分の攻撃を的確に当てていった。ウーブの攻撃力が強過ぎるせいで、頑丈なはずの強化リブマシーンの装甲に、所々亀裂が入った。更にウーブは、それ等の箇所に集中して攻撃するせいで、強化リブマシーンの装甲が崩れ、中身の機械が剥き出しになった。ウーブは、その機械の部分にも攻撃を加えたので、強化リブマシーンは故障し、動かなくなった。

動かない強化リブマシーンに、ウーブは止めの一撃を見舞った。強化リブマシーンは殴り飛ばされ、遠くに吹っ飛ばされた後に大爆発を起こした。終わってみれば、ウーブの圧勝だった。そして、勝負の決着が付いた後、ウーブは元の人間の姿に戻った。

「ピッコロさんとトランクスさんは、まだ戦っているようだ。助けに行った方が良いのかな?いや、ここは二人の勝利を信じて、自分はドクター・リブ探しに専念しよう」

ウーブは見事に勝利を収めたが、ピッコロは自分よりパワーもスピードも上の強化リブマシーンを相手に、苦戦を余儀なくされていた。強化リブマシーンから繰り出される攻撃が、ピッコロに多大なダメージを与えているのに対し、ピッコロの攻撃は、強化リブマシーンの装甲に阻まれて、余り通じていなかった。

攻撃を喰らい続けているせいで、ピッコロの気が大分減っていった。彼の身を案じた悟飯は、居ても立ってもいられず、急いでピッコロの元に駆けつけた。強大な気を持つ悟飯が目の前に現れたので、強化リブマシーンは攻撃を中断し、悟飯を警戒した。その間に悟飯は、傷ついているピッコロに話し掛けた。

「ピッコロさん、大丈夫ですか?後は俺に任せて下さい」
「よ、余計なお世話だ。あんな奴ぐらい、俺一人で仕留めてみせる」
「しかし、このままではピッコロさんが・・・」
「悟飯。お前は俺の事が信じられないのか?あの程度の敵すら倒せないようでは、お前の仲間でいる資格がない」

ピッコロが交代を断固として拒むので、悟飯は何も言えなかった。会話を終えたピッコロは、単身で強化リブマシーンに向かっていき、悟飯は少し離れた場所で、戦いを見守る事にした。

「ピッコロさんは、何を考えているんだ?何故、あの技を使わないんだ?」

戦いの情勢は、全く変化なかった。ピッコロは相変わらず攻撃を受け続けた。そして、上空で強化リブマシーンに殴られたピッコロは、地上に叩き付けられ、仰向けに倒れた。そのピッコロの側に、強化リブマシーンが降り立った。強化リブマシーンは、足元に倒れているピッコロに狙いを定めて、右腕を大きく振りかざした。

「待っていたぞ!この時を!」

強化リブマシーンのパンチが振り下ろされる前に、ピッコロは倒れた状態のまま神魔光裂斬を放った。至近距離からピッコロの技を喰らった強化リブマシーンは、真っ二つに裂けた。ピッコロは立ち上がった後、二つに裂けた強化リブマシーンを調べたが、どちらも二度と動きそうもなかったので、ようやく己の勝利を悟った。傷だらけになりながらも勝利の余韻に浸るピッコロの元に、悟飯が駆け寄った。

「お見事でした、ピッコロさん。でも、何故あの技を、もっと早めに使わなかったのですか?」
「もし神魔光裂斬を出して、それが避けられれば、奴は警戒し、二度と当てるチャンスを得られなかっただろう。だから、確実に当てられる状況になるまで、間合いを計っていたのだ」
「そうでしたか・・・。後はトランクスだけですね。勝てるでしょうか?」
「分からん。苦戦はしているだろうが、そう簡単に敗れるとは思えん」

ピッコロの予想通り、トランクスは残る一体の強化リブマシーンを相手に、苦しい展開を強いられていた。トランクスの戦いを少し離れた場所で見ていたパンは、加勢したかったが、敵が強過ぎて近付く事すら出来なかった。

「くそっ!このままじゃ負ける。奴の装甲と装甲の間の僅かな隙間を攻撃すれば、勝てるかもしれない。でも、奴のスピードが速過ぎて、狙い通りの攻撃が出来ない。確かリブマシーンは目が見えず、気で人の位置を特定すると、レードの科学者が言ってたな。よし!一か八か、やってみるか!」

意を決したトランクスは、超サイヤ人3の変身を解き、気を消した。するとリブマシーン同様に、気で相手の位置を探知する強化リブマシーンは、トランクスを見失い、動きが止まった。しかし、強化リブマシーンは、内部に組み込まれたサーモグラフィを使ってトランクスの体温から彼の位置を特定し、攻撃を再開した。この攻撃は避けたトランクスだったが、強化リブマシーンの動きが止まっている間に気を高めて攻撃しようとしていたので、その時間が予想より短かった事を悔しがった。

「あんなに短い時間しか動きを止められないんじゃ、どうする事も出来ない。一体どうすれば良いんだ?」

強化リブマシーンが体当たりを敢行し、トランクスは吹っ飛ばされた。トランクスは、途中で体勢を変えて着地した。強化リブマシーンは、トランクスに再び体当たりを試みた。しかし、観戦していたパンが、突然エネルギー波を放った。パンのエネルギー波は、強化リブマシーンに命中したが、全く通じていなかった。ところが、強化リブマシーンは、予期せぬ方向からの攻撃に戸惑い、トランクスの目前で体当たりを止めて、パンの居る方を振り向いた。

「今だ!」

千載一遇の好機と見たトランクスは、超サイヤ人3に変身し、目の前の強化リブマシーンの首の装甲に覆われていない小さな隙間に、手刀を浴びせた。その攻撃によって、強化リブマシーンの頭部が胴体から切り離された。強化リブマシーンの胴体は尚も活動を停止せずに、攻撃を続行した。しかし、気を検知するレーダーや、サーモグラフィは頭部に搭載されていたため、強化リブマシーンはトランクスが何処にいるか分からず、ただ闇雲に両腕を振り回していた。

「これで終わりにしてやる!」

勝利を確信したトランクスは飛び上がり、強化リブマシーンの首の付け根の部分に、エネルギー波を何度も放った。この攻撃で強化リブマシーンの胴体は内部を破壊され、その場に崩れ落ちて動かなくなった。

「ふう。終わった」

自分の強さを上回る強敵を倒したので、トランクスは満面の笑みを浮かべた。パンも喜んで、トランクスが居る所まで駆け寄った。

「やったじゃない!トランクス。でも、私の助けが無いと、勝てなかったけどね」
「その通りだよ。パンちゃんのお陰で、俺は勝つ事が出来た。パンちゃんは役立たずなんかじゃない。俺達の立派な戦力さ」

トランクスとパンは喜びを分かち合って、共に笑った。

一方、モニター越しに戦いを観戦していたドクター・リブは、自慢の強化リブマシーン達が一勝も出来ずに全滅した事に、大きなショックを受けていた。それとは対照的に、同じく戦いを観戦していたドクター・ハートは、戦士達一人一人の強さに感心していた。

「素晴らしい。サイヤ人じゃないのも中にはいるけど、こんなに強いとは・・・。彼等の実力は本物ね。ますます興味を抱いたわ」
「何を悠長な事を・・・。ここに奴等が攻めて来る前に、惑星ジニアまで引き揚げましょう!」
「落ち着きなさい。彼等には、サイヤ人の実力を計る為に連れて来た、私の可愛い坊や達がお相手するわ。ねえ?坊や達」

ドクター・ハートは、部屋の出入り口で待機していた、どう見ても子供には見えない二人の男達の方に振り向き、微笑した。

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